ひとめあなたに… 原作:新井素子(ふたりの部屋)
昨夜は飲みすぎた。記憶は曖昧。
それは飲みすぎるよ、カレに「自分は癌だ、だからほっておいて欲しい」なんて言われたら。
ショックのあまり何も言えなくても、男友達と一晩飲み明かすことになっても仕方ないじゃない。
それにしても度が過ぎたかも。
記憶がないどころか、ありえないニュースまで記憶している。
「地球に隕石が衝突するので人類の絶滅まであと1週間」とか、随分とひどい妄想だ。
…あれ?朝のニュースでも同じことを言っている?
まさか、まさか、本当なの?
でも、もし本当ならこんなところでグズグズしてはいられない。
こんな別れが最後になるなんて絶対イヤ。
せめてひとめ会ってもう一度だけでも話がしたい。
行こう、カレが住んでいる鎌倉まで。