- 作品 : 魔弾の射手
- 番組 : アドベンチャーロード
- 格付 : B
- 分類 : アクション(海外)
- 初出 : 1988年11月7日~11月18日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 赤羽堯
- 脚色 : 内田史子
- 演出 : 竹内豊
- 主演 : 樋浦勉
フリーのレコーディングディレクター・不死原徹(ふじわら・とおる)は、ある日突然、若き日の思い出の女性・スーザンから電話を受ける。
スーザンは、アルベルト・フォーリーという富豪のためにプライベートレコードを作るディレクターを探しているという。
矢も楯もたまらずスーザンの誘いに乗りにロスに向かった徹だが、迎えに来た車で何者かから銃で襲撃されてしまう。
依頼者であるアルベルト・フォリーの正体すら定かでない中、チラつきはじめるネオナチの陰。
徹はなぜこの事件に巻き込まれてしまったのか。
そして、この事件にスーザンはどのようにかかわっているのか。
スーザンが口ずさむジプシー音階のマウスミュージックとともに物語は動き出す。
本作品「魔弾の射手」は、1997年に亡くなられた赤羽堯(あかばね・たかし)さん原作の冒険小説を原作とするラジオドラマです。
洋画吹き替え風
主演は樋浦勉さん。
洋画の吹き替えを中心に活躍されていた方で、冒険小説の主人公にぴったりの声をお持ちでした。
比較的最近の青春アドベンチャーでも「砂漠の歌姫」や「なぞタクシーにのって…」で渋い演技を披露されていましたが、やはり樋浦さんの本領が発揮されたのは、やはりアドベンチャーロード期の傑作「A-10奪還チーム出動せよ」や本作品のような大人向けの冒険ものだったと思います。
意外とアニメ色も
さて、樋浦さんを紹介したついでに、他の出演者も紹介をしてしまいますが、ヒロインのスーザンを演じているのはややハスキーで如何にも大人の女の声といった感じの三浦真弓さん。
また、ナレーションは「インベーダー・サマー」も思い出深い小林恭治さん、といった感じで、如何にもNHKのラジオドラマらしい渋い出演陣です。
でもよく聞いてみると、「科学忍者隊ガッチャマン」の主人公・荒鷲の健などの数々のヒーロー役で有名な森功至さんや、「機動戦士ガンダム」のララァ・スン役などで有名な潘恵子さん、「ロードス島戦記」のディードリット役の冬馬由美さんなど、アニメ畑の声優さんも出演されており奥が深い配役です。
ネオナチねた
ところで、本作品はいわゆる”ネオナチ”を扱った冒険ものです。
本作品が放送された1988年11月は冷戦末期であり、ちょうどこの1年後の1989年11月にベルリンの壁が崩壊することになります。
冷戦期における冒険小説、スパイ小説、謀略小説等において、第二次世界大戦のおとしごである”ナオナチ”はポピュラーな題材でした。
本作品の約10か月後(ベルリンの壁崩壊の2か月前)に同じアドベンチャーロードで放送された連城三紀彦さん原作の「黄昏のベルリン」もネオナチ絡みの作品です。
ジャンルと時代背景
番組が青春アドベンチャーになってからも「ブラジルから来た少年」というネオナチ絡みの作品もありましたが、これはかなり昔の小説を原作とする作品でしたので、ちょっとイレギュラーです。
最近、こういった冒険小説自体が退潮となったのは、冷戦終結という時代背景と密接な関係がある気がします。
冷戦時代は、社会になんだかよくわからない緊張感があり、また、よくわからない謀略が渦巻いていた…ような気がする時代でした。
ユダヤではなくロマ
なお、ネオナチの永遠のライバルといえばイスラエル(ユダヤ人)ですが、本作品で登場するのはユダヤ人ではなく、ジプシー(最近では「ロマ」という呼び方の方が正式なよう)です。
ユダヤ教徒ほど有名ではありませんが、ジプシーもまたヒットラーに迫害され虐殺された歴史を持ちます。
起源がはっきりしない、長年迫害されている、でも芸能面で各国の文化に大きな及ぼしてきた、という様々な面からミステリアスなジプシー(ロマ)。
考えてみると、冒険小説にはぴったりの素材ではありますが、そんなことは差別され、苦しんできた彼らには別に慰めになることではないのでしょう。
現実の世界は割り切れない
何はともあれ、本作品の主人公の徹は、ジプシー同盟とネオナチの争いに巻き込まれてしまうわけですが、ことは善悪二元論で語れるほど単純なものではありません。
両陣営の秘密が交錯し、物語は複雑な展開を示していきます。
ただし、個人的には、話が複雑すぎたからか、登場人物、特に黒幕たちの行動原理が今一つわからずもどかしく感じられるストーリーでした。
エンディングの展開もわかったようなわからないような…
理解力不足ですみません。
スタッフ紹介
さて、本作品の演出は竹内豊さんで、脚色は内田史子さん。
竹内さんはアドベンチャーロード時代は「妖精作戦」や「黄金海峡」などを担当されていました。
その後は「レッド・レイン」などで「制作統括」という立場でコールされていましたので、現場を少し離れられたのかもしれません。
一方の、内田さんはサウンド夢工房時代の「ガール・ミーツ・ボーイ」、青春アドベンチャー時代の「マドモアゼル・モーツァルト」や「おしまいの日」なども担当されています。
上記の3作品はいずれも女性が主人公の作品であり、内田さんの作品の中でも大人の男性が主人公の本作品はやや異例な印象を受けます。
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