格付:A ブラックローズ 作:吉田小夏(青春アドベンチャー)
闇市はさまざまな人々を飲み込み、今日もけだるさと活気の不思議な混交に満ちていた。それはそのころの日本そのものといっていい。松島六郎は「カストリ雑誌」といわれる三文雑誌の記者として糊口を凌ぐ。しかし心は空虚なままだった。行方不明となった婚約者、南方で死んだ親友。空襲で生き別れるときに彼女に言われたことが、戦地に旅立った友に言われたことが、いまでも心から離れない。そのころ闇市に、あるうわさが広がった。ブラックローズ。彼は人々の影を求める。そして彼に会いたいと望んだ人間の前だけにあられるという。