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さらばアフリカの女王 原作:森詠(アドベンチャーロード)

  • 作品 : さらばアフリカの女王
  • 番組 : アドベンチャーロード
  • 格付 : A
  • 分類 : アクション(海外)
  • 初出 : 1987年8月31日~9 月11日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 森詠
  • 脚色 : 四十物光男
  • 演出 : 峯岸透
  • 主演 : 磯部勉

俺の名前は北一馬(きた・かずま)。
共同経営者のヘンリーともにアフリカ中の空を飛び回っている運び屋だ。
愛機は1945年製ダグラスDC「キャサリン」。
ちょっとばかり年増だが俺に取ってはかけがえのないフィアンセだ。
そんな「ヘンリー&キタ・エアカーゴ」に新しい依頼が舞い込んだ。
今回の仕事は血清を作るための特別な血液を南アフリカ・レソトからカサブランカまで空輸するというもの。
しかし、キャサリンに離陸前にエンジントラブルが見つかり出発時刻に飛び立てるか怪しくなってしまった。
今回の仕事が何万人もの命を救うものだと聞いたヘンリーは急遽、俺の代役として愛機「マリリン」とともに飛び立ったのだが、途中、ミサイルに追尾されているという驚愕の連絡と共に消息を絶ってしまう。
これは多くの人の命を救う重要だが平和な仕事だったのではないのか!?
俺は恩人でもあった相棒を失った怒りをもってドナルド・シンプソンなる依頼者を探し始めるのだが…



アドベンチャーロード「さらばアフリカの女王」は、軍事小説、スパイ小説等の書き手である森詠さんの同名の小説をラジオドラマ化した作品です。

アドベンチャーな原作者

番組名のとおり冒険小説を原作とすることが多かったアドベンチャーロード及びFMアドベンチャーにおいて森詠さんは、本作品、「さらばザンメル」(1985年)、「真夜中の東側/ミッドナイト・ジミー」・「真夜中の東側/サマータイム」(1986年)と4作品(原作ベースで3作品)もラジオドラマ化されています。
ちなみに原作では最も発表が早いのは「さらばアフリカの女王」(1979年)で、最も遅いのが「さらばザンメル」(1985年)なので、原作小説の刊行順とは真逆の順序でラジオドラマ化されたことになります。

ザ・アドベンチャーロード

さて、本作品の主人公、北一馬は自衛隊出身のパイロットですが、今はアフリカで気ままな運び屋稼業をしています。
その彼が「アフリカの女王」と名づけられた巨大なダイヤモンドを巡る国際的な謀略に巻き込まれ、陸に空にと冒険旅行をするのが本作です。
ただ実は運ぶものは「アフリカの女王」ではなく、ローデシア(現:ジンバブエ)の革命運動に絡む重要人物ニキタ将軍。
「任務で人を運ぶ」という意味では同じアドベンチャーロード時代の「A-10奪還チーム出動せよ」、この記事をアップする2023年の青春アドベンチャーでいえば「深夜プラス1」などが近い作品です。
また、自動車での冒険旅という意味では「遥かなる虎跡」、運び屋という面では「銀河番外地 運び屋サム」なども近いかな。
こうしてみると類似作はアドベンチャーロード時代に多く、本作品は典型的なアドベンチャーロードの作品です。

単なる「運び」の仕事ではない

ただ、「A-10奪還チーム出動せよ」や「深夜プラス1」と違うのは、運ぶ人物を確保するところから自分たちでやらないといけないところ。
北は「俺の専門外だから同行するプロコマンドたちがやればいい」とぼやいていましたが、SIS(イギリスの情報機関)の依頼であるにも関わらず、刑務所を襲撃してニキタ将軍を確保するところから自分たちでやらないといけないというハード仕様。
まさにコテコテの冒険小説です。

北と愉快な仲間たち

そしてこのプロコマンド3人(実は全然本職の特殊部隊員ではない…)が個性的なのが本作品の良い所。
元死刑囚の寡黙な「切り裂きシェラー」(演:堀勝之助さん)、IRAのテロリスト「発破のトーマス」(演:小野武彦さん)、パレスチナゲリラのフィアンセ・ウェンディ(演:あべ静江さん)。
殺人マニアと爆弾マニアと謎の女性の3人に、SISのピエール(演:安原義人さん)と北、そして北の愛犬ナビを加えた5人と1匹がチームとして行動することになります。

気軽に聴ける冒険もの

主演の磯部勉さんのほか、堀勝之助さん、安原義人さんと洋画吹き替え色の濃い面々はまさにアドベンチャー向き。
そしてこれに名わき役として有名な小野武彦さん(三谷幸喜作品や「踊る大捜査線」のスリーアミーゴス)や歌手としても人気で紅白歌合戦にも出ている往年の名女優・あべ静江さんも出演しているというなかなかの出演陣です。
ストーリー面では若干、行き当たりばったりというかご都合主義の面はあり、本当のハードボイルド物が持つヒリヒリ感はありません(この辺は原作とは違うのかもしれません)。
また、主人公・北のモノローグが多く彼の心情がわかり過ぎるのもハードな冒険ものとしてはいまいちの感があります。
ただまあ冒険ものですのでその辺は大らかに受け取れば楽しく聴くことができる作品だと思います。

峯岸さん最後の演出作品

本作品を演出されたのは峯岸透さん。
FMアドベンチャーからアドベンチャーロード中期に「101便着艦せよ」、「魔の視聴率」、「山猫の夏」などの良作をいくつも手がけていますが、本作品はこの系列の番組で峯岸さんが演出された最後の作品だと思います。
峯岸さんの演出作品では個人的には1987年の「盗まれた空母」の音源を持っていないので是非お持ちの方がいればお聞かせいただきたいのですが、実はそれ以前に本「さらばアフリカの女王」についても第5回・第6回の音源が手元にありません。
改めて聞いても2日分がないと、かなりストーリーが飛んでしまっています。
是非どこかで聴けたらと思うのですが…。




Hirokazu

オーディオドラマの世界へようこそ!

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