負け犬たちのミッドナイト・バス 原案:サレンダー橋本、脚本:蔭岡翔(青春アドベンチャー)
2年前のあの日、結局、一花を引き止めることはできなかった。
そりゃそうだ、シンガーソングライター志望と言ったって所詮はプー太郎。それどころか母親が死んでからは単なる引きこもり。
結婚して大阪に行く幼なじみを引き止めるようなめんどうくさいことができるはずない。
でも、今、電話口で一花は泣いている。「私、もう無理かも」
やっぱ、めんどくせえ。
でも今度こそ何かしないといけないねえんじゃないか。
居ても立ってもいられなくなった俺は大阪行きの夜行バスに飛び乗った。
しかしこの深夜バス、何だか妙な雰囲気だ。
乗客がやけに少ないし、運転手の顔は…ねずみ?!
その運転手、もとい「運転チュ」が話し始めた。
「たった一度の人生をしくじったお客様。もう取り返しのつかないお客様。恥に恥を重ねて、重ねた恥にまた恥を重ねて月まで届きそうなお客様。ルーザーラット高速バス、ギフトオブクリスマス、あっと驚くミッドナイトドリーミング号、出発します!」