本作品「男と女の殺人百科」は、1981年にNHK-FMの「ふたりの部屋」で放送されたラジオドラマで、推理作家・SF作家の都筑道夫さんのショートショート小説を原作としている、ようなのですが…
うまく原作小説が見つかりません。
作品中で明確に「原作」と言っているので、オリジナル脚本ではないと思います。
いくつかの単行本に収録されているショートショートを集めたものなのかも知れません。
さて、本作品、冒頭で「殺人とSFのショートショートの世界」と紹介されるのですが、この紹介は本作品の内容をあまり的確には表していません。
「男と女」そして「殺人」は確かに各話に共通するモチーフなのですが、SFではありません。
最初の2話はほぼホラー。
第3話と最終話はサスペンス色が強い。
第4話に至ってはそもそもストーリーが良く分からない。
サイコホラー?ファンタジー?単なるノイローゼ?
いずれにしろ全話殺人絡みであり、基本バッドエンドです。
「結局、人間が一番怖い」という面を含めれば、作品全体としては「ホラー」と判断してもよかろうと思い、このブログではホラーに分類してみました。
それでは各回のサブタイトルと粗筋を書いていきます。
話数 | タイトル | 粗筋 |
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1 | 幽霊ゴッコ | 死んだユキオと三人で飲んでいるという芝居をしたら、スナックのマスターは面白いように引っ掛かってくれた。調子に乗って同じことを繰り返してみたのだが… |
2 | 温泉宿にて | 寂れた温泉宿の露天風呂で出会った老婦人。湯けむりの中で始まった昔ばなしはやがて打ち明け話となっていく。 |
3 | 空港の女 | 空港で出会った中年の美女。彼女はテーブルに置いてある薔薇の花を「カレ」と呼び、まるで人であるかのように語るのだが。 |
4 | ダリアの花言葉 | 生・化学兵器にも新しい麻薬にも転用可能な新薬を発明してしまった男。誰かに追われている気がする。ただの産業スパイではないのかもしれない。 |
最終 | 古風なシャンソン | 何だってあんな飲んだくれの豚野郎の面倒を見なくていけないんだ。俺は地位も名声もある。もう限界だ。 |
本作品の出演者は番組名のとおりふたりだけで、山田康雄さんと田坂都さん。
他に出演者はなく完全な二人芝居です(このおふたりが他の役を演じることもほとんどなく基本的に各話とも役が2役しかない)。
山田さんは本当に自然体というか、演技の時と司会の時で喋り方が変わらないというか、いつでもルパン三世というか…
本作品でも伸び伸びと演じていらっしゃます。
本作品、1回10分ということもあり、山田さんも田坂さんもかなり早口で演じられているのですが、全く聴きづらくないのは芸達者である証だと思います。
さて、冒頭で作中で「SF」という言っている割にはほとんどSF要素がない旨の指摘をしたのですが、実は本作品の翌週、同じ山田康雄さんと田坂都さんを演者に迎えて放送された「ユングホルツ短編集 紫色の時差」はSF作品です。
両作品はあわせて一緒に企画されたのかもしれませんね。