夜に星を放つ 原作:窪美澄(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : 夜に星を放つ
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A
  • 分類 : 日常
  • 初出 : 2023年7月31日~8月11日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 窪美澄
  • 脚色 : (下記のとおり)
  • 音楽 : 滝澤みのり
  • 演出 : 木村明広
  • 主演 : 石川瑠華、藤堂日向、田畑志真、大東駿介、豊田温大

2022年上期の第167回直木賞を受賞した窪美澄さんの小説「夜に星を放つ」。
そのオーディオドラマ化作品が本作品です。
原作小説は相互にストーリー上の関連がない5篇の短編から構成されていますが、本作品はそのすべてを15分×2回ずつでドラマ化しています。
いずれも人との出会いや別れといった人間関係の移ろいを繊細に描いた作品群で、いささか泥臭さを脱臭しすぎている感は受けるものの、人生の一断面を少しの痛みを伴い美しく描いた物語群になっています。


直木賞受賞作が原作

さて、NHK-FM青春アドベンチャーという番組はエンタメ作品を放送する帯ドラマ枠ですので、直木賞作家の作品を取り上げることは頻繁にあります。
ただ直木賞受賞作自体となると、番組名が青春アドベンチャーになった1992年以降では葉室麟さんの「蜩ノ記」(2012年)に次いで2作品目。
本作品のような短編集形態の作品では前身番組まで含めて初めてです(前身番組を含めた直木賞受賞作原作作品はこちらの記事にまとめています)。

研ぎ澄ました言葉

ただ本作品は冒頭に書いたように直木賞らしい外連味のある作品ではなく、言葉を選んで紡がれた純文学に近い落ち着いた物語です。
これを心地よいと感じるか、物足りないと感じるかは人それぞれではないでしょうか。
ちなみに直木賞の選考委員のうち特に推していたのが宮部みゆきさんと林真理子さん。
高村薫さんと桐野夏生さんが△(態度不明)でしたが、反対意見が1票もなく、概ね順当な選考だったようです。

各話の概要

さて、各話の概要は以下のとおりです。
5作品全ての脚本家が異なり、出演者もひとりとして被っていません。
オムニバス作品では異例なほどの力の入れようです。

第1話「真夜中のアボカド」

  • 脚色:足立聡
  • 出演:石川瑠華、長友郁真、尾倉ケントほか
  •  :ふたご座のカストルとポルックス
  • 概要:アボガドの種を育て始めた。私は唯一の同居人であるアボガドに声をかける。「アボガド君、私と麻生さんはもうだめかもしれない」「アボガド君、麻生さんとはおおむね順調です」。麻生さんとは半年前に婚活アプリで知り合った。会話は全く盛り上がらないけどあたしはこの人が好きだ。
  • 一言:なんというか、主人公は妹との約束を守ったんだな。彼との仲が嘘だった訳ではないと思うけど。

第2話「銀紙色のアンタレス」

  • 脚色:石原理恵子
  • 出演:藤堂日向、平田裕香、大川春菜ほか
  •  :わし座のアルタイル・さそり座のアンタレス
  • 概要:16回目の誕生日を迎えたばかりの僕は今年も祖母のいる田舎にやってきた。海で1日遊んで夕方になっても帰りがたい気持ちのまま波打ち際でサンダルに寄せる波を見つめていると、近くで同じようにサンダルを濡らしている女の人がいた。その悲しそうな顔が印象に残って…
  • 一言:幼馴染の少女を演じる大川春菜さんが可愛い。それにしても16歳くらいの少年のどろどろしたところが脱臭され過ぎている気がする。

第3話「真珠星スピカ」

  • 脚色:中澤香織
  • 出演:田畑志真、竹井亮介、境葵乃ほか
  •  :おとめ座のスピカ
  • 概要:イジメを受け保健室にしか登校できない娘を母親の死が襲う。その後、2週間。母の死を上手く受け入れることが出来ない娘が勇気を出して教室に行ってみると、クラスではコックリさんという奇妙な占いが流行していた。
  • 一言:テーマが上記のとおりであるうえ、「あの人のカナリア」の中澤香織さん脚色で、「面影」の田端志真さん主演。どうなることかと思ったが結末は意外と…

第4話「湿りの海」

  • 脚色:さわだみきお
  • 出演:大東駿介、樋井明日香ほか
  •  :月(湿りの海)、こと座
  • 概要:僕にも家族がいた1年前までは。妻は娘を連れて不倫相手のいるアリゾナに行った。そして今、隣の部屋に母親と幼い娘の家族が越してくる。その親子と僕。まるで家族みたいじゃないか。
  • 一言:うーん救いがなくて気の毒。でもたまたま隣に越してきた母娘と親子ごっこをしてしまう男もどうなんだろう。なお、2017年「UFOがもう来ない」で独身UFOマニアを演じた樋井明日香さん(32歳)がシングルマザー役。

第5話「星の随(まにま)に」

  • 脚色:黒瀬ゆか
  • 出演:豊田温大、福井裕子ほか
  •  :星座全般
  • 概要:2年前に父さんと母さんが離婚した。今は父さんと新しいお母さんと生まれたばかりの弟の3人で暮らしている。最近、学校から帰るとドアガードがかかったままのことが増えた。でもお父さんには言わない。本当の気持ちは大人に話さないと決めているから。
  • 一言:3カ月に1度ってどうしてこうなった?最後まで大人に頼れず家族のきずなを守るために孤軍奮闘する男の子がせつない。なお、2019年「高天原探題」で薄幸な超能力少女を演じた村上穂乃佳さん(28歳)が後妻役。

滝澤みのりさんの音楽

本作品の音楽を担当したのは作曲家の滝澤みのりさん。
FMシアターでは何作品か担当した実績があるものの、青春アドベンチャーでは初めてだと思います。
茨木智博さんが演奏するテーマ曲の優しいオカリナの調べがとても作品にあっていて印象的です。


■中澤香織さん関連作■
日常的な舞台でもチクチクするセリフが魅力的。
中澤香織さんの脚本、脚色作品の一覧はこちらです。


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