青き風吹く 作:相良敦子(特集オーディオドラマ)

格付:B
  • 作品 : 青き風吹く
  • 番組 : 特集オーディオドラマ
  • 格付 : B-
  • 分類 : 歴史時代(日本)
  • 初出 : 2016年1月2日
  • 回数 : 全1回(60分)
  • 作  : 相良敦子
  • 音楽 : 菅野由弘
  • 演出 : 藤井靖
  • 主演 : 須賀健太

奈良時代、能登半島は羽咋の浜。
当時、能登は大陸の国家・渤海との交易の窓口であった。
ある日、素潜り漁で生計を立てる少年ヒコナの前で、異国の船が難破する。
ようやく助け出した異国の老人キュロスはひとつの瑠璃の壺を大事に抱えていた。
彼は大陸で出会った日本人の友人にこれを届けるために日本に来たという。
それが人生最後の望みだという老人に請われたヒコナはともに都へと旅立つのだが…


本作品「青き風吹く」は相良敦子さん脚本のオリジナルオーディオドラマでNHK-FMにて特集オーディオドラマとして放送されました(特集オーディオドラマはレギュラー番組であるFMシアターより10分長い60分のことが多い)。

3部作?

相良さんは2017年から2022年に特集オーディオドラマ向けに奈良時代を舞台にした作品を3作品書き下ろしています(本作品、春麻呂の夢さざ波のみち)。
現在、NHK-FMの青春アドベンチャーでは同じ奈良時代を舞台とした「いまはむかし~竹取異聞~」を再放送しているので、それにあわせた企画として、この3作品を紹介します。
その第1弾が2016年に放送されたこの「青き風吹く」で、藤原仲麻呂(いわゆる恵美押勝)が国政を牛耳っていた740年後半から~760年あたりが舞台のようです。

奈良時代の能登半島

奈良時代と言えば平城京そして東大寺の大仏なのですが、本作品は都ではなく能登半島から物語はスタートします。
丁度この2024年1月に能登半島を襲った能登半島地震に関わる報道でも再認識させられたのですが、現代の能登半島と言えばその交通事情の悪さと過疎化の進展を思い浮かべざるを得ません。
しかし、奈良時代には日本海を隔てた大陸こそが先進文明の地であり、それに面する能登も大陸の窓口でした。
この類の話としては、多くのシルクロードの文物が残る福岡県の宗像大社や沖ノ島が「海の正倉院」として有名ですが、石川県羽咋市の羽咋海岸に所在する寺家遺跡も「なぎさの正倉院」として有名なのだそうです。
本作品の制作経緯は明らかではありませんが、この海岸の地下2mに埋もれたシルクロードの遺産というロマンあふれる事象にインスパイアされた作品なのだと思います。

舞台はあくまで国内

本作品はこのような国際色豊かな作品…といいたいところですが、作品の舞台は羽咋と都に限られており、海外は回想シーンの一部でしか登場しません。
また遣唐使とともに大陸に渡る留学生の候補であり石川真人なる青年も登場しますが、渡航に全く気乗りしておらず物語の主役なることはありません。
主役のヒコナは孤児(父親は都に行ったまま戻ってこない)の貧しい少年なのですが、物語は彼がキュロスとともに訪れた都で体験したことを通じて成長していく姿を中心に描かれます。

作品の意義

遠い異国(唐)に志を持って渡った人々や、訳あって遠い異国(日本)にやってきた人々の思いが語られるものの、結局、主人公の境遇が大きく変わることもなく、ビルディングスロマン的にはなんとなくすっきりしないまま終わりました(ストーリーはきちんと着地しています)。
ただ、能登が今の姿とは全く違う側面を持っていたことはとても興味深いですし、外野からの意見で恐縮ですが、地震からの復興にあたっては環太平洋という枠組みを考えるのも意義深いのではないかと思いました。

出演者について

本作品の主人公ヒコナを演じたのは俳優の須賀健太さん。
その他、加藤虎ノ介さん(know~知っている夜のストーリーボックスなど)、美山加恋さん(イッツ・ア・ビューティフルワールドエド魔女奇譚など)といったNHK-FMのオーディオドラマではお馴染みの方々や、竹下景子さん、江守徹さんというベテランが出演されており、なかなか充実した出演陣です。

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