君を探す夏 作:桑原亮子(特集オーディオドラマ)

格付:A
  • 作品 : 君を探す夏
  • 番組 : 特集オーディオドラマ
  • 格付 : A+
  • 分類 : 少年(中高)
  • 初出 : 2020年12月26日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 作  : 桑原亮子
  • 音楽 : 世武裕子
  • 演出 : 南野彩子
  • 主演 : 八木莉可子

世間がコロナ禍に揺れる2020年の夏。
何もできなかった高校1年の一学期が終わった日の帰り際、久保麻里子は担任の先生から同級生・百瀬ゆいの教科書を持ち帰るように頼まれる。
一度口を聞いたことがあるだけで友達でも何でもないゆいに関わることに躊躇する麻里子だが、教科書を届けた際のゆいの家人の様子がどうにも気になり、家出したというゆいの行方を探しはじめることになった。
本当であれば合唱コンクールに向けて頑張っていたはずの夏休み。
こんなはずじゃなかった夏休みだが、こんなはずじゃなかったのは自分だけではないはず。
今自分にできること、したいことは、ゆいを探すことのはずだ。


本作品「君を探す夏」は2020年12月に特集オーディオドラマの枠で放送されたラジオドラマです。
12月に「夏」という言葉の入ったタイトルが放送されることに違和感を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、実は本作品の中心となる43分のラジオドラマは同じ2020年の9月に近畿ブロックで放送された「子ども応援!5時間ラジオ~短い夏休み明け つらいみんなへ~」です。
そしてこのラジオドラマの前後に、同番組でパーソナリティを務めた関西ジャニーズJr.「Aぇ!group」所属の草間リチャード敬太さん(「ザ!鉄腕!DASH!!」に出ている方ですね)と正門良規(まさかど・よしのり)さんによるトークコーナー(主に視聴者からのメッセージの読み上げ)を付け加えて50分にしたのがこの作品なのです。

コロナ禍を描いたラジオドラマ

さて、本作品はもとになった番組のタイトルからわけるとおり若者を対象とした作品。
特に新型コロナウィルス感染症により、学業も部活も学校生活さえ大きく制限された少年少女たちに向けた応援メッセージとしての性格が強い作品です。
そのため、マスク、学校行事の中止、部活動自粛、7時間授業、換気、営業自粛、リモート講義などコロナ禍における日本の風俗がリアルタイムでふんだんに取り入れられています。
そして作品終盤の舞台もまたコロナ禍で閑散とした中部国際空港セントレアになるのですが、そこで人が生きていくためのモチベーションを航空機のエンジンになぞらえたうえで、例えいくつかのエンジンが止まってしまったとしても飛び続けられることを静かに伝えるような作品になっています。

主演はふたりの若手女優

物語は中盤以降、主役の女子ふたりを中心に進んで行くのですが、この二人の清潔感が作品の魅力。
このふたりを演じるのはモデル・女優の八木莉可子さんと、女優の蒔田彩珠(まきた・あじゅ)さんなのですが、それぞれ放送時19歳と18歳の若手女優さん。
八木さんは大塚製薬のポカリスエットの、蒔田さんは同じ大塚製薬のカロリーメイトのCMキャラクターをされていたのでお顔をご存知の方も多かろうかと思います。
なお、蒔田彩珠さんは2022年の青春アドベンチャー「滅びの前のシャングリラ」でも重要な役どころを演じています。
他にも最初にご紹介した関西ジャニーズJr.草間さんと正門さんも作品に出演されており出演者的にはなかなか青春度が高いのですが、それを売りにしなくても通用する落ちついた作品です。

「ムリヤ」って?

ところで本作品で語られる輸送機・アントノフAn-225「ムリヤ」ですが、実際に2020年5月及び6月に3度にわたって医療物資の輸送のためにセントレアに来ているとのこと。
本作品の脚本は「沈黙とオルゴール」、「声命線」、「冬の曳航」などの桑原亮子さんです。
個人的に外れの少ない脚本家さんだと思っているのですが、本作品が6月ごろに脚本が執筆され、8月に収録された作品だと思うと、時事を取り込むことにも長けていると感じました(その後、22年の朝ドラの脚本家に抜擢されました)。


(補足)
本作品は、当ブログが実施した2020年リスナーアンケートの得票数2位に輝きました。
詳しくは別記事をご参照ください。




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