NHK名古屋局が制作した「秘密」をテーマにしたオリジナル脚本・全5品の短編ラジオドラマ集です。
ちなみにアメリカの作家フランシス・ボジソン・バーネットの有名な小説や、松田聖子さんのヒット曲とは関係ありません。
さて、本作品「秘密の花園」は、1996年から続く名古屋局制作のオリジナル短編のラジオドラマの系譜を継ぐものです。
名古屋局制作の短編集は、「夢」(新・夢十夜)、「嘘」(嘘の誘惑)、「記憶」(記憶の城)、「悪戯」(悪戯の楽園)など抽象的で難解なテーマの作品が多く、「秘密」も既に取り上げられていそうなイメージですが、改めて確認すると今回が初めてのようです。
ちなみに本作品の直前に放送された「機械仕掛けの愛」も名古屋局の制作でしたので、この時は2作品連続で名古屋局作品だったことになります。
ただし、2作品を合計しても全10回に過ぎないのではありますが。
さて、上で述べたとおり青春アドベンチャーの脚本家競作の短編集シリーズは毎回何らかのテーマが設定されています。
その中でも本作品「秘密の花園」の特徴は、「秘密」というテーマと「花」というモティーフの、ふたつのキーワードがあること。
テーマとモティーフの違いが今ひとつ分かりませんが、キーワードが一つである他の脚本家競作作品では、脚本家さんの個性によって1話1話の内容と雰囲気が全く異なり、作品としての統一感がなくなることがよくありました。
しかし本作品は、ふたつの要素で縛ることにより、各作品がかなり似た雰囲気になっています。
具体的には本作品の場合、キーワードが「秘密」と「花」ですので、少し小昏い、華やかだけどどこか密やかな雰囲気で統一されています。
まあ、いつもの名古屋局の短編集作品の雰囲気どおりでもあるのですが。
なお、この二つのキーワードのうち「花」は、2015年に放送された「フラワー・ライフ」と同じキーワードですが、本作品「秘密の花園」の方が先に制作されています。
◆第1話 「曼珠沙華の音」 (仲井美樹)
幻想的な話だが展開が早く聞き入ってしまう。ただ、オチは概ね予想どおり。
◆第2話 「崖っぷちに咲くバラ」 (鹿目由紀)
「私の彼はポアンカレー」の鹿目さんの作品。これもオチが読めるなあ。
◆第3話 「クロッカスは主張する」 (桜井稔)
「秘密」+「花」というテーマどおりの作品。そこそこ怖いが、オチはない。
◆第4話 「俺×コスモス=世界滅亡?」 (朝倉寛)
着想は面白い。ちなみに、この話、花は関係ないな、と思っていたら最後にちょっとした種明かしあり。
◆第5話 「つつじ丘公園」 (西脇良典)
秘められた思いに感動!といいたいところだが、淡白な話であまり感動には至らず。
出演は女優の中村ゆりさんと俳優の眞島秀和さんが各話の主役級で出演されています。
中村ゆりさんはテレビ東京の「ASAYAN」で歌手としてデビューされた方で、映画「パッチギ!LOVE&PEACE」のヒロイン・キョンジャ役等、女優として活躍されている方だそうです。
本作品では第3話でのキレた演技が印象的です。
一方、眞島さんは青春アドベンチャーでは「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」にも出演されていましたが、主役級ではこれが初めてだと思います。
【10人作家シリーズ(名古屋脚本家競作シリーズ)作品一覧】
その難解さとアンニョイさで青春アドベンチャーでも異彩を放つ、名古屋局制作のオムニバス作品シリーズの一覧は、こちらです。
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