Categories: 格付:A

吹いていく風のバラッド 原作:片岡義男(サウンド夢工房)

  • 作品 : 吹いていく風のバラッド
  • 番組 : サウンド夢工房
  • 格付 : A-
  • 分類 : 多ジャンル(その他)
  • 初出 : 1990年9月17日~9月8日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 片岡義男
  • 脚色 : 津川泉
  • 演出 : 香西久
  • 主演 : 辻萬長、島本須美

本作品「吹いていく風のバラッド」は片岡義男さん原作の同名の短編小説集を原作とするラジオドラマで、1990年にNHK-FM「サウンド夢工房」で放送されました。



片岡義男さんといえば、1980年代に「スローなブギにしてくれ」、「彼のオートバイ、彼女の島」、「ボビーに首ったけ」などが次々と映画化された作家さんで、アメリカ文化やオートバイなどを巧みに取り込んだ洒脱な作品はいかにも1980年代らしい魅力にあふれたものでした。

1回15分の短編集

本作品は短編集ですが、1回15分の短い時間の中に人生の一断面を、味わい深く、同時にどこかスタイリッシュに切り取った作品群となっています。
というか、色々な背景を感じさせられる作品が多く、特に前半はその濃厚さから1回15分と短い時間の割におなか一杯という感じることの多かった作品でした。
ただ、後半はイメージビデオのような軽めの作品も多く、ややその感想は和らぎました。

各回の内容

さて、各回の概要は以下のとおりです。
残念ながら第1回だけ聞いたことがありません。
音源をお持ちの方がいらっしゃいましたら、是非お聞かせください。

◇第1話(詳細不明)

◇第2話 「霧笛」(分類:恋愛)
秋の長雨のある日。港へ行ってみようと思った彼女は、途中で昔付き合っていた男と出会う。車越しの紙コップ、カウボーイスタイルのコーヒー。このスタンスが丁度いい。


◇第3話 「昼寝」(分類:日常)
スーパーマーケットの大きな紙袋一杯に買い物をしてきた彼女。家に着くなり彼から電話がかかってきた。家に行きたいという彼。彼女は訪ねる、「ここに来て何をしたいの?」


◇第4話 「夜の電話ボックス」(分類:サスペンス)
夜9時、国道に激しく雨が降っていた。男は手錠を掛けられている男に言う、ブローニングハイパワーの銃口を突き付けながら。「電話をかけさせてやる」


◇第5話 「旅の終わり」(分類:恋愛)
今年の夏はことのほか涼しかった。そして今日も雨に降られて迎えを待つ男。そして落ち合ったふたりは北の海峡へと旅立つ。これはふたりの最後の旅。


◇第6話 「ごはん」(分類:グルメ)
寂れた街のくすんだ港町の食堂に1台のバイクが入ってきた。注文はアルミホイルに包んだご飯と福神漬けだけ。カレーはいらない。あそこに張ってあるから。


◇第7話 「竹の葉の舟」(分類:少年(幼小))
6月のある日、少年は学校ではなく小川に向かった。煌めく少年の日々。


◇第8話 「乾杯」(分類:恋愛)
リアス式海岸沿いの、ある港町のクラブ。男は探していた店を見つけた。その店は指名制のクラブ。店に入った男は初めての来店なので誰も知らないというが。


◇第9話 「老人の島」(分類:日常)
老人は沖にある小島に一人きりで住んでいるという。しかしある日老人は少年に語り掛ける。魚が食えんようになった。島にはもう何にもありゃせん、何にも。


◇第10話 「カリフォルニアガール」(分類:恋愛)
ニューイングランドからふた月かけてカリフォルニア辿り着いた。東部の女子たちは服のセンスがいい、南部の女子たちは喋り方が魅力。でも女子はみんなカリフォルニアガールだといいな。

出演者はふたりだけ

本作品は全ての役を辻萬長さんと島本須美さんが演じるふたり芝居の作品で、サウンド夢工房の少し前に終わってしまったNHK-FMのラジオドラマ枠「ふたりの部屋」・「カフェテラスのふたり」を彷彿とさせる構成です。
ちなみに「カフェテラスのふたり」では同じ片岡義男さん原作の「さっきまで優しかった人」もラジオドラマ化されています(※追記をご参照ください)。
本作品ではナレーションも辻さんと島本さんが担当されているのですが、本作のナレーションでは登場人物を「彼」、「彼女」と呼ぶことはなく、辻萬長さんが演じるキャラクターは「あなた」、島本須美さんが演じるキャラクターは「君」と二人称で呼ばれます(必ずしも相手役のモノローグでない場合であっても)。
これがいかにも片岡さんらしい雰囲気をつくるのに役立っていると感じます。

主演のおふたりのご紹介

辻萬長さんはテレビや映画への出演も多い舞台俳優の方で、NHK-FMでは硬派なサスペンス作品「着陸拒否」(青春アドベンチャー・1998年)にも主演されています。
なお、お名前の読み方は「かずなが」が正しいとWikipediaには書かれていますが、本作品ではご本人が「ばんちょう」と読んでいますので、「ばんちょう」が間違いという訳ではないようです。
また、島本須美さんは俳優から声優に転身された方で、声優としては「ルパン三世カリオストロの城」のクラリス、「風の谷のナウシカ」のナウシカ、「めぞん一刻」の音無響子などで有名です。
このブログでは「ソフィーの世界」、「女王の百年密室」、「ブルータスは死なず」などの出演ラジオドラマを紹介済みです。
本作品は1990年の放送ですので、「めぞん一刻」放送終了のおよそ2年後の作品ということになります。




※2021/9/19追記
「片岡義男 全著作電子化計画」さまよりTwitterにて補足して頂きました。
ありがとうございます。

Hirokazu

オーディオドラマの世界へようこそ!

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