【2021年NHK-FMオーディオドラマ・リスナーアンケート①:青春アドベンチャー・作品編】
7年目となりました2021年の青春アドベンチャーのリスナーアンケートにつきまして、以下のとおり実施しました。
今年も多くの皆様にご協力いただきました。
感謝の念に堪えません。ありがとうございました。
さて御託はいいから早く発表しろ、とお思いかと思います。
それでは早速作品への投票及びコメントから発表をスタートします。
(注意)コメントには一部ネタバレ要素があります!
◆菩薩花 羽州ぼろ鳶組
圧倒的な得票数で、第3弾「鬼煙管」までの3作品がなしえなかった単独年間トップを取ったのは「ぼろ鳶組シリーズ」の第4弾「菩薩花」。
折しも投票期間中に原作者である今村翔吾さんの直木賞受賞が発表されたことも花を添えた。
なお、12月30日に10作品連続で菩薩花だけに投票する回答が続いた(詳細は「反省会」の記事にて)。
ファンによる集中投票があったことが窺われ、2位以下との得票差はやや過大とも考えられるが、それを除いてもトップ確実な得票であり堂々の1位といえる。
◆1848
「暁のハルモニア」以来、似たようなタイトルで3部作が制作された並木陽さんのオリジナル西洋歴史ドラマだが、今年は一転してシンプルなタイトルの作品となった。
舞台はハンガリーで、今作もミュージカル俳優と元宝塚女優をふんだんに起用。
全15話は並木さんオリジナルでは最長。
◆ヨコハマ・ジャスミンホテル
第3位となる14票を獲得した作品は2作品あり、そのうち1作品がこの「ヨコハマ・ジャスミンホテル」。
大正期の横浜を舞台にしたエキゾチックな雰囲気の作品で、藤岡正明さんの気だるげな演技が印象的。
◆人工心臓
第3位の2作品目がこの「人工心臓」。
小酒井不木の推理小説を下敷きに作り上げられたオリジナルストーリー。
独特の幻想的な雰囲気は概ね高評価だが、全5話の割に複雑でわかりづらいストーリーに苦戦したリスナーが多かったようだ。
◆ピーチ・ガイ~ハリウッド・リメイク『桃太郎』~
2020年の「00-03 都より愛をこめて」に続き、2年連続で藤井青銅さん脚本のコメディが登場。
基本的にひたすら馬鹿馬鹿しい展開が続くがラストは意外ときれいにまとまっている。
個人的にはもっと毒があっても良かったと思うが。
◆負け犬たちのミッドナイト・バス
6位も2作品。
この「負け犬たちのミッドナイト・バス」は漫画家、サレンダー橋本さんの原案付きの作品。
一体どういう経緯でこのような形態になったのだろう。
なお、主演の栗原類さんの演技についてうまいといってよいのかよくわからないが、少なくとも作品にはとてもあっていた。
◆浮遊霊ブラジル
もうひとつの第6位の作品。
大御所・西田敏行さんが「新日曜名作座」から「青春アドベンチャー」へ出張出演?
2021年では数少ない原作小説のある作品で、原作者は「エヴリシング・フロウズ」(2017年)、「ディス・イズ・ザ・デイ」(2019年)に次いで3作品目となる津村記久子さん。
◆黒十字の魔女 ヴィクトリア朝怪奇冒険譚外伝
原作小説を消化し終わり、ラジオドラマとしても完全に終了したと思っていた「ヴィクトリア朝怪奇冒険譚」がなんと原作者以外の方の手によるオリジナル脚本作品として復活。
びっくりしたけどメープルに再会できたことは思いがけない喜びだった。
◆アゴラ69~僕らの詩(うた)~
タイムスリップものだがスリップ先は学生運動華やかなりし1960年代末期。
いつの間にかこの時代も日本史の一部になったということか。
学生運動の時代も遠くになりにけり、かな(私も実際の時代を知らないけど)。
◆人喰い大熊と火縄銃の少女(再)
ベスト10最後の1作は上位10作の中では唯一の再放送作品である「人喰い大熊と火縄銃の少女」。
一種の怪獣物のアクション作品と言ってしまえばそれまでだが、音響効果と演技があいまって映像がないのに十分以上に迫力のある作品になっており、高評価も納得。
◆女だてら
こちらも2021年では数少ない原作小説ありの作品で、実在の人物が主人公。
女性が主人公、旅ものという特徴はあるが典型的な時代劇。
全15回という長めの枠を生かしきれたかはリスナーにより意見が分かれるようだ。
◆走れ歌鉄!(再)
2016年初出作品の再放送。
最近増えているミュージカル風作品の嚆矢ともいえる作品。
再放送に合わせて脚本家さんがTwitterのスペースを開いていたようだが聞きそこなってしまった。
残念。
◆輪廻転Payうた絵巻
2020年に放送された「時めがね金沢うた絵巻」に続く、まきりかさん脚本・音楽のミュージカル作品「うた絵巻シリーズ」の第2弾。
「りんねてんぺい! りんねてんぺい! りんねてんぺいぺいぺぺぺいぺい~」が頭に残ってしまった人が多いようだ。
◆シンクホール
舞台となる街を共通にして、5人の脚本家がオリジナルストーリーを競作する珍しい形態の作品。
中には明るい回もあるのだが、落ち着いた音楽で統一されているので全般的に沈鬱で地味な雰囲気になっている。
◆文学少年と運命の書(再)
中国・明代を舞台にした中華ファンタジー。
銀河万丈さんのナレーションがこの雰囲気によくあうのは「なんでも鑑定団」の影響なのだろうか?
◆谷川俊太郎の詩と旅する ことのはワンダーランド
樋口ミユさんのオリジナル脚本作品だが、谷川俊太郎さんの詩がふんだんに取り入れられた“本歌取り”作品でもある。
そして音楽は息子の谷川賢作さん。
演出の小見山佳典さんのこだわりが詰まった作品。
◆放課後はミステリーとともに『探偵部への挑戦状』(再)
朝倉あきさんを青春アドベンチャー屈指のヒロインにした名シリーズの第2弾。
第1弾と同様に全10回は合計6作品から構成されており、それぞれが聴きやすい長さ。
残念ながら再放送なのだが、第3弾の新作制作はありうるのか?
◆know~知っている(再)
春の大阪局制作SFシリーズ(そんなシリーズあったのか?)の一作。
和風サイバーパンクな内容をラジオドラマで表現するのは成功したのだろうか。
◆ソラのスケッチブック
成河さんと坂本真綾さんという、これまで現実離れした舞台で起用されることが多かったおふたりを主役に据えたリアル寄り、ややファンタジー風味のオムニバス。
作品全体としてはこの順位だが、特別アンケート(別途公開予定)ではこの中の1作品が最多得票を得た。
◆世界から歌が消える前に
「走れ歌鉄!」に続く今井雅子さんの「歌もの」第2弾。
最近の青春アドベンチャーでは少ないアイドル(元乃木坂46・井上小百合さん)のほか、有名コメディアン(藤井隆さん)、有名声優(入野自由さん)、そして夏木マリさんと出演者が豪華。
◆あなたがいる場所(再)
沢木耕太郎さん原作のオムニバス作品。
「ソラのスケッチブック」と異なり爽快さはほとんどなく、聴いていてきつい作品が多いが、一応、各作品の結末に救いは用意されている。
この作品から特別アンケート(別途公開予定)の第2位が選ばれている。
◆イッツ・ア・ビューティフルワールド
リスナーのコメントに「昨今流行りのゾンビもの」という表現があり、そういわれてみれば確かにそうだが、ゾンビが普通に生活していたりして何とも不思議な世界観でもある。
美山加恋さんの可憐さも魅力だが、一番の注目は元宝塚女優・毬谷友子さんのしょぼくれた中年女性役。
◆UFOはもう来ない(再)
こちらも大阪局制作SFもので、主人公は大阪弁。
いわゆるファーストコンタクトものだが、ストーリーが盛り過ぎで、後半少しわちゃわちゃする展開なのが残念。
ただちゃんとしたSFで好感は持てる。
◆水晶宮の死神(再)
2012年の「月蝕島の魔物」でスタートした田中芳樹さん原作のヴィクトリア朝怪奇冒険譚の最終作…のはずなのだが、「黒十字の魔女」という予想外の続編が登場してしまったのは上記のとおり。
個人的には、散漫なストーリー展開といい、適当な怪物といい、物足りない感はあるのだが、それでも大内厚雄さんの優しい声と石川由依さんの可憐な声に再会できるのは嬉しいものではある。
◆双子島の秘密(再)
平家の落人伝説が残る孤島を舞台にした、サスペンスとファンタジーの中間的な作品。
…と書くとおどろおどろしい展開を予想するかも知れないが、中身は意外と爽やかな若者の成長物語。
◆当面の間、変身します
脚本家競作のオムニバス作品。
共通テーマは「変身」だが、時代ものから恋愛もの?までジャンルの幅は広い。
個人的には、一部安易と感じられる回もあるものの全体的にオムニバスの面白さがでている作品だと思う。
◆嘘か真か
なぜか投票はなかったが実はコメント数は結構多い。
1作品にしか投票できないと勘違いした方がいるのかもしれない。
また、男女別のベスト10は以下のとおりです(太字は男女どちらかでのみベスト10の作品)。
今年は上位はあまり男女別に差異はありませんでしたが、あえて言えば「1848」は女性の、「ピーチ・ガイ~ハリウッド・リメイク『桃太郎』~」は男性の支持が多かった様子です。
なお、性別について「それ以外」とした方が1人おりました。
ないがしろにするつもりはないのですが1名だけだと集計処理ができないので、集計からは除外させていただいております。
■男性票
順位 | 票数 | 作品名 |
---|---|---|
1 | 11 | 菩薩花 羽州ぼろ鳶組 |
2 | 7 | 人工心臓 |
ピーチ・ガイ~ハリウッド・リメイク『桃太郎』~ | ||
4 | 6 | 負け犬たちのミッドナイト・バス |
ヨコハマ・ジャスミンホテル | ||
アゴラ69 ~僕らの詩(うた)~ | ||
人喰い大熊と火縄銃の少女(再) | ||
8 | 5 | 1848 |
9 | 4 | 浮遊霊ブラジル |
放課後はミステリーとともに『探偵部への挑戦状』(再) |
■女性票
順位 | 票数 | 作品名 |
---|---|---|
1 | 26 | 菩薩花 羽州ぼろ鳶組 |
2 | 10 | 1848 |
3 | 8 | ヨコハマ・ジャスミンホテル |
4 | 6 | 浮遊霊ブラジル |
人工心臓 | ||
黒十字の魔女 ヴィクトリア朝怪奇冒険譚 | ||
7 | 4 | 負け犬たちのミッドナイト・バス |
女だてら | ||
ピーチ・ガイ~ハリウッド・リメイク『桃太郎』~ | ||
10 | 3 | 輪廻転Payうた絵巻 |
走れ歌鉄!(再) | ||
文学少年と運命の書(再) |
作品編の結果発表は以上です。
「菩薩花 羽州ぼろ鳶組」が良作であったのは間違いありませんが、今までの3作品と比較して飛びぬけて異なる要素もなかったように思います。
これだけ菩薩花に票が集中した2021年は、番組全体としてやや不作の年であったのかも知れません。
【2021年のアンケート結果一覧】
■アンケート企画の結果
各年ごとアンケートの結果一覧はこちらから、全作品アンケートの結果一覧はこちらからご覧ください。
■2021年の放送作品
2021年に青春アドベンチャーで放送された作品の一覧はこちらです。