唄娘 作:森脇京子(FMシアター)
「待ってぇ~、乗ります!乗りますからぁ~!」岐阜県は白山の麓にある小さな集落・君丈村(きみたけ・むら)のバス停。いつもぎりぎりにバス停に現れる民宿君竹屋の看板娘・君丈みさとを待って、バスが発車を遅らせるのは、もはやこの村の風物詩。乗客の老人たちも心得たものだ。君丈村は、みさとが通う高校までバスで1時間もかかる山間の集落。みさとはこの小さな集落で、周囲の大人たちの暖かい目に囲まれて育ってきた。しかし、最近悩んでいる。実は高校を卒業したらこの村を出て行きたい。自由な社会で精一杯生きてみたい。でも、母は、祖父は、そして村のみんなは、みさとが民宿を継ぎ、神事で村の民謡を唄う「唄娘」をも受け継いでくれることを期待している。もう高校3年生だ。でも、みさとはまだ迷っている。