ゼンダ城の虜~完結編~ヘンツォ伯爵 原作:アンソニー・ホープ(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : ゼンダ城の虜~完結編~ヘンツォ伯爵
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A-
  • 分類 : アクション(海外)
  • 初出 : 2010年11月22日~12月3日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : アンソニー・ホープ
  • 脚色 : 花房朋香
  • 演出 : 江澤俊彦
  • 主演 : 蟹江一平

ルリタニア王国の戴冠式を巡る事件から3年。
イギリス貴族ルドルフ・ラッセンディルを愛してしまったフラビア姫は、遠く離れたルドルフへの思いを心に秘め、ルリタニア王と愛のない生活を続けていた。
しかし、その生活に耐えきれなくなったフラビアは、一度だけと心に決めてルドルフに愛の手紙を書く。
そして、その手紙はルドルフの手に届く前に、陰謀家達の生き残りであるルパート・ヘンツォ伯爵の手に渡ってしまうのだった。
事の次第を知ったルドルフは、フラビアの窮地を救うために再びルリタニア王国へと向かうのだが…



原作は、イギリスの作家アンソニー・ホープが19世紀末に発表した「ゼンダ城の虜」の続編です。
青春アドベンチャーでは、2008年に前作の「ゼンダ城の虜」がラジオドラマ化されたのに続いて、2010年に本作品「ゼンダ城の虜~完結編~ヘンツォ伯爵」がラジオドラマ化されました。

脚色が変わり、語りも交代

基本的に同一のスタッフで制作されていますが、脚色が棚瀬美幸さんから花房朋香さんに変わっています。
これに伴ってかどうか分かりませんが、前作は主人公ルドルフによる一人称のナレーションであった(当然ナレーターはルドルフ役の蟹江一平さん)のに対して、本作品では専属のナレーター(高橋和也さん)が立てられて三人称でナレーションする形式に変更されています。

主役ペアのキャストは続投

一方、キャストは、主人公ルドルフ(と王様)役の蟹江一平さん、ヒロイン・フラビア女王(結婚したので「姫」から「女王」に変更)役の黒川芽以さんは、当然ながら前作と変更なし。
ルドルフについては、蟹江一平さんが前作と違って語りをしておらず心情が分かりづらいからか、前作より少し暗めの性格になった印象を受けました。
ただ考えてみると、何ら後ろめたいことのなかった前作冒頭のルドルフとは違い、本作開始時点のルドルフはフラビアとの関係に特別な思いをもっているわけで、敢えてそういう風に演じているのかも知れません。
また、フラビア役の黒川さんの演技は、最初は、相変わらずあまり作品世界にフィットしていない印象も受けました。
しかし、聴いているうちに、黒川さんのちょっと堅めの台詞回し自体が、このラジオドラマにおけるフラビアの味なのではないかという気もしてきました。

内田健介さんの荒んだ役

また、今回のラスボス役であるヘンツォ伯爵ことルパート役の内田健介さんも引き続き登場。
例によって「おいしいコーヒーのいれ方」のショーリとは全く違う、荒んだ嫌らしい雰囲気のルパートをいい感じに演じています。
前回の陰謀の原因がミヒャエル大公の野心であり政略的な側面があったのに対して、今回の事件の原因はルパートの個人的な欲望又は怨恨であることが、本作品がよりウェットなストーリーになっている一因だと思います。

頼りにならない仲間たち

さらに、前作から引き続きルドルフの味方となるサプト大佐役の有川博さんとフリッツ伯爵役の住田隆さんの、おじさんコンビも健在です。
本作品の冒頭でフリッツは大失態を演じてしまうのですが、本作品ではフリッツに限らず、今回有力な味方となるベルネンシュタイン(演:増田裕生さん)も大きな失敗をしています。

ルドルフ、困った

また、フラビア女王も勝手に居場所を変えるし、挙げ句の果てには頼りのサプト大佐までルドルフの運命に関する重大な決断を勝手にしてしまい、本作でのルドルフは味方に足を引っ張られている感じです。
そのサプト大佐の行動により(正確にはサプト大佐に限らず味方全員の希望により)、物語の終盤でルドルフは重大な決断を迫られます。
それについてルドルフがどのような選択をするのか。
結末は、ちょっとずるい感じも受けるのですが、まあ、これしかないよな、という結末でもあります。
未聴の方はお楽しみに。

全20話の大作の締めくくり

本作品のストーリーは、構成が分かりやすく素直な冒険物語であった前作品と比較すると、少し複雑でまどろっこしい感じを受けます。
また、ナレーションの高橋和也さん(赤と黒家守綺譚ラジオ・キラー)の声はとても落ち着いていて聴きやすいのですが、個人的には専門のナレーターを多用する構成もあまり好きではありません。
でも、ラスボスとの対決など事件の主要な部分は第9話までで終わり、最後の1話をルドルフの結末だけに使う構成は、合計20回の及ぶこのシリーズの締めくくりとして相応しいものだったと思います。


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