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「玉麒麟」応援企画!呼び名で覚える、ぼろ鳶組世界の名火消たち

麒麟といえば…

「羽州ぼろ鳶組」シリーズの第6弾として「玉麒麟 羽州ぼろ鳶組」が青春アドベンチャーで放送されています。
シリーズのファンであればこのタイトルを聴いただけで今回の主役がぼろ鳶組のNo.2鳥越新之助であることは想像がつくと思います。
鳥越新之助は府下十傑に選ばれる剣士であり、その異名が「新庄の麒麟児」だからです。

今回は呼び名がキーワード

これはあくまで剣士としての異名ですが、作中に登場する火消たちは火消番付に「四股名」として記載されている火消としての通称をそれぞれ持っています。
今回は「玉麒麟」応援企画として、シリーズに登場した火消たちを通称(呼び名)を軸に整理したいと思います(その後「襲大鳳」放送にあわせて加筆しました)。

こちらもご参照ください

なお、本記事は新庄藩火消組(ぼろ鳶組)以外の火消を紹介することを主目的としています。
ぼろ鳶組のメンバーについてはこちらの記事もご参照ください。
なお、紹介順は原作公式ホームページに掲載されている安永2年版火消番附(外部リンク)によることとします。

火消番付・東方

「八咫烏(やたがらす)」大音勘九郎

  • 番附:大関
  • 所属:加賀藩
  • 演 :前田一世
  • 登場:1・2・4・6・7

江戸最強の火消集団・加賀鳶の大頭で「火消の王」とも称される江戸一番の火消。
源吾の最大のライバルだが火事場では最も頼りになる男でもある。
「八咫烏」は加賀鳶が纏う漆黒の火消装束を示すが、炎を倒す(冥府へ送る)者という意味の異名でもある。
「夜哭烏」事件では身内を人質に取られ苦悩したが最後まで火消としての矜持を違えることはなかった。

「九紋龍(くもんりゅう)」辰一

  • 番附:関脇
  • 所属:に組
  • 演 :宇梶剛士
  • 登場:6・7

圧倒的な身体能力を管轄地域を守るためだけに使う最強の町火消。
「九紋龍」は「水滸伝」の登場人物・史進のあだ名だが、辰一がこの異称で呼ばれるのはその背中に掘られた龍の刺青と暴風のような圧倒的な力から。
準主役回である原作第2弾「九紋龍」がオーディオドラマ版ではパスされてしまったため初登場は「玉麒麟」第6回となった。
それにしても宇梶剛士さんって…最高&最強じゃないすか。

「魁(さきがけ)」武蔵

  • 番附:小結
  • 所属:新庄藩(元万組)
  • 演 :山口馬木也
  • 登場:2~7

第1作時点では町火消・万組の頭だが、第2作のラストでぼろ鳶組に参加。
火事場に真っ先に駆け付ける熱血漢であり江戸最高の竜吐水の達人でもある。
異名は「先駆け」と「先掛け」のダブルミーニング。
源吾に心酔する生粋の火消馬鹿だが「鬼煙管」ではちょっとしたロマンスも生まれている。

「赤舵(あかかじ)」加持星十郎

  • 番附:前頭筆頭
  • 所属:新庄藩(火消方と天文方)
  • 演 :大沢健
  • 登場:1~7

父・加持孫市に続き親子二代で源吾に仕える、ぼろ鳶組の軍師。
南蛮人の血を引く赤髪で、「赤加持」は子供の頃にいじめられた際のあだ名であるが、今ではぼろ鳶組の舵取り役としての誇り高い呼び名となっている。

「蝗(いなご)」秋仁

  • 番附:前頭二枚目
  • 所属:よ組
  • 演 :坂西良太
  • 登場:4・6・7

通称は、町火消で随一(すなわち江戸で一番)の規模を誇る「よ組」を率いることからつけられた。
元はチンピラのリーダーで「すてごろ秋仁」と呼ばれる名うての喧嘩師だったが、唯一勝てなかった辰一と決着をつけるために火消になった。
源吾と同年配で同じ頭取(組頭)でもあり付き合いは長い。

「狗神(いぬがみ)」牙八

  • 番附:前頭七枚目
  • 所属:加賀藩
  • 演 :今井勝法
  • 登場:2・4

火事場で大鋸を使い見る間に建物を倒していく様を表した異称と思われる。
大音勘九郎に鍛え上げられた叩き上げで、忠犬のように勘九郎を慕っていることも理由かもしれない。
ぼろ鳶組に敵対心をむき出しにするが「夜哭烏」の一件以降は彼らをライバルと認めており、特に源吾の妻・深雪には頭が上がらない。

「荒神山(こうじんやま)」寅次郎

  • 番附:前頭八枚目
  • 所属:新庄藩
  • 演 :朝倉伸二
  • 登場:1~7

ぼろ鳶組参加以前は相撲取りでその頃の四股名が荒神山だった。
作中何度も無理を強いられ体を痛めているがいつでも柔和。
不十分な体制でスタートしたぼろ鳶組がすぐに現場復帰できたのは彼の力が大きい。

「銀蛍(ぎんぼたる)」銀治

  • 番附:前頭九枚目
  • 所属:め組
  • 演 :鈴木一功
  • 登場:6

め組の頭。
源吾や勘九郎のようなカリスマ性も辰一のような身体能力もないが、それが故に町を守るための地道な夜回りを欠かさない姿を評価され「銀蛍」と呼ばれている。
炎を読む天才、藍助を次世代のエースにすべく育成中。

「襤褸鳶(ぼろとび)」鳥越新之助

  • 番附:前頭十三枚目
  • 所属:新庄藩
  • 演 :小山貴司
  • 登場:1~7

チャラい若者に見えるが実はぼろ鳶組の荒事担当で「新庄の麒麟児」の異名を持つ剣士である。
そのため火消としての通称も「麒麟児」でよかったはずだが、敢えて新庄藩を象徴する「襤褸鳶」と付けられたのは実は周囲(特に番附の実質的な決定者である読売書きの文五郎)の期待の表れなのだろう。本人は腐っていたが…
「玉麒麟」は彼をフィーチャーした作品。

「小唄(こうた)」矢吉

  • 番附:前頭十四枚目
  • 所属:吉原火消
  • 演 :手塚祐介
  • 登場:5

異名はその経歴(元幇間)から。
「消さない火消」と揶揄される吉原火消にあって、数少ない情熱を持つ矢吉を「夢胡蝶」事件以前からきちんと番附にのせているあたりにセレクションの目の確かさが窺われる。

火消番付・西方

「火喰鳥(ひくいどり)」松永源吾

  • 番附:大関
  • 所属:新庄藩
  • 演 :筧利夫
  • 登場:1~7

本シリーズの主人公。
定火消・松平隼人家の元火消組頭取。
ある事件がきっかけで火消を辞めて燻っているところをスカウトされ新庄藩火消組の再建を託された。
口癖は「炎を喰ってやる」で、これが「火喰鳥」の由来だが、同時にこの再生の物語全体を象徴する異名でもある。

「菩薩(ぼさつ)」進藤内記

  • 番附:関脇
  • 所属:八重洲河岸定火消
  • 演 :大谷亮介
  • 登場:4・7

常に柔和な表情、孤児を火消として育てる活動、死をも厭わず民を救う姿勢、の3点から菩薩の異名を取る。
管轄区域内において民からの人気は絶大であるが実は裏の顔がありそれが描かれたのが「菩薩花」。

「隻鷹(せきよう)」詠兵馬

  • 番附:小結
  • 所属:加賀藩
  • 演 :篠井英介
  • 登場:4

加賀藩の次席指揮官で、大音勘九郎が最も信頼する長年の股肱。
隻眼だが火事場をまるで上空から鷹の目で見るが如く立体的に捉える特殊な能力を持つことが異名の由来。

「煙戒(えんかい)」清水陣内

  • 番附:前頭筆頭
  • 所属:加賀藩
  • 演 :鈴木健介
  • 登場:2

加賀藩の1番組組頭。
「夜哭烏」では、加賀鳶の動きが封じられる中、大音勘九郎の命のもと全滅を覚悟のうえ、わずかな手勢で猛火に立ち向かった。
異名の理由は並外れた嗅覚で煙を読む能力から。

「縞天狗(しまてんぐ)」漣次

  • 番附:前頭二枚目
  • 所属:い組
  • 演 :中西良太
  • 登場:6・7

い組の頭であるが、同時に江戸で一番の纏師でもある。
纏師としての特殊能力は圧倒的な握力で、フリークライマーよろしく上半身の力だけで垂直移動ができること。
縞天狗の名の由来は、好んで縞模様の衣装を着ることからである。
彼もまた源吾や勘九郎、秋仁と同様に「黄金の世代」と呼ばれる一群の火消のひとり。

「凪海(なぎうみ)」柊与市

  • 番附:前頭三枚目
  • 所属:仁正寺藩
  • 演 :窪塚俊介
  • 登場:4

仁正寺藩は1万7千石の小藩であり台所事情は苦しい。
しかし、与市は若年ではあるが名関脇と言われた祖父の後を継いで仁正寺藩の名を大いにとどろかせている。
異名の由来は、肩が良く手桶を水をこぼさずに放り投げることができることと、仁正寺藩の火消たちが深い海を思わせる錆納戸色の火消装束を着ていることから。

「椿(つばき)」一花甚右衛門

  • 番附:前頭四枚目
  • 所属:加賀藩
  • 演 :山岸門人
  • 登場:6・7

加賀藩で小頭を務める有能な火消だが、新之助と同様「府下十傑」に数えられる剣士としても知られる。
宝蔵院流の遣い手で得意は槍などの長物。
火消侍には珍しく属性は壊し手系で、火事場では槍のように柄を長くした特製の鳶口で梁を落とすことを得意とする。
「玉麒麟」では逃亡する新之助の前に立ちはだかるが、意外な行動にでる。

「風傑(ふうけつ)」仙助

  • 番附:前頭六枚目
  • 所属:加賀藩
  • 演 :若林久弥
  • 登場:2・4・7

加賀藩の小頭だが、大団扇を使わせたら江戸一番の団扇番でもある。
「夜哭烏」では圧倒的に不利な状況を笑い飛ばし、清水陣内らとともに炎に立ち向かった。

「谺(やまびこ)」彦弥

  • 番附:前頭七枚目
  • 所属:新庄藩
  • 演 :津田英佑
  • 登場:1~7

軽業師と兼任するぼろ鳶組の纏師。
谺は「軽業一座・山(やま)城屋の彦(ひこ)弥」の略称である。
ぼろ鳶組一の美男子で女関係の話題が尽きない。
「夢胡蝶」のメインキャラクター。

「唐笠童子(からかさどうじ)」日名塚要人

  • 番附:前頭八枚目
  • 所属:麹町定火消
  • 演 :シライケイタ
  • 登場:5~7

常に唐笠を目深にかぶりその表情は杳として知れない。
実は本物の日名塚要人と入れ替わった幕府の…であり、新之助に準じるくらい剣の腕は立つ。
基本的に偽物なので火消の経験は乏しいはずだが、火事場での指揮能力も一級という謎の男。

「天蜂(てんほう)」鮎川転

  • 番附:前頭九枚目
  • 所属:本庄藩
  • 演 :松田洋治
  • 登場:5

本庄藩の火消組頭取であるが、「天蜂」の名のとおり江戸三大纏師のひとりでもある。
「夢胡蝶」事件により江戸を離れた後の姿が「恋大蛇」収録の中編に描かれている。

「不退(ふたい)」宗助

  • 番附:前頭十六枚目
  • 所属:に組
  • 演 :???
  • 登場:7

暴君・辰一が支配する「に組」にあって、辰一に殴られても諫言することができるその勇気を認められ、父・宗兵衛の通称「不退」を受け継いだ。
オーディオドラマ版ではスルーされていたが「襲大鳳」で初登場。

その他

「蟒蛇(うわばみ)」野条弾馬

京都で活躍するため江戸の火消番附には載らないが源吾が関西で最も頼りにする火消(演:土田英生、登場:3)。

「千眼(せんがん)」卯之助

「に組」の先代の頭でニックネームはその視野の広さから。
大音謙八、柊古仙、金五郎、松永重内、鳥越蔵之介たちの世代の最後の生き残り。
実は火消になる前にとんでもない経歴を持っているのだがオーディオドラマ版では語られていない(演:柴田義之、登場:7)。

「白狼(はくろう)」金五郎

前頭筆頭だった老火消(元い組の頭)で漣次の師匠。
漣次の才を見込んで自ら頭の座を譲った。
その後も火消を続けていたが、明和9年に狐火の起こした火災で殉職(演:鈴木一功、登場:1)。

「青狼(せいろう)」慶司

金五郎の息子だが父に反発し火消を嫌って番付火消に喧嘩を吹っ掛ける行為を繰り返していた。
ただこの描写がある「狐花火」がオーディオドラマ版では省略されているため、オーディオドラマ版では「襲大鳳」にわずかに登場するのみ(演:永嶋柊吾、登場:7)。

「鉄鯢(てつけい)」松永重内(故人)

松永源吾の父で、源吾の1代目の飯田橋定火消の頭取。
鈍くさく冴えない火消と言われていたが「火消はどんな命でも救う」という松永家のポリシーは父が子に自らの最期の姿で示したものである(演:鈴木一功、登場:7)。

「黒虎(くろとら)」大音謙八(故人)

大音勘九郎の父で先代の加賀鳶の大頭。
人望厚く非常時には江戸全ての火消の指揮をとることもあった。
「焔将の家」と呼ばれた大音家は謙八まで10人の大頭を輩出したが、うち8人を火事場で亡くすという壮絶な運命を辿っている(演:影山泰、登場:7)。

「炎聖(えんせい)」伊神甚兵衛(故人?)

元文二年に彗星のように現れ、初年度いきなり前代未聞の197回もの出動を重ねる。
そしてわずか2年で尾張藩火消組を日ノ本一の火消組と呼ばれるまでにし、自身も江戸始まって以来の天才火消と謳われた。
以来16年間、担当した火事場で一人の死者もださず最強の名を恣にしたが、ある事件で尾張藩火消組はその全員が殉職するという衝撃的な終焉を迎え、まさに伝説の存在となった。
「大物喰い」、「鳳(おおとり)」などの異名も持つ(演:石橋蓮司、登場:7)。

「白蜻蛉(しろかげろう)」団五郎(故人)

多くのスター火消が所属した尾張藩において「団五郎ほどの纏番はいない」と伊神甚兵衛に言わしめた纏師。
息子の段吉は新庄藩の纏番・彦弥の幼なじみだがそれと知るのは随分、後のことである(演:金児憲史、登場:7)。

今後追記予定

ご覧になってわかるとおり、熱心なファンの方から見るとまだ中途半端な内容だと思いますがまずは「玉麒麟」放送中にと思いアップします。
今後、再聴、再読できましたら記事を修正、充実させるつもりです。


■ぼろ鳶組シリーズ一覧
松永源吾とぼろ鳶組は今日も火事と戦う、ただ江戸の街を守り、人々の命を救うために。

  1. 火喰鳥 羽州ぼろ鳶組
  2. 夜哭烏 羽州ぼろ鳶組
  3. 鬼煙管 羽州ぼろ鳶組
  4. 菩薩花 羽州ぼろ鳶組
  5. 夢胡蝶~羽州ぼろ鳶組
  6. 玉麒麟 羽州ぼろ鳶組
  7. 襲大鳳 羽州ぼろ鳶組
  8. お互いの呼び方で解説する新庄藩火消組
  9. 通称・異称で紹介する江戸の火消たち
  10. オーディオドラマ化から漏れた作品を補完する


※2024/4/13追記
「襲大鳳」放送中にお遊びでこんなポストをしてみました。
こちらもお楽しみください。

Hirokazu

オーディオドラマの世界へようこそ!

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