- 作品 : 歌をなくした夏
- 番組 : FMシアター
- 格付 : AA-
- 分類 : 家族
- 初出 : 2023年8月26日
- 回数 : 全1回(50分)
- 作 : 桑原亮子
- 音楽 : 富貴晴美
- 演出 : 熊野律時
- 主演 : 八木莉可子
秋月史子は歌人志望の若い女性。
人づきあいが苦手で、暗くて重い短歌しかつくれないが、それでも自費で第一歌集を出すことを目標にコンビニと喫茶店で掛け持ちのバイトを続けてきた。
しかし生活に追われる日々の中でいつしか短歌が作れなくなってしまった。
そんなスランプの最中に史子はバイト先のコンビニでひとりの少女に出会う。
少女は一日中コンビニや公園で時間をつぶして誰かを待っているようなのだが…
本作品「歌を忘れた夏」はNHK-FMのFMシアターで放送されたオーディオドラマです。
朝ドラのスピンオフ!
FMシアターは50分で完結するラジオドラマを週1で放送する番組ですが、本作品はちょっと異例な経緯を経て制作されています。
まず本作品の正式なタイトルは「舞いあがれ!スピンオフドラマ『歌をなくした夏』」。
つまりNHK朝の連続テレビ小説「舞いあがれ!」と世界観を同じくし、その脇役キャラが主役を務める作品なのです。
本家の脚本家が自ら執筆
これが可能となったのは「舞いあがれ!」の脚本家の桑原亮子さんがもともとラジオドラマからスタートした脚本家さんでありラジオドラマに強い思い入れがあったから(外部リンク)。
そして主演の八木莉可子さんは2020年に同じ桑原亮子さん脚本で、タイトルもどこか似ているオーディオドラマ「君を探す夏」で好演した経験がある。
というか「君を探す夏」出演の縁で「舞いあがれ!」に呼ばれ、そのスピンオフたる本作品でFMシアターに帰ってきた形になります。
知らない人でも大丈夫
…という経緯はあるのですが…
大丈夫です、「舞いあがれ!」本編をご覧になっていなかった方でも本作品単独で十分に楽しめる作品です。
というか私も「舞いあがれ!」本編はほとんど見ていませんでした!
ごく普通の家族ドラマ
さて、作品の内容は史子が見知らぬ少女との付き合いを通じて、自らの父との関係、記憶を問い直すような内容です。
いかにもFMシアターらしい真面目な内容ですし、そもそも史子が内向的な性格なこともあり、スカッとした作品にはなりようがありません。
また、歌人や短歌と言った道具立て、育児放棄気味な史子の父親の話、エキセントリックな編集者・リュー北条など、ギトギトの内容にしようと思えばできる要素もあるのですが、それらの使い方はあくまで抑制的でどこか品が良い。
薄味だがダシは効いている
かといって全く意味がないかといえばそうではなく、リュー北条が軽い言葉に乗せて紐解く父親の気持ちや、最後に綺麗に短歌につながる構成など目立たないけど意外と効果的に使われています。
私、こういった家族ものは聞いていて胸やけがするような感を受けることが多く、あまり好きではないのですが、本作品はさらりと気持よく聴くことができました。
さすがに…
思えば昔の桑原さんの作品は「冬の曳航」にしろ「沈黙とオルゴール」にしろ「声命線」にしろ、FMシアターにしては割とインパクト重視でテーマも直球の作品が多かった印象です。
それが好きな理由でもありましたが、本作品は気の利いた掛け合いはあれど、あくまで品の良いストーリーの家族ものであり、この手のものも上手いのはさすがと思いました(わたしが知らないだけで元々うまかったのかもしれませんが)。
出演者紹介
本作品の主演は上記のとおり八木莉可子さん。
他にリュー北条役の川島潤哉さんも「舞いあがれ!」からの続投組です。
また本作品オリジナルキャストでは謎の?少女を毎田暖乃さんの演技が印象的。
本作品放送時11歳!の子役さんですがすでに朝ドラ「おちょやん」ではヒロインの少女時代を演じるなど注目を浴びているそうです。
いつかFMシアターには主演で戻ってきていただけるかもしれません…と思っていたらすでに2024年1月13日放送「チカちゃんのオルゴール」で主演されていました!
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