- 作品 : スペインから
- 番組 : ふたりの部屋
- 格付 : B
- 分類 : 旅とグルメ
- 初出 : 1982年9月13日~9月17日
- 回数 : 全5回(各回15分)
- 原作 : 倉田美和子
- 脚色 : 鶉野昭彦
- 演出 : (不明)
- 主演 : 倉田美和子
大学のスペイン語科に入学して2度目の春休み。
私は友人のさっちゃんと共に2カ月間のスペイン短期留学へと旅だった。
まず1カ月間は語学学校で研修して、その後の1カ月はスペイン各地を回るつもりだ。
1年掛けて綿密に準備した計画。
でも旅はトラブルの連続だった。
本作品「スペインから」は、倉田美和子さんによるトラベルエッセイを原作とした作品です。
「ふたりの部屋」という番組は、この2作品前に放送された「『日本の川を旅する』から カヌー野郎のロンリーツアー」もそうだったように、エッセイを原作とする作品も多く制作された番組でした。
謎の経緯
ところで、本作品の原作者である倉田美代子さんのお名前をインターネットで検索すると、中央公論社から発刊された「二十歳のエアメール―スペイン小さな旅」なる書籍が出てきます。
そのため「これが原作」と言いたいところなのですが、この書籍の発刊は1983年2月とのこと。
「スペインから」が放送されたのはその前年の1982年9月なので順序が合いません。
オリジナル作品としてラジオドラマの脚本が先に書かれ、それが書籍化されたと考えられなくもないですが、倉田さんはプロの脚本家ではなく、その可能性は低いと思います。
例えば「どこかの雑誌に掲載されたものが、単行本化を待たずにラジオドラマ化」、とか…?
この辺の事情をご存知の方がいらっしゃいましたら是非ご教示ください。
(注:後日、本件について書籍版をお持ちの方から回答をいただきました。記事末の「コメント」もご参照ください。)
自ら主演
さて、先ほど倉田さんについて「プロの脚本家ではない」と書きましたが、そもそも検索しても出てくる著作はこの1作のみ。
現在は株式会社イクスという広告やデザインを中心としたコンサルティングファーム?のコアメンバー(Executive Planner & Copy Writer)として、活動されているそうです。
そういう意味では、現在はドラマ制作の現場からは離れていると思われるのですが、なんと本作品では自ら主演もされています。
もちろん主人公の美和子役。
最初、「主演の女優さん、やけに流ちょうにスペイン語を話すなあ」と思ったのですが、ご本人だったんですね~
本作品、美和子のモノローグが多い作品なので、原作者が自ら朗読している作品とも言えます。
ちなみに「ふたりの部屋」という番組名どおり、出演者は、倉田美和子さんのほか、もう1名、「さっちゃん」役の「よしだいくえ」(吉田郁恵?)さんのみ。
正直、こちらの役者さんの方が上手い(というかプロっぽい)しゃべり方なので、吉田さんはプロの役者さんだと思われます。
海外留学が特別なものだった時代
さて、本作品は、1980年頃にスペインへの留学を敢行した女学生ふたりの旅日記です。
当時はまだバブル景気前で、留学も一般的ではありませんでした。
北米経由でヨーロッパ入りするあたりに時代を感じます。
ドイツ、フランスを経由してスペインに入るのですが、スペインの雑踏、祭りのざわめきなどが雰囲気たっぷりに再現されており、視聴者は随分と旅情をかき立てられたものと思います。
当時は2カ月程度の海外旅行でも大事件でした。
その初めての海外留学の緊張感とリリカルなフラメンコギターの調べがマッチして、とてもいい雰囲気の作品になっています。
でも、留学生の日常が淡々と描かれていく作品だと思っていると、さにあらず。
途中でいきなりスペインでクーデターが勃発して、非日常空間になったりもします。
聴いていて「マジ?」と思ったのですが、調べてみると、スペインでは1981年2月に軍事クーデター未遂事件(23-F)が起こっています。
これのことだったんですねえ。
コメント
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「二十歳のエアメール」を所有していますが、これはラジオ放送後に再構成して出版されたものです。
もともとは倉田さんがスペインから家族に宛てて書いた手紙をまとめて、彼女自身が自費出版という形で世に出したものです。それを、どこでどう知ったのかは分かりませんが、NHKがドラマ化したというもののようですね。
ですから、倉田さんはドラマや演技に関しては全くの素人さんです。でも、本人だからこそ出せる雰囲気というものがあり、そこがこの作品の良さだと思っています。
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youyanさま
コメント、ありがとうございます。
なるほどそういうことでしたか。
経緯がわかってすっきりしました!
本人出演の雰囲気こそがこの作品の良さ、というのは全く同意します。
それにしてもよくこんな企画を考えたものです。
演出(ディレクター)がどなただったかわかりませんが、当時のスタッフの積極性には脱帽ですね。