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ドールズ~闇から来た少女 原作;高橋克彦(アドベンチャーロード)

  • 作品 : ドールズ~闇から来た少女
  • 番組 : アドベンチャーロード
  • 格付 : B
  • 分類 : ホラー
  • 初出 : 1988年10月17日~10月28日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 高橋克彦
  • 脚色 : 久保田圭司
  • 音楽 : 天上昇
  • 演出 : 上野友夫
  • 主演 : 木下秀雄

盛岡市で喫茶店「ドールズ」を経営する結城恒一郎は、小学生の娘・怜(れい)が交通事故にあったと聞き、慌てて病院に駆け付けた。
幸いにも、怜は骨折だけで命に別条はなかったが、どことなく様子がおかしい。
言葉を一切話さないし、食べ物の好みも急に変わったようだ。
詳しく検査したところ、心臓の肥大、重度の動脈硬化といった老人化とも思える症状もあることがわかってきた。
更に調べると、怜の様子がおかしくなったのは実は事故よりも前、仙台に在住する人形作家・小夜島香雪(さよじま・かゆき)を訪問してからだったことがわかってくる。
一体、怜の身に何が起きているのであろうか。



伝奇小説、歴史小説、ホラー、ミステリーなど、様々なジャンルの小説を書かれている直木賞作家・高橋克彦さんの原作小説「ドールズ-闇から来た少女」を原作とするラジオドラマです。

高橋克彦さんらしい作品

高橋さんは「炎立つ」と「北条時宗」で2回、NHK大河ドラマの原作を担当していますが、「炎立つ」からも想像できるとおり、盛岡在住の方であり、本作品は高橋さんの地元を舞台にした作品です。
また、高橋さんは大学卒業後、浮世絵の研究者であった時期もあり、江戸文化をテーマとしている点でも、本作品は高橋さんのホームグラウンドの作品といえると思います。

ポイントは人形細工

さて、この「江戸文化」ですが、あまり書くとネタバレになってしまうのですが、本作において、江戸時代末期の人形細工が重要な要素として登場します。
どのような登場の仕方かは、それこそ聴いての(読んでの)お楽しみなのですが、敢えて言うなら、青春アドベンチャーでいえば、これやこれより、これに近い作品といえるでしょう(←クリックするとかなりネタバレです。ご留意ください)。
一つだけ言っておくと、SFやサスペンスというよりホラー寄りの作品といってよいと思います。

あまり怖くはない

ただ、ホラーとして本格的に怖い作品かというと…
そうなっている最大の原因は、やはり菩提樹さんの歌う本作品のテーマ曲でしょうか。
このテーマ曲、歌詞の内容からすると恐らく本作品のためにつくられたオリジナル曲と思われますが、メロディラインはそれなりに不気味な感じになってはいるものの、あまりにベタな歌詞と牧歌的な演奏のお蔭で、どことなくコミカルになってしまっています。
本作の音楽を担当しているのは、上野友夫さん演出の作品ではおなじみだった天上昇さんであり、良くも悪くもいつもどおりの上野作品に仕上がっています。
そういえば「モヒカン族の最後」も似たようなパターン(良くも悪くも印象的なオリジナルテーマ曲)でした。

音楽以外も上野一座

脚色の久保田圭司さんも、この「モヒカン族の最後」のほか、「地の涯、幻の湖」、「ラバウルの秘宝」などでも上野友夫さんとコンビを組んでいます。
大野哲郎さんと組んだ少年探偵団シリーズ(妖怪博士と少年探偵団など)や、松本守正さんと組んだ開化殺人帖シリーズ(帝都誘拐団など)と併せて、上野友夫さん演出の作品は、1980年代後半のアドベンチャーロードという番組において一定のシェアで放送されていました。
そして、その独特のクラシカルさ、定番さ、あるいは大いなるマンネリ具合は、激しい作品の多かったアドベンチャーロードにおいて、安心して聴ける一服の清涼剤又は箸休めになっていたように思います。
でも良く聴くと、本作品、男女の不倫なども扱っていたりして結構どろどろしており、清涼剤とは言い難いかもしれませんけど。

出演者は主に東京放送劇団より

さて、本作品の主人公・結城恒一郎を演じるのは東京放送劇団所属だった木下秀雄さん。
ご存知のとおり東京放送劇団はNHKの放送専属劇団で、この頃のNHK-FMのラジオドラマでは東京放送劇団所属の多くの俳優さんが、色々な作品で脇を固めていました。
しかし、主役を演じられることは比較的少なく、上野さんが本作品や「にごりえ殺人事件」などで木下秀雄さんを主役に起用したのは例外的な扱いだったと思います。
また、ヒロインの小夜島香雪を演じる松坂隆子さんも「少年探偵団シリーズ」で明智文代を演じている方であり、スタッフも含め完全に上野友夫一家の作品という印象です。
娘の怜を演じた岩崎恵(いわさき・けい)さんだけはよくわかりませんが、恐らく子役の方なのでしょう。
なかなかはきはきしていて好印象です。

続編あり?

最後にちょっとだけネタばれにつながりかねない話を。
本作品、最後にきちんと大団円を迎えるのですが、この記事を作成するにあたり調べたところ、原作小説には続編が、しかも「ドールズ 闇から覗く顔」、「ドールズ 闇から招く声」、「ドールズ 月下天使」、「ドールズ 最終章 夜の誘い」と4作品もあるようです。
しかも、amazonに記載されている続編の粗筋を読むと、本ラジオドラマの最後でいなくなったはずの***(ネタバレ防止伏字)が、探偵役として活躍するらしい。
ところが、本ラジオドラマは続編が続くような終わり方ではなかったように思います。
もともと本ラジオドラマは、原作では恒一郎の姪であった怜を娘にするなどの改変が行われているようなのですが、結末も改変されていたのでしょうか?
うーん、原作を読みたいような読みたくないような…

Hirokazu

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