【青春アドベンチャー全作品アンケート結果3】~作品編その③:得票数概ねトップ50(7票~5票)~
2022年3月~10月に実施した青春アドベンチャー全作品アンケートで、得票数が21位タイから36位タイまで(概ねトップ50)の作品とその作品へのコメントは以下のとおりです。
同得票数の作品は放送された時期が早いものを先に並べています。
(注意)コメントには一部ネタバレ要素があることにご留意下さい。
◆星虫(1992年)
星虫シリーズは本作と「イーシャの舟」が青春アドベンチャー化されているが、物語上の時系列とは逆に本作品が先に取り上げられた。
主演の小川範子さんはアイドル歌手として有名だった方で本作が青春アドベンチャー初主演だが、この後も「二の悲劇」など何作品か出演している
◆北壁の死闘(1992年)
まるで番組がアドベンチャーロード時代に戻ったかのような、軍人を主人公とするハードな冒険もの。
名作「鷲は舞い降りた」リスペクト作品と思われるが、その「鷲は舞い降りた」も2020年に青春アドベンチャー化された。
◆マドモアゼル・モーツァルト(1992年)
音楽座ミュージカル「マドモアゼル・モーツァルト」とキャストや音楽を共用するという離れ業を実現した作品。
同種の企画としては演劇集団キャラメルボックスの舞台と同じキャストとした「旅猫リポート」がある。
◆ロスト・ワールド(1997年)
秘境探検ものの元祖ともいうべきドイルの「失われた世界」をラジオドラマ化した作品。
「闇の守り人」など多くの作品においてワンポイントで大物役を演じた名優、納谷悟朗さんだが、青春アドベンチャーで主役級の役を演じたのは本作品のみ。
◆鏡の偽乙女~薄紅雪華紋様~(2011年)
大正時代を舞台にした死者と怪異が交錯するファンタジーで、雰囲気的に近いのは「家守綺譚」だがよりアクティブな内容。
後の朝ドラヒロイン高畑充希さんが端役で出演されている。
◆斜陽の国のルスダン(2017年)
西洋歴史ものに特化した並木陽さんの初採用作品。
後に「ハプスブルクの宝剣」の脚色や「1848」などのオリジナル脚本も手掛けられる並木さんだが、本作品の脚色は別の方。
◆空色勾玉(1989年)
原作は1988年刊の荻原規子さんのデビュー小説で、ラジオドラマ版の初出は1989年の「アドベンチャーロード」にて。
約20年後の2009年に再放送されたが、アドベンチャーロードの作品が青春アドベンチャー期に再放送されたのは今のところこれ一作のみ。
◆サラマンダー殲滅(1991年)
ひとりの女性の復讐劇が世界の崩壊の危機につながるSFらしい大きな展開の作品。
塩沢兼人さんが演じる夏目郁南(なつめ・いくなん)の狂気と愛情が鬱陶しくも印象的。
それにしても「サラマンダー殲滅」というタイトルのなんと格好良いことか。
◆サンタクロースが歌ってくれた(1993年)
演劇集団キャラメルボックスの名劇作家・成井豊さんの原作を、後に「けいおん!」など多くのアニメを手掛ける吉田玲子さんが脚色。
キャラメルボックスの看板作品を、劇団☆新感線の主力俳優だった渡辺いっけいさんが演じているのも貴重かもしれない。
◆アナスタシア・シンドローム(1994年)
この時期の川口泰典さん演出作品に多かったサイコホラーで、川口作品といえばこの人、ともいえる前田悠衣さんが主演。
それにしてもあのラストの後味の悪さはみなさん印象的だったようで。
◆天体議会~プラネット・ブルー~(1997年)
長野まゆみさん原作作品はアドベンチャーロード時代を含め3作品(本作品、少年アリス、テレヴィジョン・シティ)制作されているがすべて同じ系統。
長野さんは女性向きにしか作品を作らないと宣言されているそうで、本作品も明らかに好き嫌いは別れるだろうが、いっそ見事ではある。
◆夏の魔術(1997年)
青春アドベンチャー有数の原作採用を誇る田中芳樹さんの原作作品。
ホラーだが中盤以降はさほど怖くはなく、青春ものの趣が強い。
◆不思議屋百貨店(1999年)
不思議屋シリーズの記念すべき第1作にして、個人的な意見では最良の作品。
この作品で確立したフォーマットは以降崩れることはなかった。
◆645~大化の改新・青春記~(2001年)
大化の改新をテーマにした歴史劇のはずだが、登場人物たちの行動が場当たり的なのと、セリフがほぼ現代風な(というかチャラい)ため、好き嫌いが分かれる。
その意味で、一見フレンドリーな見かけに関わらず、劇作家によるオリジナル脚本作品らしい尖った作品ともいえる。
◆六人の嘘つきな大学生(2022年)
当アンケート開始のわずか2カ月前に放送された、ここまでのランキングで唯一の2022年作品。
前半は密室でのサスペンス調のセリフ劇、後半は関係者を尋ね歩くミステリー風味と、一粒で二度おいしい作品。
◆わたしは真悟(1991年)
じんのひろあきさん曰く「わたしの中でラジオドラマの特性を一番うまく使いきれたなと思う」作品だが正直ストーリーはわけわかめ。グワシ!
あづみれいかさんと前田悠衣さんが声を合せて演じる真悟が作品に異様な迫力を与えている。
◆アドリア海の復讐(1994年)
デュマの「モンテ・クリスト伯」をジュール・ヴェルヌが翻案した冒険復讐劇。
多くの古典や冒険ものを手掛けられた伊藤豊英さんの演出。
◆完璧な涙(1997年)
星雲賞を8回受賞したSF作家・神林長平さん原作のSFだが、本格過ぎて展開は難解。
主演の有馬克明さんは織田優成に改名後も「タイムスリップ明治維新」など多くの作品に出演された。
◆ぼくは勉強ができない(1998年)
バブル真っ盛り(1991年雑誌掲載開始、1993年刊行)に発表された山田詠美さんの小説をラジオドラマ化。
時代の空気を濃厚に反映しており、当時の高校生のカッコよさの定義が窺える作品。
◆オルガニスト(1999年)
原作は第10回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
音楽大学を舞台にした青春劇だと思ったら、やはりファンタジーだった。
◆しゃばけ(2002年)
後にテレビドラマ化もされた人気作で、日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞受賞作。
続編「しゃばけ2」(ぬしさまへ)は趣向が少し違う短編集だが、そちらもなかなかの出来。
◆女王の百年密室(2003年)
ミステリー作家・森博嗣さんの「百年シリーズ」第1作のラジオドラマ化で、当時、森さんの著作では少なかったSF色・ファンタジー色の強い作品。
それを意識してか第2作「迷宮百年の睡魔」を含め高山みなみさん、島本須美さん、草尾毅さんなどアニメ系の声優さんが多く出演。
◆白狐魔記 源平の風(2014年)
わずか全5回のこの作品が放送された時にこれが番組有数の長期シリーズのスタートであることを理解していたリスナーがどれだけいただろうか。
ちなみにシリーズカンスト後に原作で続編(天保の虹)が刊行されたが、まだ青春アドベンチャー化されていない。
◆クラバート(2014年)
宮崎駿さんも絶賛するドイツ児童文学の名作をオーディオドラマ化。
ループものに似た構成は終盤への期待を高めはするが、反面、中盤やや冗長になった面もある。でも良作。
◆逢沢りく(2016年)
2016年当ブログ実施のアンケートで作品・出演者ともにぶっちぎりの1位だった作品。
あまりにもフラストレーションの溜まる展開と、最終盤の恒松祐里さんの演技がとても印象的だった。
◆ベルリン1989(2019年)
「SPY×FAMILY」のヒットが記憶に新しいが、最近、冷戦下の東欧やそれをモデルにした架空の世界を舞台にする作品が増えているように感じられる。
1989年、ベルリンの壁崩壊も歴史の一部になったのだろうか。
◆夜哭烏 羽州ぼろ鳶組(2019年)
第15位の「火喰鳥」(2018年)に続く羽州ぼろ鳶組シリーズの第2弾。
実は「火喰鳥」は2018年のアンケートで今一つの人気だったが、この「夜哭烏」で人気を確立した。
太鼓・半鐘という火消の取り決めをミステリーの種に据えているのが面白い。
【2022年実施・青春アドベンチャー全作品アンケート】
■アンケート企画の結果
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