ラングドックの薔薇 作:並木陽(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : ラングドックの薔薇
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B+
  • 分類 : 歴史時代(海外)
  • 初出 : 2023年6月19日~6月30日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : 並木陽
  • 音楽 : 日高哲英
  • 演出 : 藤井靖
  • 主演 : 海宝直人

1237年、フランス王との戦いが終焉し一時の平和を享受している南フランス・ラングドック。
しかし平穏は表面的なものに過ぎない。
フランス王に屈服した南フランス諸侯も、異端として迫害される「良き人々」(=カタリ派)の民衆も未だ苦しみの最中にあった。
主を持たない若き自由騎士ペイレも領地を奪われた没落貴族の子弟である。
一見、無責任な放蕩生活を続けるペイレだが、彼には自らの心の内を苛む、ある思いがあった。




本作品「ラングドックの薔薇」は青春アドベンチャーで放送された並木陽さん脚本のオリジナル歴史ドラマの第6弾になります。

時代は中世、場所は南フランス

舞台は13世紀前半の南フランス。
以前、青春アドベンチャーでフランスを舞台にした作品を整理しましたが、あれは近世フランス(1589年に成立したブルボン朝以降)を対象にしていましたので、本作品は同じフランスでもその350年以上前の時代になります。
舞台はいわゆるアルビジョア十字軍(1209年~1229年)によりもたらされた戦乱が終了した直後の南フランス、ラングドック(Languedoc)。
この地域は、日本人から見るとフランスの一部に過ぎませんが当事者にとっては、いわゆるオクシタニアと呼ばれる地方です。

オック語

オクシタニア(Occitània)はもともとオック語(occitan)が話されていた地域を意味ます。
オック語はフランス語(旧オイル語)の方言とされることもありますが別言語との考えが一般的で、スペイン語とカタルーニャ語に近い関係です(むしろオック語とカタルーニャ語が近いらしい)。
例えば本作品で登場するトロア伯(演:今井朋彦さん)の「トロア」はオック語で、フランス語だと「トゥールーズ」。
全然違いますよね。

カタリ派とは

そして言語だけではなく文化的にもこの地方独特のキリスト教の一派、カタリ派(アルビ派)の勢力が強く、カソリックのフランス王権との長い軋轢を経て、アルビジョア十字軍により屈服させられることになります。
紺碧のアルカディア」で語られた第4次十字軍(1202年~1204年)もそうでしたが、異教より異端に憎悪を募らせるしまうのは人の世の常。
カタリ派の教義もカソリックにより徹底的に覆滅させられたため今日その詳細はわからないらしいのですが、この世をサタンにより創造された汚れた物質世界と捉え、禁欲でのみ、そこから離脱できると考えるのだそうです。
そのため、その指導者である「完徳者」は厳しい禁欲生活を送る。
北フランスより温暖な南フランスでなぜこのような教義が広まったのか興味深いですね。

背景を書いたのは…

さて、大分脱線してしまいましたが、実はこのブログが始まって割とすぐの頃に「青春アドベンチャー化して欲しい作品」として佐藤賢一さんの「オクシタニア」を挙げている私としてはやはりどうしてもこういった背景知識を書きたくなてしまうのです。ご容赦ください。

「つまらぬ矜持」なのか

また内容面でもどうしても「オクシタニア」と比べてしまいます。
まずモンセギュールを描かないのはどうなのでしょう。
いやまあ描くと相当悲惨な内容になってしまうのは確かなのですがテーマ的に悲惨さも避けて通れないような…
またこれとも関連するのですが、テーマに対する並木さんご自身の回答は多分、終盤のジョアナやエルメンガルドに仮託されており、この結論自体に異論はないです。
ただ、ふたりとも所詮、戦火や弾圧とは無縁の世界で生きている(確かにフランス宮廷では肩身が狭いでしょうが)のできれいごと感がぬぐえない。
ジョアナの考え方は表面的で甘すぎるし、エルメンガルドの考え方(戦争をなくすために弾圧を許容する)は、世の中の絶対多数の幸福のために少数者を切り捨てる論理にすぎないと感じました。
信仰が絡んでいるのに「つまらぬ矜持」と切り捨てるあたり当時の人たちの感覚と乖離しているようにも思います。

より深い葛藤の描写が欲しかった

エルメンガルドの選択は格好をつけていても所詮、妥協にすぎないわけで、それが正しい結論であったとしても、こういった深刻な結論にたどり着くには作劇上より深い葛藤が描かれていて欲しいというのが私の個人的な思いです。
例えば「昼も夜も彷徨え」では後半5回を費やして「会話」でそれをしたのですが、本作品ではモンセギュールがそれだったのではないでしょうか。
まあ無理矢理入れても「紺碧のアルカディア」と大差のない展開になってしまうのも確かではありますが…
以上はあくまでテーマに対する私の個人的な考え方も踏まえた感想です。
作品の質とは関係ない話ですのであくまで個人的な思いとしてお読みください。

海宝直人さん6作品目の主演作

さて、本作品で主役のペイレを演じるのは海宝直人さん。
子役時代の「DIVE!!」を含めなんと青春アドベンチャーで5作品目の主演になります(タランの白鳥暁のハルモニアベルリン1989)。
準主役だった「1848」を含め近年、青春アドベンチャーで最も活躍されている俳優さんのひとりです。
個人的にはやはり「暁のハルモニア」終盤の演技が印象的です。
ちなみに上記の「オクシタニア」ではオイル後(フランス語)とオック語の違いを、オクシタニアのキャラクターを関西弁で話させることによって表現していたのですが本作では海宝さん始め各キャラクターとも普通に標準語で話します。
この日本語の方言を使うというやり方は「仮想の騎士」でも使われていたのですが(イタリアなまりのフランス語を関西弁で表現)、ペイレは割とお調子者のキャラなのでこれはこれでアリだった気もします(海宝さんは千葉出身なので相当怪しい感じになると思いますが)。

その他の出演者

その他、ペイレの親友でやはり同じ騎士(兼遍歴の詩人)のギレム役の廣瀬友祐さんや、ラングドックで何とか勢力を維持している女領主マルケジア(いわゆるラングドックの薔薇)役の坂本真綾さん、トロア伯の娘でジャンヌ(ジャンヌ・ド・トゥールーズ)役の音くり寿さん、ラングドック出身ながらフランス王圏に組するエルメンガルド役の彩乃かなみさん(元宝塚歌劇団月組トップ娘役)などが主要なキャストです。


【並木陽原作・脚本・脚色作品一覧】
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