- 作品 : かがみ池のからくり
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : A
- 分類 : スラップスティック
- 初出 : 2022年2月7日~2月18日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 作 : 松村武
- 演出 : 松浦禎久
- 主演 : 白石聖
30目前の売れない歴史ライター・能垣拓郎(のうがきたくろう)と、サブカル好きの女子大生・鳥留つむぎ(とりとめ・つむぎ)が向かったのは「かがみ池」。
拓郎には微妙なパワースポットにしか見えないが、つむぎがいうには「知る人は知る聖地」らしい。
かがみ池の水面をのぞき込むと、何者かの呪いによって陰で操られている人はその陰の主が水面に映る。さらに、その水面に何も映らない場合は…とのことなのだが。
もちろん拓郎はこの与太話を信じてここまで来たわけではない。
旅雑誌の取材で訪れた祭りで出会った鳥留つむぎという可愛い女の子との距離を縮めたかっただけなのだ。
しかし、彼らはそこで歴史ライターでもサブカル好きでも予想もできないような出来事に巻き込まれることになる。
物語の始まりは平成バブルがはじけて間もないころ。
パフィーの「サーキットの娘」が流行っていた1990年代後半のことである。
本ラジオドラマ「かがみ池のからくり」は、劇団カムカムミニキーナを主催する劇作家・演出家の松村武さんのオリジナル脚本によるラジオドラマです。
松村さんだけではなく(実質的な)主演の山崎樹範さんも劇団カムカムミニキーナの主力俳優です。
劇作家らしいタイトル
さてこのところオリジナル脚本の多い青春アドベンチャーですが、「かがみ池のからくり」というタイトルだけをみた私の最初の印象は「オリジナル脚本ぽいタイトルだな~」でした。
例えば、「エドモンたちの島」(2002年)、「カラマーゾフの森」(2002年)、「夜叉ヶ池で見つけた命」(2015年)、「双子島の秘密」(2015年)、「河童の記憶」(2019年)といった作品タイトルと同じような印象。
ちょっとそっけないタイトル
何か特別なことが起きそうではあるものの、あまりキャッチーにはせずに、少し文学っぽく、むしろそっけない感じのタイトル。
なぜか劇作家さんがエンタメ色の強い青春アドベンチャーで脚本を書くと好まれるパターンですよね。
この類の作品の多くが現在日本を舞台にして少しファンタジックな背景のもと何か事件が起きて、それに巻き込まれた若者が冒険を通して成長しちゃったりするわけで、まあいつものとおりかな、とあまり期待しないで聴いていたのですが…
これはどういう話なのか?
少し予想と違うじゃないですか。
「からくり」という古風な言葉から超常的な要素を想像して聞き始めたものの、意外と現実的な装置でびっくり。
そして、ストーリーも割と現世的な展開が続きます。
タイトルを裏切られる方向性でいうなら(原作付きだけど)「ロズウェルなんて知らない」に近い感じ?
と思うと次第にちょっとオカルトというか、やっぱりファンタジーぽく思える部分もあったりして、どうなるこれ?と思っているうちに前半が終了し…
後半の展開は予想できない
正直、前半5回だけだとイマイチなオリジナル脚本作品でよくあるレベル。
しかし、後半は完全に予想外で、前半は後半に向けてのプロローグにすぎませんでした。
そして、第7回の終盤で探偵が登場し、さらに話は変転していきます。
更に第8回のそれなりに説得力のある謎解きでなんとか収まるかと思ったら、第8回の終盤でまたストーリーがとっ散らかった印象。
一応結末はまとまったが
拓郎の思いが縦糸になっており、その方向性で最後まとまるとはいえ、正直、ここまでストーリーを迷走させる必要があったのかなと思いました。
まあ全般がコメディタッチだったこともあり結構楽しく聴くことができましたし、予想を裏切るという意味ではなかなかの作品なのは確かだと思います。
白石聖さん主演
さて、本作品の主役、サブカル好きの女子大生、つむぎを演じるのは女優の白石聖さん(23歳)。
美人ですよね。
ラジオでお顔は見えないので美人の無駄づかい。
オーディオドラマなのでいつものことですが。
オーディオドラマ主演2作品目
NHK-FMでは2021年のFMシアター「これは、私の落とし噺」に主演経験があり、落語に挑戦する女子高生を熱演されていたのが印象的です。
「これは、私の落とし噺」は本当にストレートな若者の成長ものだったのですが、本作品のつむぎは暴走系の主人公なので、白石さんは一段との伸び伸びと演じている印象です。
そして後半は展開に合わせて少し変わった発声をしているのですが、かなりそれっぽく聞こえるがお見事でした。
Wikipediaによれば白石さんは声優をやってみたいという意向もあるそうですので結構楽しんでやっていたのだと思います。
事実上の主演、山崎樹範さん
また、つむぎの相手役の能垣拓郎を演じるのは先に述べたとおり俳優の山崎樹範さん。
現在47歳の山崎さんがアラサーの男性を演じているのですが、それには相応の理由があります。この辺は聴いてのお楽しみ。
なお、本作品、基本的に能垣の視点で物語が描かれます。
そのため膨大なモノローグ(というか脳内ツッコミ?)を山崎さんが話す形になっており、少なくとも前半を聞いた限りでは、実質的に山崎さんが主演と言って良いと思います。
演出の松浦禎久さん
なお、本作品を演出している松浦禎久さんは1990年代に青春アドベンチャーで演出をされていた方なのですが、2000年5月の「二の悲劇」(山西惇さん主演)を最後に番組を離れていました。
そして2021年3月「当面の間、変身します」で突如、復帰。
本作品は復帰後3作品目の演出作品になります。
90年代ブーム?
本作品の次の「ウブヒメ」には90年代の常連出演者だった渡辺いっけいさん(北壁の死闘、五番目のサリー、サンタクロースが歌ってくれたなど)が久しぶりに出演されますし、さらにその次の作品「鷗外 青春診療録控 千住に吹く風」はこれまた約20年ぶりの川口泰典さんの演出作品。
何となく最近90年代づいていますね。
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