- 作品 : 菩薩花 羽州ぼろ鳶組
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : AAA-
- 分類 : 歴史時代(日本)
- 初出 : 2021年11月15日~11月26日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 今村翔吾
- 脚色 : 丸尾聡
- 演出 : 真銅健嗣
- 主演 : 筧利夫
安永2年江戸火消番附、西の前頭三枚目・柊与市(ひいらぎ・よいち)。
名関脇と言われた祖父・柊古仙(ひいらぎ・こせん)と比較されると分が悪いが、前頭三枚目は悪い番付じゃあねえ。
若干14歳で仁正寺藩火消組の頭取になってから10年、必死に人を救ってきた証。
俺にとっては実力を認めている頼もしい後輩だ。
それがなぜ急に「大物喰い」なんか始めやがった…
火消番附、西の関脇・進藤内記(しんどう・ないき)。
孤児たちを世話し、縁付けあるいは火消として育てる。
そして、火事場で人を救うために火消が命を危険にさらすことを厭わない。
そんな奴を世間は「菩薩」と呼び、絶大な人気を得ている。
俺にとっては同期ともいうべき存在だが、部下を使いつぶすやり方は気に入らねえし、その部下たちの奴への心酔ぶりは異常だ。うさん臭え。何かある。
火消番附など所詮はお遊び。
大切なのは一人も死なせねえこと、自分たちも含めて、だ。
それがわからねえのか。
それとも番附には人を狂わす魔力があるとでもいうのか。
近年の青春アドベンチャー切っての人気シリーズにして長編シリーズ「羽州ぼろ鳶組」が2021年にまた帰ってきました。
今回はその第4弾(原作では第5作)となる「菩薩花 羽州ぼろ鳶組」。
冒頭の粗筋は主人公・松永源吾の独白風に作ってみたのですが、つい力が入っていつもより長めになってしまいました。
ネタバレOKかな?まあこのくらいなら大丈夫か。
まさか実現するとは
さて、このシリーズ、私も大好きなので続編放送を切望していたのですが、内心では実現性は薄いかなとも思っておりました。
というのも、前作の第3弾「鬼煙管」が原作第3弾「九紋龍」を飛ばしてのラジオドラマ化で、しかもかなりの盛り上がりで終了しています。
演出の真銅健嗣さんはとりあえず「鬼煙管」までのラジオドラマ化を目標にしており、気持ち的にやり切ってしまったのではないかと想像していたからです。
というのも真銅さんはかつてとても出来の良い「闇の守り人」までで守り人シリーズをとめた過去がありますので。
期待しちゃいますよ
しかもこの「菩薩花」は今まで比較的狭い範囲、ぼろ鳶組内部やライバルの加賀鳶等の範囲で収まってきた話が外に拡散していく内容。
冒頭の粗筋で紹介した、仁正寺藩「凪海(なぎうみ)」の与市、八重洲河岸定火消「菩薩」の進藤内記という今回の準主役クラスに加え、加賀藩一番組小頭にして大頭・大音勘九郎の股肱「隻鷹(せきよう)」こと詠兵馬(ながめ・ひょうま)や、よ組の「蝗(いなご)」の秋仁(しゅうじん)、加賀藩七番組の小頭「風傑(ふうけつ)」の仙助等の他の火消組に属する実力派火消が次々と新登場。
しかも、世代的には主人公松永源吾が属する「黄金(こがね)の世代」の一員ながら、彼らとは一線を画す謎多き男・進藤内記が登場するとなると正直、「菩薩花」で終わらせるのはもったいなさすぎる。
これは期待してしまいます。
少なくとも前半のフィナーレとなる原作第10巻「襲大鳳」(第11作目)までのシリーズ継続を。
いいですか、もう期待しちゃいましたからね、スタッフのみなさま。
多士済々
さて、ストーリーについては粗筋で結構書いちゃったのでこれ以上はやめておきますが、ぼろ鳶組メンバーが限定的にしか登場しなかった前作「鬼煙管」から一変して、本作では鳥越新之助(彼がいるだけでぼろ鳶組も作品世界全体もぐっと明るくなる!)をはじめとする新庄藩の面々が大活躍。
さらに上記の新登場の他の火消組の面々や「鬼煙管」から登場した長谷川銕三郎改め2代目長谷川○○(←ネタバレ防止、演:金児憲史さん)もキャラが立っていて一層、作品世界が豊かになっています。
今後が気になる!
そして、本作品はいよいよ江戸の闇の部分に踏み込んでいく第一歩。
実は、本シリーズ全体の背景として、外伝的作品「黄金雛 羽州ぼろ鳶組零(ゼロ)」で描かれることになる20年前の尾張藩火消組壊滅事件の真相が横たわっています。
つまりこの「菩薩花」は「黄金雛」、そしてその結末を描く「襲大鳳」へ至るぼろ鳶組シリーズ前半(らしい)の完結のためにはなくてはならないエピソードです。
「菩薩花」の後、原作シリーズは「夢胡蝶」→「狐花火」→「玉麒麟」→「双風神」(→「黄金雛」)→「襲大鳳」と展開していきます。
是非、この順で続編制作を(できれば「九紋龍」の回収も)お願いしたいのですが、あまりぼろ鳶組だけやるわけにはいかないという(上層部の)判断があるなら、いきなり「黄金雛」→「襲大鳳」もあり得るのかもしれません。
今後のぼろ鳶組に注目です。
ほぼそのままのキャスト
さて、出演者はいつものとおり。
松永源吾を演じるのはもちろん第1弾「火喰鳥」から同じ筧利夫さん。
今回は源吾が大声を上げるシーンが多く、筧さんは声質的に(年齢的にも?)厳しい部分もあるのですが、さすがの迫力。
しかしそれ以上に第10回の○○○との対面のシーンの優しい声に感動。さすがです。
そして、源吾の妻・深雪(演:山田キヌヲさん)、調整役・折下左門(演:青山勝さん)、田沼意次(演:陰山泰さん)など基本的にすべてのキャストは継続。
気が付いた範囲では「夜哭烏」から登場の大音勘九郎の娘・お琳だけは渡邉このみさんから片田陽依さんに交代しています。
相変わらず声に特徴がある人が多く聴きやすいキャスティングですが、個人的には進藤内記役の大谷亮介さんと、詠兵馬役の篠井英介さんは逆でも面白かったかなと思います(ちなみにこのおふたりは「妖異金瓶梅」の深沢敦さんとともに3軒茶屋婦人会という女方ユニットでも活動されています)。
番附風キャスト一覧
さて、それでは折角ですので、火消役の皆さんについては番附順にキャストを紹介いたします(わかる範囲で安永3年版、その他は安永2年版。今回登場した火消のみ)。
東方を先にまとめて記載したので主演の筧利夫さんは中ごろに出てきます。
◆東方
- 小結「魁(さきがけ)」武蔵(新庄藩・元万組):山口馬木也さん
- 前頭筆頭「赤舵(あかかじ)」加持星十郎(新庄藩):大沢健さん
- 前頭三枚目「凪海(なぎうみ)」柊与市(仁正寺藩):窪塚俊介さん
- 前頭七枚目「谺(やまびこ)」彦弥(新庄藩):津田英佑さん
- 前頭十三枚目「襤褸鳶(ぼろとび)」鳥越新之助(新庄藩):小山貴司さん
◆西方
- 大関「火喰鳥(ひくいどり)」松永源吾(新庄藩):筧利夫さん
- 関脇「菩薩(ぼさつ)」進藤内記(八重洲河岸定火消): 大谷亮介さん
- 小結「隻鷹(せきよう)」詠兵馬(加賀藩):篠井英介さん
- 前頭三枚目「蝗(いなご)」秋仁(よ組):坂西良太さん
- 前頭六枚目「風傑(ふうけつ)」仙助(加賀藩):若林久弥さん
(※牙八が安永2年に西の六枚目にあがったため仙助も変わったはずだが作中明示されていない) - 前頭六枚目「狗神(いぬがみ)」牙八(加賀藩):今井勝法さん
- 前頭七枚目「荒神山(こうじんやま)」寅次郎(新庄藩):朝倉伸二さん
(補足)
原作者の今村翔吾さんが2022年1月「塞王の盾」にて第166回直木賞を受賞されました。
(補足2)
当ブログで実施した2021年青春アドベンチャーリスナーアンケートで当作品が得票数第1位に輝きました。
詳しくは別記事をご参照ください。
(補足3)
途中からシリーズをお聞きになる皆様に向けて、ぼろ鳶組内部の人間関係をお互いの呼び方という切り口でこちらの記事に整理しました。
作品聴取にあたっての予習・復習にご利用ください。
■ぼろ鳶組シリーズ一覧
松永源吾とぼろ鳶組は今日も火事と戦う、ただ江戸の街を守り、人々の命を救うために。
- 火喰鳥 羽州ぼろ鳶組
- 夜哭烏 羽州ぼろ鳶組
- 鬼煙管 羽州ぼろ鳶組
- 菩薩花 羽州ぼろ鳶組(本作品)
- 夢胡蝶~羽州ぼろ鳶組
- 玉麒麟 羽州ぼろ鳶組
- 襲大鳳 羽州ぼろ鳶組
- お互いの呼び方で解説する新庄藩火消組
- 通称・異称で紹介する江戸の火消たち
- オーディオドラマ化から漏れた作品を補完する
■約260年に及ぶ江戸時代。
当ブログで紹介した江戸時代を舞台にした作品が、細かく見るとどの時代設定を背景としているのか?
この作品とこの作品はどちらが先?
実は同時期を描いている意外な作品とは?
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