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対決ショート・ショート-赤川次郎VS横田順彌 (アドベンチャーロード)

  • 作品 : 対決ショート・ショート-赤川次郎VS横田順彌
  • 番組 : アドベンチャーロード
  • 格付 : B+
  • 分類 : 多ジャンル(競作)
  • 初出 : 1986年11月3日~11月7日
  • 回数 : 全5回(各回25分)
  • 原作 : 赤川次郎、横田順彌
  • 脚色・構成 : 東理夫
  • 演出 : 保科義久、松本順
  • 主演 : 江守徹

本作品「対決ショート・ショート-赤川次郎VS横田順彌」は、赤川次郎さんと横田順彌さんの共著によるショートショート集「二人だけの協奏曲」を原作とするラジオドラマです。
原作小説でおふたりは15テーマで競作しているのですが、本ラジオドラマはそのうち「魔法使い」「ギャンブラー」「それからの桃太郎」「怪談」「卒業」の5テーマの作品を取りあげています。



番組名がわからない

本作品はアドベンチャーロードのレギュラー放送の作品「背いて故郷」(1986年11月3日~11月7日)と「真夜中の東側/ミッドナイト・ジミー」(11月10日~11月14日)の間の時期に放送されたのですが、通常とは異なる1回25分の特殊な構成。
厳密にはアドベンチャーロードではなく特集番組なのだと思いますが、特別な番組名のコールがないので取りあえず上記では番組名をアドベンチャーロードとしました。

ミステリーとSFの対決ではない

さて、ご存知のとおり赤川次郎さんといえばミステリーの、横田順彌さんといえばSFのイメージが強い作家さんです。
ひとつのテーマを、ひとりがミステリーで、ひとりはSFで作品化するのは面白い試みだな、と思ったのですが、残念ながら赤川さんの作品のミステリー色は薄く、横田さんの作品のSF色も薄く、日常の延長線上を舞台とした、ちょっとオチのあるショートショートという域を出なかったのは残念でした。

実はかなりの小品

また、1回25分と長め枠にしているとはいえ、各回の冒頭に全体の案内役である江守徹さんによるイントロダクションが結構長めに入り、またふたつの作品の間に音楽が挟まるため、実際の作品はそれぞれ5~10分程度。
これではあまり凝った内容にすること自体が難しかったのかも知れません。

各回の概要

それでは各回の紹介です。
個人的な感想ですが、好きな作品とあまり気に入らない作品が極端にわかれました。
特に第1回・第2回はあまりピンとこず、先行き心配だったのですが、その後持ち直し、「桃太郎の最後」、「幽霊の正体見たり」、「ゆき女」は楽しく聴くことができました。
そして一番のお気に入りは「卒業式」。
かなりベタな話ではありますが「ふたり」などでも感じた赤川次郎さんの作品が持つ胸が締め付けられるようなリリカルさが感じられる作品でした。

第1回テーマ「魔法使い」

赤川次郎 昼下がりの魔法使い」(主演:太田淑子、格付:C)
日々家事に追われる主婦。彼女に魔法のような出来事は起きるのか。
有閑マダムのどうということはない妄想。あまり共感は湧かない。
音楽 「Black Magic Woman」(Santana)
横田順彌 父と娘」(主演:梶哲也、格付:B-)
娘が悪い友達とつきあっているらしい。父親は問い詰めるが…
普通の一家かと持ったら…のあたりは面白いが、オチはつまらない。

第2回テーマ「ギャンブラー」

横田順彌 魔界のギャンブラー」(主演:安原義人、格付:B)
どんなポーカーフェイスも見破る男に国家存亡の危機は託された。
完全にオチが読めてしまうのはいかがなものか。
音楽 映画「ディアハンター」のテーマ
赤川次郎 ちょっとした賭け」(主演:安西正弘、格付:B-)
悩む男性に彼は説く「ギャンブルの面白さは運に自分を任せることです」
これも大体オチが想像できてしまう。しかもありがちなオチでもある。

第3回テーマ「それからの桃太郎」

赤川次郎 桃太郎の最後」(主演:安原義人、格付:A+)
老境にさしかかり再度鬼ヶ島を訪れる桃太郎。しかしそこでは鬼達が…
オチは予想できるがちょっとミステリー風の謎解きがあるのが好感触。
音楽 瀧廉太郎「桃太郎」
横田順彌 異説・桃太郎 SF編」(主演:神田陽子、格付:B)
異説・桃太郎 ハチャハチャ編・ブラック編」(主演:林家こぶ平)
鬼退治から二千年後、鬼の反撃が始まった。追いつめられた人類は?(SF編)
SF編は因果が巡る話。オチは予想できるが綺麗にまとまっている。
ハチャハチャ編とブラック編は林家こぶ平さんの独演。オチがわからない…

第4回テーマ「怪談」

横田順彌 幽霊の正体見たり」(主演:島田敏、格付:A-)
幽霊が見えると怯える彼女。近寄ってそれがススキであることを納得させたが…
オチは予想できるがどこかセンチメンタルで悪くない。
音楽 映画「ゴーストバスターズ」のテーマ
赤川次郎 ゆき女」(主演:安原義人、格付:A+)
雪女は実在する。男は会社員時代に出会った部下について語り始めた。
ゆき女の正体は最後に判明する。若干ダジャレぽいが意外ではあった。

第5回テーマ「卒業」

赤川次郎 卒業式」(主演:安原義人、格付:AA)
「実は6年前、子供をはねてしまったんです」運転手が語り始めた。
赤川作品らしいリリカルな作品。槐柳二さんの声が染みる。
音楽 「Mrs. Robinson」(Simon & Garfunkel)
横田順彌 卒業制作」(主演:島田敏、格付:B)
うまくいかない卒業制作。思い切って最初から作り直すべきだろうか。
SFらしい神の視点の物語。結末は予想通りだが。

主演は江守徹さん…かな?

さて、本作品を脚色したのは作家の東理夫さんなのですが、本作品での扱いは単なる脚色ではなく「脚色・構成」。
これは原作掲載のショート・ショートを脚色するとともに、全体を案内人のトークでつなぐ構成としたからだと思います。
その案内人を江守徹さんが務めており、トークの時間が意外と長いこと、毎回必ず登場することから作品全体の主演は江守さんとさせていただきました。

作品内の主演は安原義人さん

ただ江守さんはショート・ショートの中では登場していません。
作品本体の出演者から一人選ぶとすればやはり安原義人さんでしょう。
アドベンチャーロードローでは「最後の惑星」、「成層圏ファイター」などで主演されていますが、本作品も実質的な主演作と言って良いと思います。

アニメ声優、講談家、落語家

これに次ぐのが声優の島田敏さんでしょうか。
本作品は1986年11月の放送ですので、同年2月まで放送していた「機動戦士Zガンダム」内でラスボス、パプテマス・シロッコを演じた直後の出演ということになります。
また、その他の主な出演者としては「異説・桃太郎」で本職の講談師(神田陽子さん)と落語家(林家こぶ平さん、後に林家正蔵として「吸血鬼」のナレーション)を起用しているのが目を引きます。

槐さんの声が優しい

そして何といっても印象的なのは「卒業式」での槐柳二(さいかち・りゅうじ)さん。
「天才バカボン」のレレレのおじさんで知られる独特の声の持ち主で、青春アドベンチャー系列の番組でも「ハートでジャンプ!」や「封神演義 第3部 易姓革命」など、個性的過ぎる役で良く起用されています。
でも、実はアニメ「めぞん一刻」で響子さんの義父(音無老人)を演じるなど、優しい老人を演じてもとても味わい深いと思います。

【保科義久演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
こちらを是非、ご覧ください。

Hirokazu

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