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あたふたオペラ からふる物語 作:萩田頌豊与(青春アドベンチャー)

  • 作品 : あたふたオペラ からふる物語
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A+
  • 分類 : コメディ
  • 初出 : 2023年10月9日~10月13日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 作  : 萩田頌豊与
  • 演出 : 藤﨑謙
  • 主演 : 村上公太

月曜日から金曜日、毎日放送されるラジオ番組「おとなのためのトークショー・じゃこもかしこも」の今週のゲストは、劇団「盗んだだるま」を主催する劇作家で演出家の唐富士夫(から・ふじお)。
司会の久子と唐との会話は全く嚙み合わないが、唐の特技「25文字で名著」や、唐の学生時代の恋愛話でなんとか番組は進行していく。
しかし、4日目にして番組は緊急事態を迎えてしまう。
そして唐の恋愛話に登場した人たちが次々とスタジオに現れて…




2022年9月、すべての青春アドベンチャーファンを驚愕と混乱に巻き込んだ「あたふたオペラ 『からめん』」。
本職のオペラ歌手が全力で名作オペラ「カルメン」の替え歌(=ダジャレ)を絶唱するという奇天烈な作品でした。
その第2弾が本作品。その名も「あたふたオペラ からふる物語」です。

今度はプッチーニだ!

前作は丸ごと1作(全5回)、世界で一番有名なオペラ、ジョルジョ・ビゼーの「カルメン」をフィーチャー?した作品でした。
しかし、本作品は名作オペラを多く残したジャコモ・プッチーニの有名オペラのうち、「蝶々夫人」(第1回)、「ラ・ボエーム」(第2回)、「トスカ」(第3回)、そして「トゥーランドット」の4作品を替え歌にする贅沢な構成。
特に「トゥーランドット」は、名曲「誰も寝てはならぬ」のワンフレーズを第1回から第4回までの毎回、序盤の「25文字で名著」のコーナーと終了間際のまとめで村上公太さんが歌い上げる上に、最終回では堂々フルの歌唱が入り、メイン格の取り扱いがされています。

ストーリー?テーマ?

で、ストーリーですが…
ストーリー何それ?おいしいの?

まあアレですよ、ストレートプレイの部分はほぼボケとツッコミの連続。
そして歌唱部分は替え歌。
ストーリーとかテーマはあってないようなもの。
いいんです。これはそういう作品なんですから。

かっちりした構成

ただ前作と比較すると、毎回(特に第1回から第3回)の構成がかなり固定していることと、メインとなる曲の歌唱時間が長いことからかっちりとストーリーができている印象を受けました。
基本的な構成は、

  1. ラジオ番組スタート【劇】
  2. 「25文字で名著」【歌唱】
  3. 唐の思い出話【劇】
  4. 思いに絡んだ替え歌【歌唱】
  5. まとめ【歌唱】

の流れ。
前作では主演の又吉秀樹さんが第4回まで歌わなかったことと比較すると、今作の村上公太さんは「25分で名著」と「まとめ」で、短いとはいえ初回から美声を披露されています。

素晴らしい高音だが…

しかし、本作で圧巻なのはやはり各回の4.で長い歌唱を披露されるヒロインのみなさん。
具体的には第1回の渡邊仁美さん、第2回の鵜木絵里さん、第3回の金子美香さん(第4回以降は聞いてのお楽しみ)のみなさんが全員本職のオペラ歌手。
ソプラノやメゾソプラノで披露される替え歌は、前作ではちょっとなかったほどの長さで、高音でビンビンと続くこともあり、圧巻です。
ただし正直、女性が高音でオペラ風に歌うと日本語の聞き取りが難しいのが欠点だとは感じました。
制作側もわかっていたようで、メインの歌唱部分すべての歌詞をホームページに乗せているのですが、正直それを読みながら聴くのもなにか違う気がする。
完璧に楽しめるのは元々のオペラファンだけ、という傾向は前作よりも一層強くなったように感じました。
ただストレートプレイ部分のボケとツッコミも一層冴えているので、オペラファンではない人間にとっても楽しめる部分が多かったのは良かったと思います。

(参考)公式ホームページにおける歌詞紹介

こっちの歌詞紹介

ちなみに上記のとおりメインの歌唱部分の歌詞は全文、公式ホームページに載っているのでここでは「25文字の名著」の方を書き留めておきます。
世界の名著って全部「死んだ」が結論なんですね…

  1. 「人魚姫は王子と 結ばれぬ恋をして 死んだ」(人魚姫)
  2. 「売れないわ、マッチが 寒すぎて火をつけて 死んだ」(マッチ売りの少女)
  3. 「おいでパトラッシュ 僕はネロ、絵を描いて 死んだ」(フランダースの犬)
  4. 「子ぎつのゴンは 誤解され、銃で撃たれ 死んだ」(ごんぎつね)
  5. 「許されぬ恋を 貫く若い二人は 死んだ」(ロミオとジュリエット)

なお各回のまとめの替え歌の方は聴いてのお楽しみとしてここでは書かないでおきます。

出演者の皆さん

さて本作品の出演者は主役の村上公太さんを始め本職のオペラ歌手の皆さん。
これに女優の池谷のぶえさんや落語家の立川がじらさん、吉本芸人の浦井のりひろさん・平井まさあきさん(男性ブランコ)が加わる形。
これに「ハプスブルクの宝剣」に出演経験のある田代万里生(たしろ・まりお)さんが加わります。
田代さんって私、ミュージカル俳優だと思っていたのですが、もともと東京藝術大学在学中にオペラデビューした声楽家さんだったんですね。
本作でも(やや少なめですが)美声を披露されています。
ちなみに田代万里生さんの役名は「マリオ」。
「からめん」の時の上原理央=石神理央=エスカミーリョと同様に、「トスカ」にもともと存在する「マリオ」という役にあてた狙った配役です。

まとめ

さて本作を聴いた皆さんの感想はいかがだったでしょうか。
私は正直「あたふたオペラ」の第2弾ができると聞いてやや不安な部分もありました。
「からめん」自体が、出オチというか、アイデア勝負な部分が濃厚でしたから。
しかし聞いてみると、これはこれで工夫が凝らされて楽しく聴くことができました。
ただ最初に「からめん」を聴いたときほどの衝撃はなかったかな。
また、オペラに関する素養があったならきっと格付けは2段も3段も上だったのだと思います。
我ながら教養のなさが恨めしいです。


【2023年リスナー人気投票上位作品】
当ブログ主催の2023年青春アドベンチャー・人気アンケートで、当作品が第3位の得票を得ました。
詳しくは別記事をご参照ください。





Hirokazu

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