終末のフール 原作:伊坂幸太郎(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : 終末のフール
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A+
  • 分類 : SF(日本)
  • 初出 : 2010年2月1日~2月12日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 伊坂幸太郎
  • 脚色 : 佐藤久美子
  • 演出 : 川野秀昭
  • 主演 : 河相我聞ほか

「8年後に地球に小惑星が激突し人類は滅亡する」
アメリカ大統領による衝撃の発表から5年。
発表直後の大混乱を経て、人々は徐々に落ち着きをとり戻しつつあった。
人類滅亡まであと3年。
この物語は、仙台市近郊に住む8組の人々を通して、避けられない現実を前に彼らが選んだ最後の時間の迎え方を描く連作短編である。



伊坂幸太郎さん原作の青春アドベンチャーは、他に「オーデュポンの祈り」及び「死神の精度」があります。

3作品採用は珍しい

3作も取り上げられた原作者は、近年では他に宮部みゆきさん(「今夜は眠れない」・「夢にも思わない」・「蒲生邸事件」。ただし、前2者を同一シリーズとカウントすると2作品になります。)くらいかと思います。
この辺の数字については一度きちんと数えてみたいと思いますが、3度も取り上げられるのはやはりレアなことであり、それだけ安定して面白いの作家さんだということでしょう。(→こちらの記事で整理しました)

各話の間に緩やかな繋がり

本作は1話が1~2回ずつで放送される短編8話で構成されていますが、全作品が仙台市の「ヒルズタウン」というマンション近辺の地域が舞台となっており、ある作品の主役が他の作品にちょい役で登場するなど、全体として緩やかなつながりのある連作短編集になっています。

SFといえばSF

本作は小惑星の衝突というSF的な設定を作品の背景として使用しています。
実際の作中の舞台は、小惑星衝突の発表直後と実際の衝突までの間の中間時点で、人々の生活はそれなりに落ち着いており、作品中にはSF要素はほとんど見当たらないのですが、舞台設定自体がSF的であるため、SF(日本)に分類しました(ジャンルに関してはこちら)。

淡々としてスタイリッシュ

各話の内容は、「心の底では娘との和解を望んでいる父親」、「妹を自殺に追い込んだニュースキャスターへ復讐をもくろんでいる兄」、「妻が妊娠していることを知った夫」、「世界の混乱でタイトル戦が棚上げになったままのキックボクサー」などを主人公として、彼らの残された時間の生き方についての決断を通して、人生で大切なこと、生きることの意味などを静かに語りかける内容です。
どの作品も良質の人間ドラマですが、全般的にアクはなく淡々とした内容です。

有限の人生をどう生きるか

最終話に今までの話をまとめた壮大な結末がある….訳でもありませんが、まあそれを求める作品でもないでしょう。
人生の時間が有限になってしまった際にどう生きたらよいのか、というテーマは「蜩ノ記」とも通じますが、本作では誰かの人生ではなく人類全体が全滅する話ですし、当時のエリート階層である武士が主人公の「蜩ノ記」と違い本作の主人公は普通の人々ですので、作品の雰囲気はかなり違います。

河井我聞さん好演

基本的に各話ごとに主人公が違うのですが、10回のうち3回で主役を演じているのが俳優の河相我聞さん。
有頂天家族」でも主演しています。
あちらは作品の内容が独特で少し空回り気味ですが、本作では堅実・わかり安い演技で好印象です。

<伊坂幸太郎原作の他の作品>

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