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男・女・いい出逢い 原作:畑中博(カフェテラスのふたり)

  • 作品 : 男・女・いい出逢い
  • 番組 : カフェテラスのふたり
  • 格付 : B-
  • 分類 : 恋愛
  • 初出 : 1985年5月13日~5月17日
  • 回数 : 全5回(各回10分)
  • 原作 : 畑山博
  • 脚色 : 横光晃
  • 演出 : (不明)
  • 主演 : 井上真樹夫、梨羽由記子

今回ご紹介する作品は1985年にNHK-FM「カフェテラスのふたり」で放送された作品「男・女・いい出逢い」です。


ジェンダー観の変化

実は現在、NHK-FM「青春アドベンチャー」で放送している作品が「女だてら」であることから、「タイトルに『女』が入っているつながり」で選んでみたのですが…
何でしょう、このジェンダー観の違い。
「女だてら」の主人公は男装の女性とはいえ、意外とフェミニンで男勝りの女傑といえるほどの存在ではありません。
だから「女だてら」と比較してということではないのですが、いつの間にか、しかししっかりと時代は変わっている、ということなのかも知れません。
なにせ作品中で「女性は本能的に男性の嫉妬心を掻き立てて自分への執着心を高めようとするが、やり過ぎて男の心を失うことも少なくない」とか「このような方は夫への甘えが我が儘に変形したもので大人しい夫と結婚した妻に多いタイプだと言われる」とか「うちの中を仕切るのは妻、外で稼ぐのは夫という結婚の仕組みってなかなか上手くできている」とか平気で言っちゃうわけですよ。
もちろん個人レベルではそういうタイプの方もいるでしょうし、女性の社会進出が進んでいなかった社会背景もあると思います。
でも少なくとも現在の女性を対象とする一般論としてラジオ番組でこういうことを言うことは、今ではちょっとあり得ないですよね。

司法が許容した≠議論をしなくてよい

そういえば、まさに先日、2021年6月23日に選択的夫婦別姓制度を認めていない現行の民法及び戸籍法の規定を合憲とする最高裁の判断が示されたのですが、これを受けて一部?の議員がこの議論の幕引き(旧姓の通称使用への誘導)を図る発言を始めてしまったことも思い起こさざるを得ません。
最高裁は選択的夫婦別姓制度を否定したわけではなく、むしろこの制度に賛成する人の割合が増えていることを認めた上で、国会で議論すべきと言っているのに、国会議員が自らの役割を放棄している…
私は個人的には選択的夫婦別姓度に特に思い入れはないのですが、望む人が多いのであれば、選択の自由の拡大のため導入を躊躇する理由はないと思っています。あくまで「選択的」ですので。

そういうこと?

だから、「なんで一部の国会議員は執拗にこの制度に反対するのかな~」と純粋に理解できないでいたのですが、ひょっとしたら彼らの頭の中は本作品が放送された時代のままで止まってしまってのかも知れません。
本作品が放送されたのは1985年ですので約36年前。
男女雇用機会均等法の成立が翌1986年ですのでそれから数えても約35年。
35年もの間、頭のナカミはそのままなんてまさか、とも思うのですが、昨年まで首相をされていた方が選択的夫婦別姓制度に強硬に反対していたくらいですし、国会ってそういう閉鎖された環境なのかも知れないと感じました。

各回ごとの内容

などといきなり脱線してしまいましたが、本作品は毎回、(当時の基準で)イキイキと生きていると思われる女性の行動を描写しつつ、「いい女とは何か」というメッセージを伝えていく作品です。
キチンとしたストーリー展開があるわけではありませんが、一応、ショートドラマ的な部分はあります。
各回のタイトルとそこで描かれている女性は以下のとおりです。

  1. 「愛の不安を上手に育てる方法」 … 隣の席の新人に恋をした保険会社のOL
  2. 「離婚予定結婚」 … 結婚10年目、夫の浮気を機に離婚した女性
  3. 「恥じらいと優しさの美学」 … 恥じらいの演技をする女性たち
  4. 「遅れてきた女」 … 上司の部長と不倫する女性
  5. 「幸福へのパスポート」 … 地中海型人生を歩んだ女性

原作にも感じる時代性

本作品の原作(と思われる)作品は畑山博さんの「いい女・いい出逢い」。
この本の紹介によるとこの原作本は「『いい女』になりたいあなたのために書かれた、心情あふれるメッセージ」らしいのですが、考えてみると原作者も脚本家の横光晃さんも男性。
男性が女性に「いい女」になるためのヒントを送る、という時点で今となってはなんだかなあという感じもします。
ちなみに畑山博さんは1972年に「いつか汽笛を鳴らして」で芥川賞を受賞した純文学作家のようですが、もともとは放送作家だったらしいので堅苦しさが全くないという意味でいかにも本作品の原作者らしく感じます。

軽妙な「五ェ門」

さて、堅苦しい話が続いてしみましたが、最後の出演者のご紹介。
本作品の出演者は番組名(「カフェテラスのふたり」)のとおり井上真樹夫さんと梨羽由記子(梨羽侑里)さんの声優さんおふたり。
井上真樹夫さんは「ルパン三世」の石川五ェ門や「宇宙海賊キャプテンハーロック」のハーロックなど低音で演じるクールな役で有名ですが、NHK-FMのラジオドラマ番組では「カラフル」、「サハラの涙」、「もしかして時代劇」にような明るくコミカルな演技の方が印象的です。



Hirokazu

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