
夏・風・ライダー 原作:高千穂遥(FMアドベンチャー)
奥脇と一緒にオクワキエンジニアリングを立ち上げたのは、バイクが、とくにエンジンがただただ大好きだったからだ。オクワキエンジニアリングを去ったのは、奥脇がパーツの製造販売に血道をあげ、いつしかマフラーしか弄れない毎日になってしまったからだ。あれから9年。今でも辞めたのが正解だったのか考えることがある。オクワキエンジニアリングは早々にレースに参加するようになり、今では日本を代表するプライベーターと呼ばれるまでになった。それに引き替え、俺は未だにしがないバイク屋の親父だ。しかし、それも終わりだ。俺も今年からレースに参戦する。チーム“ノブ”といえば聞こえはいいが、まあ言ってみれば町内会チームだ。それでもレースはレース。時は来たのだ。夏の「鈴鹿4時間耐久ロードレース」まで全力で突っ走るまでだ。