2024-04

格付:C

春麻呂の夢 作:相良敦子(特集オーディオドラマ)

天平の時代。 今の京都、木津川のほとりでは新しい都の造営が始まっていた。 後に恭仁京(くにきょう)と呼ばれることになるその都は、平城京で起こった様々な悪しき事による祟りを恐れて遷都するためのものだが、貧しい庶民にとっては生活を圧迫するものでしかなかった。 その造営の普請場に春麻呂という少年がいた。 親方にこき使われる毎日に反発の気持ちを強めて春麻呂だが、ある日、鳥の糞と共に堕ちてきた一枚のお札のようなものを入手する。 驚くべきことにそのお札はしゃべることができたのだ。
格付:B

青き風吹く 作:相良敦子(特集オーディオドラマ)

奈良時代、能登半島は羽咋の浜。 当時、能登は大陸の国家・渤海との交易の窓口であった。 ある日、素潜り漁で生計を立てる少年ヒコナの前で、異国の船が難破する。 ようやく助け出した異国の老人キュロスはひとつの瑠璃の壺を大事に抱えていた。 彼は大陸で出会った日本人の友人にこれを届けるために日本に来たという。 それが人生最後の望みだという老人に請われたヒコナはともに都へと旅立つのだが…
格付:B

天保北越雪譜異聞 作:小林克彰(FMシアター)

銀座で煙草道具屋を営む相四郎は山東京山(さんとう・きょうざん)のペンネームを持つ戯作作家でもある。 浮世絵師であり大作家でもあった山東京伝(さんとう・きょうでん)の弟だが、流行作家としては兄に比肩すること叶わず、有り体にいって鳴かず飛ばず。 なんとか作家として名を残そうと考えた相四郎は、越後塩沢の縮緬問屋、鈴木儀三治がかつて書いて兄のもとに持ち込んだノンフェクション文学『北越雪譜』(ほくえつせっぷ)のことを思い出した。 江戸の人たちには思いもよらない豪雪地帯の生活を克明に描いたこの作品であれば必ずヒットするはず。これの編者、あわよく作者として歴史に名を残せないものか。 しかし『北越雪譜』の原稿は今や流行作家である曲亭馬琴が預かっている。彼とは因縁浅からぬ中なのだが…
格付:A

琥珀(こはく)のひと 作:新井まさみ(FMシアター)

極寒の奥日光にもまた春がやってくる。 ただ、このあたりには観光するものはなにもない。 地元の人間ですらめったに通らない山道を若い女性が歩いているのはやはり不審だ。 そう考えてモーリーこと矢部吉森は彼女に声を掛けたが、彼女は自分に会いに来たという。 確かに国産メープルシロップは珍しい。 ふもとで聞けばこの山に行けば会えると言われるのも確かだろう。 しかし、若い女性がメープルシロップの製造現場を見るためだけに、老人がひとりで暮らす雪深い山中まで来るものだろうか。
格付:AAA

襲大鳳 羽州ぼろ鳶組 原作:今村翔吾(青春アドベンチャー)

親父は冴えない火消だった。 二つ名は「鉄鯢(てつけい)」。 「鉄」で「鯢(さんしょううお)」だなんて鈍くさい親父にお似合いだ。 それに引き換え、あの人、伊神甚兵衛様はまぶしかった。 「大物喰い」「鳳(おおとり)」「日ノ本一の火消」。 初めは大げさと思われた「炎聖」の称号でさえもやがて誰もが相応しいと認めるようになった。 それなのに最後の最後、救ったのは親父、救われたのは伊神様だった。 火付犯に堕ちた伊神様の心を救い、業火の中、最後まで命を救うことを諦めなかった親父。 「火消はどんな命でも救う。」「己より優れた火消がいれば任す。」 ふたりの死後、頭になった自分の口から出るセリフはいつしか親父と寸分たがわぬものになっていた。 しかし、今また起こる怪火。そして死んだはずの伊神様の影。 伊神様は生きているのか、そして再び復讐を始めたというのか。 だとしたら親父の犠牲は何だったのか。 いや、俺は親父を信じる。伊神様を信じる。人の強さを信じる。 親父の最期の言葉はこうだったではないか。 「人の強さは人の弱さを知ることだ。それを喰らって人は強くなる。行け源吾、決して諦めるな。」
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