- 作品 : 沈黙とオルゴール
- 番組 : FMシアター
- 格付 : A-
- 分類 : 少年(中高)
- 初出 : 2015年5月30日
- 回数 : 全1回(50分)
- 作 : 桑原亮子
- 音楽 : 山下康介
- 演出 : 小宮山佳典
- 主演 : 上白石萌歌
母を失って3年。
それでもくじけず勉強を続け、難関の中学に入学した深山晶子を待っていたのは、自分が進行性の難聴であるという過酷な現実だった。
少しずつ聞こえる音が減っていく毎日。
ついに母の形見であるオルゴールの音も聞こえなくなってしまった。
自分の人生の可能性が無くなっていくとしか感じられない絶望的な日々。
その中で、彼女は一匹のチワワ犬と出会う。
当ブログはNHK-FMの帯ドラマ番組「青春アドベンチャー」で放送された作品を中心に紹介していくブログです。
そのため、NHK-FMのもう一つのラジオドラマ番組「FMシアター」の作品を紹介することは稀であり、過去、特集番組である「星を掘れ!」を放送後すぐに紹介したことはありましたが、通常放送のFMシアター作品をすぐに取り上げるのは初めてだと思います。
急きょ取り上げた理由として「作品のあまりの出来の良さに感激して…」と言いたいところですが、実はこの後に掲載した特集記事にあわせた、というのが主たる理由です。
重いテーマだが…
ただし、この作品の出来が悪いわけでは決してありません。
FMシアターらしい真面目な作品ですが、進行性の難聴という重いテーマを扱いつつ、50分でそれなりに気持ちの良いエンディング迎えるあたり、脚本家の桑原亮子さん始め、スタッフの技量がよくわかる作品です。
テーマの重複
ただ、もともと音だけで表現するラジオドラマにこのようなテーマが良くあっているからか、FMシアターはこのテーマをかなり頻繁に取り上げており、2007年の「レインツリーの国」(有川浩さん原作)、2012年の「聞こえの彼方」などの先例があります。
このラジオドラマの3作品でもそれぞれに微妙にテーマが異なっており、作家・演出家などの作り手も別々なのだとは思いますが、正直なところ最近のFMシアターはテーマの重複にやや鈍感なのが気になります。
(後日判明した脚本家桑原さんとこのテーマとの関係については「声命線」の記事を参照)
聴導犬の重要さ
さて、ストーリーに話を移したいところですが、FMシアターは50分1回の番組ですぐに聴き終えることができますし、そもそも本作品のテーマは聴き手一人一人が自分なりに考えるべきテーマでしょうから、あまり語らずにおきたいと思います。
ただ、個人的な感想としては、「障害と人生の可能性」という大きすぎる問いに対する答えが、聴導犬との関係が絡むことによって、希薄になっていたように感じます。
全般に聞きやすい作品だったことと表裏一体かもしれませんが、少し食い足りない印象が残ったのは残念です。
犬の役
この点については、それだけ聴導犬のインパクトが大きかったからというのも理由のひとつだと思います。
聴導犬といえば、この作品には主人公の母親役で、声優の佐久間レイさんが出演されているのですが、「有名声優さんで公式ホームページの出演者の並び順も2番目の割に出番が少ないな」と思っていたら、何と犬のケンの役も掛け持ちされていることが最後の出演者紹介でわかりました。
「犬の声」という特殊な役を専業の声優さんにやらせるあたりなかなか凝った配役です。
犬だけではなく、佐久間さんの「お姉さま役」…もとい!「お母さん役」もなかなか良い雰囲気でしたが。
上白石萌歌さん
さて、先に佐久間さんを紹介しましたが、本作品の主役である晶子(しょうこ)を演じているのは、上白石萌歌(かみしらいし・もか)さん。
2011年の東宝シンデレラオーディションのグランプリ(当時何と10歳!)受賞者で、女優やファッションモデルをされている方だそうです。
青春アドベンチャーファン的には、少しだけ「放課後はミステリーとともに」・「ニコイナ食堂」の朝倉あきさんを思い出させる声質です。
2000年2月生まれでまだ15歳とのことですが、すでに多くのテレビドラマや映画への出演経験もあり、演技はなかなか達者。
今後の活躍が楽しみです。
※2021/11/1追記
つい先日終了した朝ドラ「おかえりモネ」主演の清原果耶さんが実はこの「沈黙とオルゴール」に出演していたことに急に気が付きました。
「おかえりモネ」の時点で19歳ですが、落ち着きと若さが入り混じってとても印象的な演技でした。
でも「沈黙とオルゴール」は6年前だからまだ13歳、芸能活動を始めた直後ですね。
ここでも発揮されていますね、オーディオドラマスタッフの先物買いの力。
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