菩薩花 羽州ぼろ鳶組 原作:今村翔吾(青春アドベンチャー)
安永2年江戸火消番附、西の前頭三枚目・柊与市(ひいらぎ・よいち)。名関脇と言われた祖父・柊古仙(ひいらぎ・こせん)と比較されると分が悪いが、前頭三枚目は悪い番付じゃあねえ。若干14歳で仁正寺藩火消組の頭取になってから10年、必死に人を救ってきた証。俺にとっては実力を認めている頼もしい後輩だ。それがなぜ急に「大物喰い」なんか始めやがった…火消番附、西の関脇・進藤内記(しんどう・ないき)。孤児たちを世話し、縁付けあるいは火消として育てる。そして、火事場で人を救うために火消が命を危険にさらすことを厭わない。そんな奴を世間は「菩薩」と呼び、絶大な人気を得ている。俺にとっては同期ともいうべき存在だが、部下を使いつぶすやり方は気に入らねえし、その部下たちの奴への心酔ぶりは異常だ。うさん臭え。何かある。火消番附など所詮はお遊び。大切なのは一人も死なせねえこと、自分たちも含めて、だ。それがわからねえのか。それとも番附には人を狂わす魔力があるとでもいうのか。