人喰い大熊と火縄銃の少女 作:オカモト國ヒコ(青春アドベンチャー)
自分はなぜ、あの少女を助けたいと思ったのだろう。流れ流れて辿り着いた最果ての寒村。ボロ小屋の前で、全身から声を引き絞るようにして叫んでいたあの少女を。「お願いします。あの熊を撃ち殺して欲しいんです。」そう、彼女は、熊に全滅させられた村の唯一の生き残りだった。彼女とともに熊を追った男は自分のほかに3人。武士として死ぬことができなかった巡査、変わり者だと村中から蔑まれていた熊撃ちの達人、混血ゆえに自分の存在意義を証明しなればいけなかった「森の民」の少年。確かに少女と3人の男たちには、あの怪物を追わねばならない理由があった。しかしチンピラで部外者の自分は彼らとは違う。そんな義理はない。あんな怪物と戦わなければいけない理由はなかった。いや、自分は本当に彼らとは違うのか。そうか、自分を含めてこの5人はみな世間からつまはじきにされた流れ者だったのかも知れない。