月の立つ林で 原作:青山美智子(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 月の立つ林で
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B
  • 分類 : 日常
  • 初出 : 2024年7月22日~8月2日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 青山美智子
  • 脚色 : 丸山智
  • 音楽 : 関向弥生
  • 演出 : 藤井康
  • 主演 : 音月桂、大山真志、佐藤誓、音くり寿、仙名彩世

本作品「月の立つ林で」は2023年本屋大賞第5位の同名のオムニバス小説を原作としたオーディオドラマです、

青山美智子さんとは

青山さんは「お探し物は図書室まで」で2021年第2位、「青と赤のエスキース」で2022年第2位、2024年「リカバリー・カバヒコ」で2024年ノミネート中など、本屋大賞の常連の作家さんで、日常生活の断面を切り取って細やかな心情を描くタイプの作家さんです。
基本的に連作短編集の形態をとることが多く、本作品もそのひとつ。
近年の青春アドベンチャーではちょうど1年前に放送された窪美澄さん原作の「夜に星を放つ」がやや近く、現代日本を舞台に日常を描く作品であること、1話が15分×2回で構成されていることなど類似点が多いです。

ゆるやかな繋がり

ただ、「夜に星を放つ」が各話に関連性が全くない独立したストーリーであるのに対して、本「月の立つ林で」は登場人物の間に少しづつ関連性があり、実際、他の作品に出演する登場人物もいる連作形式であるのが大きな違いです。
特に各話の登場人物たちは同じポッドキャスト「ツキない話」を聞いているという設定であるため、これに出演するタケトリ・オキナという若い男性は作品の縦軸的に全話に登場します。

各話の概要

さて、各話の概要は以下のとおりです。
「夜に星を放つ」と異なり全話脚色は丸山智さん。
出演者も時々同じキャラが別の作品に登場するほか、同じ俳優さんが各話で細かい役を演じており、「夜に星を放つ」ほど出演者を使い分けていません。
なお、原作もこの5話ですので、全話がオーディオドラマ化されていることになります。

第1話「誰かの朔」

  • 主演 :音月桂
  • 月ネタ:月は少しづつ遠ざかっている
  • 概要 :人のために役に立ちたいと思ってずっとやってきたけど、「人」っていったい誰のことなんだろう。40歳を過ぎて看護師を退職した。私のやりたいことはなんだったのだろう。
  • 一言 :びっくりするほどありがちな話で、主人公も普通の中年女性。この役にほぼ同年代とはいえ元宝塚雪組トップスターを起用するところが謎。

第2話「レゴリス」

  • 主演 :大山真志
  • 月ネタ:月は砂(レゴリス)により盆のように輝く
  • 概要 :職業、芸人。いや宅配便のバイトか。もう2年はエントリーライブに出ていないし、最近ではネタすら考えていない。でもこんな俺に声がかかった。人気番組にひな壇。ついに俺が輝く日が来たのだ。
  • 一言 :「よしっ」と決心して言うことがアレか?それにしても作家ってやたらと物に心情を例えたがるが、今回は苦しい気がする。

第3話「お天道様」

  • 主演 :佐藤誓
  • 月ネタ:太陽と月は見た目の大きさが同じ
  • 概要 :就職したばかりの娘が彼氏を連れてきた。男はどうにもはっきりしない奴だ。しかもなんと妊娠しているという。福岡で一緒に暮らすという。順番が違う。何もかもだ。
  • 一言 :多くの青春アドベンチャーで名バイプレイヤーとして活躍されている佐藤誓さんがついに主演。それにしてもやっぱり色々と無責任だよなあとは思った。

第4話「ウミガメ」

  • 主演 :音くり寿
  • 月ネタ:ウミガメは月の光で海に向かう
  • 概要 :カンカンにお金。話しててても目も合わせない。私にはお金以外の手はかけないという意思表示だ。私には「夜風」がいればよい。夜風と一緒に今日も宅配サービスでがっつり稼いでいる。
  • 一言 :「ラングドックの薔薇」や「マクロプロスの処方箋」にも出演している音くり寿さんの普通の女性役はチャーミングなのが一番の収穫。不思議と高校生の声には聞こえないが。

第5話「針金の先」

  • 主演 :仙名彩世
  • 月ネタ:新月=月が立つ=ついたち
  • 概要 :針金でアクセサリーを作るワイヤーアクセサリー作家の睦子。作品の評価は上々、夫との距離感も良好、ついには出版の依頼も来た。しかし先の保証のない生活は常に不安感から逃れられない。
  • 一言 :各話とのつながりが強く、一応独立した話だが、「あの人」の正体がわかることから、全体のまとめ的な色彩もある。

ツキない話

上で述べた通り全体の縦軸はポッドキャスト「ツキない話」を配信するタケトリ・オキナ(演:田中亨さん)です。
この人物は実は作中のある登場人物であることが最終話で明らかになります。

つながり作品つながり

その他、劇団ホルスやアクセサリーつながりであちこちが密接につながっています。
一番よく登場するのは劇団ホルスの劇団員・朔ヶ崎佑樹(演:)で第1話では主人公・朔ヶ崎怜花の弟、第2話では主人公・本田の元相方、第3話では主人公・高羽の取引先、第4話では主人公那智の友人ジン知り合い、といたるところに登場します。
本作品の全体の主演は実は田中亨さんと久留飛雄己さんなのかと思うほどの活躍ぶりです。
こういつ緩やかな繋がりがあったり、最終話に収束していく作品としては、過去にも「終末のフール」や「ウォーターマン」などの良作があるのですが、ネタばれになるのであまり書けないのが残念なところですね(登場人物のつながりはオーディオドラマなので声でほぼわかっちゃうのですが)。

主演の方々

とはいえ各話の主演者さんが上記のとおりです。
佐藤誓さんのところにも書きましたが、今まで多くの作品に出演してきたものの、主演はなかった方々が主演されているイメージです。

青春アドベンチャーに求めるもの

最後に作品全体の感想なのですが。
…あまりに日常テーマすぎる。
昨年の「夜に星を放つ」はそれでもドキドキするような展開もあり楽しく聞けたのですが、本作品は本当に繊細過ぎて個人的にはこういうのは1年に1本でよいかな、と思いました。
また超個人的な感想ですが第4話といい第5話といい、子供を捨てた親の行動があまりに簡単に肯定されていることに違和感を覚えました。本当に個人的な感想ですが。
あと一番思ったのは…ポッドキャストをテーマにするなら、青春アドベンチャーも何らかの方針で配信してよ!ということです。
現状、聞き逃し配信だけですから。

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