すやまたけしさんは、雑誌「詩とメルヘン」にて、同誌の名を冠した賞を受賞して本格デビューされたメルヘン作家さんです。
Amazonで検索すると、「火星の砂時計」(1987年12月)、「ナーガラ町の物語」(1988年10月)、「帆船の森」(1990年1月)の3作品が出てきますが、いずれも絶版のようです。
ちなみに、すやまたけしさんご自身も2011年に亡くなられているようです…
時間の流れを感じますね。
さて、本作品は1話完結、全5回の形式で放送された短篇ラジオドラマ集です。
各回ごとに内容が異なるだけでなく、出演者も少しずつ異なります。
一応、1作品で主演し、2作品でナレーターを務めた茅野イサムさんが主演格でしょうか。
内容はファンタジー色が強く、とても幻想的な雰囲気です。
「サウンド夢工房」は「アドベンチャーロード」の直接のあと番組ですが、「アドベンチャーロード」のような冒険色は強くなく、その少し前に放送されていた「ふたりの部屋」、「カフェテラスのふたり」に近いリリカルな作品の多い番組でした。
本作品はそういった「サウンド夢工房」の雰囲気を代表する作品のひとつです。
なお、各回の概要は以下のとおりです。
ちなみになぜか表題作の「帆船の森」がこのラジオドラマでは選ばれていません。
◆第1話 「地下鉄の鳩」
帰宅する途中、地下鉄のホームから鳩が飛んできた。少年とトンネルの中を歩むと…
まあファンタジーだねという程度の感想。長野に地下鉄があるのは知らなかった。
◆第2話 「女優」
取り壊し予定の古い劇場で、女優がひとり語り始める。古き良き時代のことなどを。
女優が半生を語っているのか、それとも語り自体が台本なのか。雰囲気はある。
◆第3話 「香りの伝言」
調香師の女性が初夏の夕暮れに嗅いだのはバラの香り。しかも悲しそうなバラの香り。
ちょっと短めでネットで10分程度。テーマ曲と丸山みゆきさんのトークで時間調整。
◆第4話 「月光の落下傘」
父は戦争に行ったはず。しかし、ある夜、父は息子の前に落下傘で降下してきた。
予想通り救いのないオチ。しかし救いなんてなくて良い話ではある。
◆第5話 「トランジスター・ラジオ」
公園で古いラジオに電源を入れると、僕と彼女の前に不思議な番組が流れ出した。
ジャズの名曲「煙が目にしみる」をフィーチャーした作品。オチは予想どおり。
なお、上記の5作品の他に原作小説集では、「ハイウェイ・スター」、「オリーブ色のバス」、「泣き石」、「トナカイよ、永遠に」、「フレスタ旅行」、「風の呼び声」、「ガラス湖」、「エルドの斜塔」、「サーカス・タンカーの密航者」、「ミードの旋盤」、「水への帰郷」、「夏のクリスマス・ツリー」、「帆船の森」、「〇・五光年通信」の各作品が収録されているようです。
最後に、本作品で特筆すべきことを挙げると、「サウンド夢工房」が開始された1990年4月から毎回、番組のテーマ曲として流れていた「涙ながすその前に」を歌っている丸山みゆきさんが出演されていること。
といってもドラマ中に役を持って出演されているわけではなく、案内役(放送中では「お相手」、「ご案内」と表現)として、冒頭とエンディングに登場します。
エンディングでは、ごく短いながら各回のドラマの内容に沿ったテーマでのフリートークの時間があり、特に第3回ではドライフラワーについて熱く語っていらっしゃいます。