風になった男 原作:飯島和一(青春アドベンチャー)
天明の大飢饉による社会不安が続く備前岡山に、夜な夜な怪獣・鵺(ぬえ)が現れるという噂が立った。
鵺はご政道の誤りを指弾して空を飛ぶという。
捨て置くことができなくなった岡山藩は、大規模な捜索の末についに犯人を捕まえた。
鵺と間違えられていたのは、表具師の幸吉(こうきち)。
職人としての腕を生かしてつくった凧で空を飛んでいたのだった。
しかし、詮議を受けた幸吉は、藩政を批判するために空を飛んだという目付の推測を完全に否定し、自らが空を飛ぶに至った半生を語り始める…
「世の中を 憂しとやさしと おもへども 飛びたちかねつ 鳥にしあらねば」(山上憶良)
これは、閉塞感に閉ざされた天明の世で、風のように自由に空を飛ぶことを夢見た男の物語である。