本作品「月の立つ林で」は2023年本屋大賞第5位の同名のオムニバス小説を原作としたオーディオドラマです、
青山さんは「お探し物は図書室まで」で2021年第2位、「青と赤のエスキース」で2022年第2位、2024年「リカバリー・カバヒコ」で2024年ノミネート中など、本屋大賞の常連の作家さんで、日常生活の断面を切り取って細やかな心情を描くタイプの作家さんです。
基本的に連作短編集の形態をとることが多く、本作品もそのひとつ。
近年の青春アドベンチャーではちょうど1年前に放送された窪美澄さん原作の「夜に星を放つ」がやや近く、現代日本を舞台に日常を描く作品であること、1話が15分×2回で構成されていることなど類似点が多いです。
ただ、「夜に星を放つ」が各話に関連性が全くない独立したストーリーであるのに対して、本「月の立つ林で」は登場人物の間に少しづつ関連性があり、実際、他の作品に出演する登場人物もいる連作形式であるのが大きな違いです。
特に各話の登場人物たちは同じポッドキャスト「ツキない話」を聞いているという設定であるため、これに出演するタケトリ・オキナという若い男性は作品の縦軸的に全話に登場します。
さて、各話の概要は以下のとおりです。
「夜に星を放つ」と異なり全話脚色は丸山智さん。
出演者も時々同じキャラが別の作品に登場するほか、同じ俳優さんが各話で細かい役を演じており、「夜に星を放つ」ほど出演者を使い分けていません。
なお、原作もこの5話ですので、全話がオーディオドラマ化されていることになります。
上で述べた通り全体の縦軸はポッドキャスト「ツキない話」を配信するタケトリ・オキナ(演:田中亨さん)です。
この人物は実は作中のある登場人物であることが最終話で明らかになります。
その他、劇団ホルスやアクセサリーつながりであちこちが密接につながっています。
一番よく登場するのは劇団ホルスの劇団員・朔ヶ崎佑樹(演:)で第1話では主人公・朔ヶ崎怜花の弟、第2話では主人公・本田の元相方、第3話では主人公・高羽の取引先、第4話では主人公那智の友人ジン知り合い、といたるところに登場します。
本作品の全体の主演は実は田中亨さんと久留飛雄己さんなのかと思うほどの活躍ぶりです。
こういつ緩やかな繋がりがあったり、最終話に収束していく作品としては、過去にも「終末のフール」や「ウォーターマン」などの良作があるのですが、ネタばれになるのであまり書けないのが残念なところですね(登場人物のつながりはオーディオドラマなので声でほぼわかっちゃうのですが)。
とはいえ各話の主演者さんが上記のとおりです。
佐藤誓さんのところにも書きましたが、今まで多くの作品に出演してきたものの、主演はなかった方々が主演されているイメージです。
最後に作品全体の感想なのですが。
…あまりに日常テーマすぎる。
昨年の「夜に星を放つ」はそれでもドキドキするような展開もあり楽しく聞けたのですが、本作品は本当に繊細過ぎて個人的にはこういうのは1年に1本でよいかな、と思いました。
また超個人的な感想ですが第4話といい第5話といい、子供を捨てた親の行動があまりに簡単に肯定されていることに違和感を覚えました。本当に個人的な感想ですが。
あと一番思ったのは…ポッドキャストをテーマにするなら、青春アドベンチャーも何らかの方針で配信してよ!ということです。
現状、聞き逃し配信だけですから。