ゼンダ城の虜 原作:アンソニー・ホープ(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : ゼンダ城の虜
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A+
  • 分類 : アクション(海外)
  • 初出 : 2008年3月17日~3月28日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : アンソニー・ホープ
  • 脚色 : 棚瀬美幸
  • 演出 : 江澤俊彦
  • 主演 : 蟹江一平

19世紀末。
イギリス貴族のルドルフ・ラッセンディルは、新国王の戴冠式を見物するために、中央ヨーロッパの小国ルリタニアへと向かった。
実はルドルフには、わずかではあるが、ルリタニア王族の血が流れている。
しかし、今回の訪問は血縁関係とは関係なく純粋な興味によるものである。
ルドルフにしてみれば宮仕え前の最後の自由な一時を楽しむための旅でしかなかったのだ。
だが、ルリタニアに入り、ひょんなキッカケでルリタニアの新王と対面したルドルフは驚倒した。
ルリタニアの新王はルドルフと瓜二つだったのだ。
これにより、単なる観光旅行であったはずのルドルフの旅は、陰謀あり、活劇あり、恋ありの、一大冒険へと一変してしまうのだった。



本作品「ゼンダ城の虜」の原作はイギリスの作家アンソニー・ホープの傑作冒険小説で、19世紀末に出版されたものです。
青春アドベンチャーでは2008年にラジオドラマ化され、2010年には続編の「ヘンツォ伯爵」も同様にラジオドラマ化されました。

ルリタニア・テーマ

物語の舞台となるのは中央ヨーロッパの架空の王国ルリタニア。
この現実と地続きの、でも現実には存在しない架空の王国を舞台とするジャンルの作品は、欧米では「ルリタニア・ロマンス」と呼ばれています。
また、青春アドベンチャーで多くの作品が取り上げられている日本の作家・田中芳樹さんは「ルリタニア・テーマ」とも呼んでいるようです。

カリオストロ?

このジャンルの作品は、例えば上記の田中芳樹さん自らが「アプフェルラント物語」を書いていますし、有名なルパン三世劇場映画第2作「ルパン三世・カリオストロの城」もこの線に沿った作品です。
確かに、「管を通ってお城に入る」、「お姫様を残して去っていく」など似たような要素もあり、ちょっとニヤッとしながら聴いてしまいました。
そういえば、青春アドベンチャーで2012年に放送された葉室麟さん原作の「蜩ノ記」も、豊後にある架空の小藩を舞台としています。
改めて考えると、大上段に「ルリタニア・テーマ」などと構えなくても時代小説では割と良くある設定手法だと思います。

駆け引きとアクション

さて、期せずしてルリタニアの王位継承争いに係わることになってしまったルドルフ。
新王に瓜二つであることから、王の側近であるヘプト大佐とフリッツ伯爵に請われて、王の身代わりを務めることになります。
前半は身代わりになったルドルフを巡って様々な駆け引きが展開されますが、後半はいよいよゼンダ城を舞台にしたアクション!

ヘンツォ伯爵に注目

敵の黒幕は王弟のミヒャエル大公ですが、それ以上に曲者なのはルパートこと、ルパート・ヘンツォ、そう続編のタイトルにはもなっているヘンツォ伯爵その人です。
中盤に登場した時はそれほど重要人物には見えないルパートですが、終盤はかなり物語をかき回してくれます。
具体的にどうなるかは聴いてのお楽しみにしましょう。

蟹江一平さんと黒川芽以さん

出演は、主役のルドルフと国王の二役を俳優の蟹江一平さんが演じています。
青春アドベンチャーでは「なぞタクシーにのって…」や「ベルリンは晴れているか」にも出演されています。
また、ヒロインのフラビア姫は女優の黒川芽以さん。
青春アドベンチャーでは「僕たちの戦争」や「珊瑚の島の夢」にもご出演されており、いずれも主役又はヒロインの役です。
個人的な感想ですが、本作品の少し時代がかった台詞に少し苦戦されているように感じられ、どちらかというと、現代劇である「僕たちの戦争」や「珊瑚の島の夢」の方が生き生きと演じられていた印象があります。

脇役が充実

その他、歌手の岩崎良美さん(アントワネット役)、おいしいコーヒーのいれ方シリーズでファンにはお馴染みの内田健介さん(ルパート役)、青春アドベンチャーの名バイプレーヤーである有川博さん(サプト大佐役)、関貴昭さん(ミヒャエル役)など、充実した出演陣です。
特に内田さんは、おいしいコーヒーのいれ方で演じる純朴な青年ショーリとは全く違った演技で聴き応えがありました。

いまひとつ没入できないのはなぜ?

しかし、全体的に、特に前半は、聴いていてちぐはぐな感じを受けました。
長い物語を無理矢理圧縮しているためか、展開が唐突で、登場人物達の感情表現にも今一つ共感できません。
これに輪をかけているのが、大仰で、やや文語調(又は翻訳調)の台詞。
大変失礼ながら、スタッフもキャストも、この時代がかった展開と台詞にジャストフィットできておらず、少しもてあましているような印象を受けました。
しかし、さすがに終盤はアクション中心のスピーディーな展開であり、楽しく聴くことができる冒険物語になっていると思います。

続編、あります

なお、冒頭に書いたように、本作品は単独で完結したストーリーではありますが、続編もあります。
続編の記事はこちらです。


コメント

タイトルとURLをコピーしました