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春麻呂の夢 作:相良敦子(特集オーディオドラマ)

  • 作品 : 春麻呂の夢
  • 番組 : 特集オーディオドラマ
  • 格付 : C
  • 分類 : 歴史時代(日本)
  • 初出 : 2018年1月6日
  • 回数 : 全1回(60分)
  • 作  : 相良敦子
  • 音楽 : 菅野由弘
  • 演出 : 藤井靖
  • 主演 : 西井幸人

天平の時代。
今の京都、木津川のほとりでは新しい都の造営が始まっていた。
後に恭仁京(くにきょう)と呼ばれることになるその都は、平城京で起こった様々な悪しき事による祟りを恐れて遷都するためのものだが、貧しい庶民にとっては生活を圧迫するものでしかなかった。
その造営の普請場に春麻呂という少年がいた。
親方にこき使われる毎日に反発の気持ちを強めて春麻呂だが、ある日、鳥の糞と共に堕ちてきた一枚のお札のようなものを入手する。
驚くべきことにそのお札はしゃべることができたのだ。


本作品「春麻呂の夢」はNHK-FMのオーディオドラマで、2017年から2022年に掛けて年始に3本制作された奈良時代を舞台とした作品群(青き風吹く、本作品、さざ波のみち)のひとつです。
これらの作品はいずれにも相良敦子さん脚本、菅野由弘さん音楽、藤井靖さん演出なのですが、ストーリー上のつながりは特になく、それぞれが独立した作品です。

平城京から恭仁京へ

本作品は、放送された順番としては2番目ですが、時代設定的には第1弾「青き風吹く」より少し前(恭仁京遷都は740年)、橘諸兄が政権を担当していた時期が舞台です。
作中でも橘氏の登場人物が出てきますし、恭仁京の場所自体が橘諸兄の本拠地であったから選定されたとの説もあるようですが、本作品に橘諸兄など歴史上の著名人物が登場することはなく、あくまで市井の人物を中心に物語は進んでいきます。

突然現れるSF要素

特に主人公の春麻呂は、名前だけは貴族風ですが、建設現場で働く孤児の少年に過ぎません。
一応「楽しく生きて腹いっぱい食べられる場所」を目指すという大望はあるのですが、特に何か特殊な能力も大変な努力をして訳ではありません。
しかしある日、不思議なお札(といっても紙製の札ではなく木札的なものの様子)を拾ったことに気をよくして普請場を抜け出します。
ただ、この「お札」というSF的なギミック(Siriの動くスマートフォン的なもの)の作劇上の意味合いが今一つよくわからないことや竹下景子さんの語りがあまりに穏やかであることもあり、全体の印象はSF的というより昔話的。

主人公の成長物語?

また、主人公の成長に焦点を当ててみようとしても、彼の行動は割と行き当たりばったりですし、ストーリー展開も(不条理ではないけど)昔話的な理不尽なもので、結局主人公の境遇が大きく変わることもないため、ビルディングスロマンとも言い難い。
いまひとつ作者が物語を通じて訴えたかったことがわかりづらいように感じてしまいました。
以上はあくまで私の感想ですので、違う感想をお持ちの方はご容赦ください。

出演者紹介

主役の春麻呂役は本作放送当時、若手男性俳優集団D2およびD-BOYSのメンバーとして活躍していた西井幸人さん。
その後の2021年にD-BOYSは卒業しているようです。
その他、渡辺徹さん、竹下景子さん、野々すみ花さんなどがご出演。
渡辺徹さんは青春アドベンチャーの「白狐魔記 洛中の火」(2015年・楠木正成役)、「白狐魔記 元禄の雪」(2016年・大石内蔵助役)のほか、FMシアターでもこの時期複数作品(風波、勝縄)に出演されていました。
まさか2022年になくなれるとはこの頃、想像もしていませんでした。

Hirokazu

オーディオドラマの世界へようこそ!

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