顔に降りかかる雨 原作:桐野夏生(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : 顔に降りかかる雨
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A
  • 分類 : 推理
  • 初出 : 1997年7月14日~7月25日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 桐野夏生
  • 脚色 : 佐藤久美子
  • 演出 : 江澤俊彦
  • 主演 : 西山水木

親友のノンフェクションライター宇佐川耀子が失踪した。
暴力団の裏金1億円を持って逃げたという。
金の持ち主の上杉という老人に脅された私、村野ミロは、耀子の男・成瀬とともに、1週間以内に消えた1億円と耀子を見つけなければいけなくなってしまった。
上杉に従わなければ何をされるかわからない。
とんでもないことに巻き込まれてしまった。
それにしても耀子はどうして消えたのだろうか。
確かに彼女は浪費家だったし、プライドばかりが高く鼻持ちならないところがあったが、他人の金を盗んで逃げるような人間だとは思えないのだが。



小説家・桐野夏生さんの江戸川乱歩賞を受賞した小説を原作とするラジオドラマです。

乱歩賞受賞作だが

乱歩賞と言えば、推理小説家への登竜門としては、日本で一番、権威のある賞です。
しかし、本ラジオドラマを聴いた感想としては、あまり推理やトリックに重きを置いた作品ではなく、どちらかというと「サスペンス」に近い作品だと感じました。
敢えて言うならハードボイルド系の推理小説でしょうか。
原作を読んでいないので定かではないのですが、ラジオドラマとしての尺の都合上、敢えてストーリーをわかりやすくしている等の事情があるのかも知れません。
とはいうもの、青春アドベンチャーの原作として、日本SF大賞日本ファンタジーノベル大賞といったSF・ファンタジー系の受賞作が多い中、数少ない乱歩章受賞作と言うことに敬意を表し、本ブログでの分類は「推理」としています。
ちなみに本作品の主人公の村野ミロはその後の桐野さんの作品でも主役として再登場しているようです。

うさん臭い人間ばかり

さて、ストーリーに話を移しますと、本作品はミロと成瀬が1億円を探す1週間を描く作品です。
数少ない手がかりを頼りに、色々な人間を訪ね歩きながら耀子を探していきますが、会う人会う人が、すべてどことなくうさんくさい。
最初は普通に見えた人間も何となく何かを隠している風がある。
しかも、ミロや成瀬もそれぞれ暗い過去を抱えていることが明らかになっていきます。
ドイツで耀子が見つけたスクープとは何なのか。
真犯人は本当に耀子なのか、
そもそもこの事件は単なる金の持ち逃げなのか。

数少ないハード路線の作品

どんでん返しというほど意外な結末ではありませんでしたが、ファンタジックな作品が多い青春アドベンチャーの中でハードボイルド風の作品は「あでやかな落日」や「新宿鮫・氷舞」、「レディ・スティンガー」などに限られます。
その中で本作品は、まるで番組がアドベンチャーロードと呼ばれていた1980年代を彷彿とさせる大人向きの作品。
是非、今後もこのような作品を制作して頂きたいものです。
それにしても、耀子って、特別な悪人ではないようですが、あまりつきあっていて楽しいタイプとは思えません。
成瀬は自分を変えてくれる女だと思って耀子とつきあっていたとのことですが、ミロは一体何で彼女と親友づきあいをしていたんでしょうね?

西山水木さん初主演作

最後に出演者のご紹介をします。
本作品の主人公・村野ミロを演じているのは女優の西山水木さんです。
本作品が、青春アドベンチャー初主演作であり、約19年後の2016年「オリガ・モリソヴナの反語法」が2作目の主演作になります。

準主演は安原義人さん

そして本作品で特徴的なのは(主として男性の)脇役陣の濃さ。
ミロと行動をともにする準主役的な位置づけの成瀬は、NHK-FMのラジオドラマではおなじみの安原義人さん。
最後の惑星」、「海賊モア船長の遍歴」、「ラジオ・キラー」など、出演作は1980年代から最近まで長期に及んでいます。
また、藤村役の熊倉一雄さん(「闇の守り人」のトト)と川添役の三谷昇さん(「」のイェルナッツ)のおふたりがそろい踏みというのも怪しさ満点で楽しいところですし、ヤクザ?の上杉老人を演じる昭和の名脇役・庄司永建さんも味わい深い。

端役まで抜かりなし

その他、「ドラえもん」のジャイアンの母や「めぞん一刻」の一の瀬のおばさんで有名な青木和代さんや、神経質な美形をやらせたら天下一品だった塩沢兼人さん(「オルガニスト」や「タイムリーパー」では主演)が、さして出番が多くない役で出演していたりするのも、NHKらしいところではあります。

TVドラマ版

ちなみに、この「顔に降りかかる雨」は1994年にフジテレビでTVドラマ化もされているようです。
その時の配役は役所広司さんと鶴田真由さん。
こちらもいいですが、個人的には本ラジオドラマ版もなかなかだと思います。

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