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天使のリール 原作:喜多嶋隆(青春アドベンチャー)

  • 作品 : 天使のリール
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B
  • 分類 : 職業
  • 初出 : 1998年4月27日~5月8日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 喜多嶋隆
  • 脚色 : 佐藤ひろみ
  • 演出 : 千葉守
  • 主演 : 渋谷琴乃

角田潮里(しおり)は葉山から青山学院大学に通う大学生。
父親は行方不明だが、漁師の祖父と何不自由なく暮らしていた。
潮里と祖父の夢は、ふたりで釣り船をやることだったが、念願のフィッシングボートが届いた時に祖父は急逝してしまった。
祖父が大好きであったハワイにちなんで命名されたその船、「アロハ丸」を引き継いだ潮里は、女子大生を続けながら、土日と水曜日は一人で「アロハ丸」の船長を始めることを決心する。
女子大生船長・潮里が、釣り客達や、祖父や父に縁のある様々な人たちと交流するなかで成長していく姿を描く。



喜多嶋隆さんの小説を原作とするラジオドラマです。
喜多嶋さん原作の作品については既にCFギャングシリーズの2作品(CF愚連隊、ロンリー・ランナー)を紹介済みです。
喜多嶋さん原作の作品としては他に「ふたりの部屋」(番組の変遷についてはこちらの記事)で放送された「喜多嶋隆短編集」(1984年)があるようですが、私は聴いたことがありません。
さすがに1984年の作品を今後聴くチャンスはほとんどないと思います。残念ですが。

釣り船が舞台

さて、CFギャングシリーズが喜多嶋さんが作家になる前に従事していたCF制作を題材にしていたのに対して、本作品は喜多嶋さんが良く取り上げているもう一つの題材である「釣り」に関する作品です。
とはいえ、第1話から広告代理店の人たちが登場するなど、広告業界とも微妙に接点があるのはいかにも喜多嶋さんらしいところではあります。

女子大生船長の日常

さて、本作品は連作短編のような形で様々な釣り客との交流が描かれていく中で、潮里やその家族の抱えてきた過去が少しずつ明らかになっていく作品です。
途中、大小様々な事件が起きますが、びっくりするような大冒険は起こりません。
潮里の前に現れる登場人物たちも、釣りの経験がないのに突然やってきた中年男、広告撮影にやってきたカメラマン、祖父と仲の良かった気のいい米兵、地元に戻ってきたものの毎日ぶらぶらしている男友達など、ごく普通の人物達です。
そのため、CFギャングシリーズのように暴力シーンが入ることもなく、ちょっとボーイッシュでぶっきらぼうな潮里の魅力を中心に、穏やかに、そして爽やかにストーリーは進んでいきます。

少女から大人へ

ただ普段と変わらないように見える潮里の生活ですが、作品が進むにつれ少しずつ変化も生じていきます。
淡い恋の始まり。
少しずつ見え始める行方不明の父の影。
最後は(子を持つ父としては)少しうるっと来る展開なのですが、潮里の性格がとてもさばけていることもあり、この結末を含めて、あくまで爽やかな雰囲気の作品になっています。
「ふたり」、「ピエタ」、「暗殺のソロ」の評価を見るまでもなく、父と子の話には弱い私です…

主演は渋谷琴乃さん

さて、本作の主演は渋谷琴乃さん。
女子大生船長の潮里を明るくさばさばと演じています。
ちなみにNHKは固有名詞を一般名詞に言い換えて放送されることが多い(詳しくはこちらの記事を参照してください)のですが、本作では潮里について「青山学院大学の三年生」とはっきりと言っています。
渋谷さんは、既に紹介した作品では「金春屋ゴメス」などにも出演されています。

上川隆也さんが脇役

そして全ての回に登場する訳ではないのですが準レギュラー的な位置づけのカメラマン中西啓介役が俳優の上川隆也さん。
本作品が放送されたのは1998年ですので、上川さんがNHKの放送70周年記念番組「大地の子」に主演してブレイクした後です。
脇役にこんな有名な方をもってくるのがいかにもNHKらしいところです(青春アドベンチャーに出演されている有名な役者さんについてはこちらの記事をご参照ください)。

上川さん出演作

ちなみに上川さんはブレイク前(舞台俳優としてはすでに有名だったかも知れませんが)の1992年・1993年に「サンタクロースが歌ってくれた」や「あたしの嫌いな私の声」で青春アドベンチャーに出演しています。
いずれも当時上川さんが所属していた演劇集団キャラメルボックスの関連作品だったからだと思います。
なお、このブログは上川さんのお名前で検索されて辿り着かれる方がとても多いようです。
さすが人気俳優さんです。

有名声優がちょっとした役で

なお、脇役といえば更にちょい役で、有名なベテラン声優の矢尾一樹さん(「機動戦士ガンダムZZ」のジュドー・アーシタ役)が出演していたりもします。
NHKやるなあ。

Hirokazu

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