幻想(日本/シリアス)

格付:AA

面影 作:兵藤るり(FMシアター)

私の娘は7歳で亡くなった。ほんの一瞬のことだった。あれから10年。勤務する特別収容生物研究所に送られてきた新しい怪物の姿を見た瞬間、息が止まった。怪物に娘の面影がある。生きて17歳になっていれば、そうなったであろう成長した娘の面影が。
格付:A

木になった亜沙 原作:今村夏子(FMシアター)

亜沙は食べてもらえない子。初めて焼いたクッキーは男の子に受け取ってもらえず、ボケ始めた祖母は亜沙を食べ物に毒を入れていると罵った。学校の金魚すら亜沙が飼育係だと水底から動かず、それを見た級友たちは亜沙がよそった給食に手を付けない。母親すら、死に際にお寿司を食べさせようとする亜沙を拒否した。亜沙はただ食べて欲しいだけなのに。受け入れて欲しいだけなのに。
格付:B

あなたは最期に 作:丸山智(FMシアター)

そろそろ就活を始めなければいけない時期だけどやる気が出ない。なんだって自己分析なんてしないといけないのだろう。もっと自分と向き合うべき、なんて余計なお世話だ。そんな無気力女子大生チサだが、ある日、公園で出会った全身黒づくめの男から衝撃的な事実を伝えられる。彼は死神で、チサはもうすぐ死ぬというのだ。しかも最後の晩餐として食べたいものを食べないと魔界に落ちて永劫に苦しむというのだが…
格付:B

優しい死神の飼い方 原作:知念実希人(青春アドベンチャー)

この世に未練を残して死んだ人間は地縛霊になる。地縛霊になると、われわれ死神といえどもあの世に魂を運ぶことはできない。だからわれわれが業務を円滑に遂行するためには、未練を持った人間が生きているうちに接触してそれを解消してやる必要がある。ここは丘の上医院という緩和医療施設。入院しているのは終末期の患者、つまり余命幾ばくも無い人間ばかり。この世に未練を残している人間は甘い腐臭がする。あの男からも腐臭がする。それは未練があるだろう。人生にはいくら悔い改めても取り返しのつかないことは確かにある。しかし死神たるわれわれは未練を取り除かなければならない。だから私は彼に問いかける。「とにかく話してみろ、お前の未練を。」
格付:B

世界から猫が消えたなら 原作:川村元気(FMシアター)

突然世界がひっくり返り目の前が真っ暗になった。脳腫瘍。いつ死んでもおかしくないらしい。絶望の中、目を覚ますと目の前に“僕”がいた。正確には顔が僕そっくりで派手なアロハを着たハイテンション男。彼は言う「私、あなたを助けに来たんです~この世界からひとつだけ何かを消す、その代わりあなたは一日の命を得る。簡単でしょ?うまくやれば永遠の命を手に入れられますよ~」そう彼は“悪魔”なのだ。
格付:A

幻タクシー 作:山本雅嗣(FMシアター)

タクシー運転手の諸星は深夜、白衣のうえにウインドブレーカーを羽織った女性を乗せる。ただ、この女性客はどことなく変だった。乗ってから行き先を探し始め、しかも結局、陸上競技場ならどこでもいいという。一体何者なのだろう…?しかし、客に言われるまま、長居陸上競技場、みさき動物公園、そしてある住宅地を巡るうちに…それはその女性と息子の物語であり、諸星と父との想い出にもつながっていくのだった。
格付:A

イッツ・ア・ビューティフルワールド 作:今城文恵(青春アドベンチャー)

人は死ぬと土に還る。しかし、誰かを強く恨んで死んだ人間は不老不死の怪物となり復活する。そして恨みを晴らすために執拗に恨んだ相手を付け狙う。その怪物を「仇者」(アダモノ)という。…が、そんなことはもちろん知っている。仇者は有史以来、人類の歴史とともにあり多くの悲劇を生み出してきたからだ。しかし一女子大生に過ぎない私は本当は何もわかっていなかった。仇者とはどういう存在であるのか、そして仇者に付け狙われるということが、この社会においてどのような意味を持つのかということを。
格付:B

谷川俊太郎の詩と旅する ことのはワンダーランド 作:樋口ミユ(青春アドベンチャー)

世界は言葉でできている。少年ハル(葉琉)は昔から言葉を「見る」ことができた。見るだけでなく、つまんで並べることもできる。言葉はハルの遊び道具。あの頃、全ての言葉は輝いていた。しかし中学校に上がったばかりの今、言葉はハルを追いつめるものでしかない。毒々しい色の言葉の数々。吐きそう、吐きそう、吐きそう…。夜も眠ることができない。しかし、ある夜、丘の上に立つ洋館の明かりを見たハルは安らかな気持ちを得る。あの明かりは何だろう?友人たちの肝試しに付き合い洋館を訪れるハルだが、そこで古いトランクを開けると言葉の洪水に飲み込まれることになるのだった。
格付:C

隠しの国 作:東憲司(青春アドベンチャー)

引っ込み思案で目立たない中学生の少年リクは幼いころから一つの夢しか見たことがなかった。その夢の中でリクは「暴君リク」になり、3人の家臣とともに残忍非道な行いを繰り返す。あまりの残虐さのため寝るたびに苦しめられてきたリクだが、いつしか思いのままにふるまう「暴君リク」の姿にある種の爽快感をも感じていた。そんなある日の夕暮れ時、リクは公園でひとりの少女を見かける。大きめの麦わら、白いワンピース、そして、夢で出会った少女と瓜二つの顔。気になるリクだが彼女に話しかけられないまま数カ月が経過する。しかし、突如としてふたりの関係に変化が訪れる。彼女がリクの命を狙って襲ってきたのだ。
格付:B

折紙宇宙船の伝説 原作:矢野徹(ふたりの部屋)

太平洋戦争のさなか陸軍から派遣されて訪れた山奥の山村。そこは日本の他のどこでも聞いたことがない不思議な昔話があふれる村だった。不思議なのは昔話だけではない。少女の心のまま体の発達も止めた女性。いつまでも飛び続ける紙飛行機。数年に一度、村に現れる死者の国。からくりのコウノトリで空に飛び立つカラクリ師…遠い昔、あの山の奥に、どこか遠い星の宇宙船か墜落したのではないか。そんなことを想像させられる。そこは、この世の現実の姿とかけ離れているかのような山里だった。
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