星へ帰るために宇宙船を探す旅に出たマスクリン、ガーダー、アンガロの3人のノームとAIのシング。
ところが、ようやくたどり着いた空港では期待していたような宇宙船との通信はできないことがわかった。
落ち込む3人だが、偶然にニュースを聞いたシングがノームたちの運命を大きく変える提案を始めた。
フロリダで打ち上げられる通信衛星。
その機器さえあれば宇宙船に連絡をすることができるかもしれない。
しかし、イギリスからフロリダのケネディ宇宙センターまでどうやって行けばいいんだ?
イギリスの作家テリー・プラチェットの小説(童話?)を原作とする3部作のラジオドラマ「遠い星からきたノーム」の紹介も、いよいよ最後の「ウイングス」の回を迎えました。
ここまでトラックで旅をし(トラッカーズ)、パワーショベルで住みかを守ってきた(ディガーズ)ノームたちが、いよいよ翼(ウイングス)を得て最後の冒険に臨みます。
主人公は前作ディガーズでは出番の少なかったマスクリン(演:小松正一さん)、ガーダー(演:亀山助清さん)、アンガロ(演:冬馬由美さん)の3人。
この3人に元宇宙船のコンピューター(今風に言えばAI)のシング(演:来宮良子さん)を加えた4人(?)がかつてない長距離を移動して冒険をします。
新しいノームの集団との出会い、ストアノームにとっての神「アーノルド・ブロス(1905年創業)」と縁のある人間との奇妙な出会いを経て、マスクリンたちがついに到達した結論とは!
まあ、それほど意外な結末という訳ではないですし、放送時間も60分(多分。このあたりの放送時間の不明確さは「ディガーズ」の記事をご参照ください)と「トラッカーズ」の半分に過ぎないのですが、その分スピード感のある展開になっています。
何より随分と成長したマスクリンが頼もしい。
トラッカーズでは気弱な一青年でしかなかった彼は、最終盤では随分と決断力や行動力のあるリーダーになっています。
どこか頼りなかった相棒のガーダーも最後には彼一人で彼らしいを決断をしており、なかなか好印象です。
また、本シリーズでは人間は存在するだけ、ないし悪役の扱いでしたが、本作品では初めてノームたちに協力する人間、リチャードが登場します。
これを演じているのが俳優の上條恒彦さんなのですが、これが実にいい声、いい雰囲気。
こういうところにこういう渋い俳優さんを持ってくるのがNHKらしいところです。
その他の出演者についていうと、1992年スタートの「美少女戦士セーラームーン」の水野亜美役で人気アイドル声優になりつつあった久川綾さんがひっそりと端役で出演されていたりもします。
久川さんのNHK-FM出演作は、本作品と「イカロスの誕生日」くらいしか思い出せません。
さて、本作品、素朴でのどかな天上昇さん(アドベンチャーロードの怪人20面相シリーズなど)の音楽ということもあり、雰囲気はどこまでも牧歌的。
内容的にも、原作本を見るとちょっと難しい漢字にはルビが振ってある程度の若年層向き。
全般的にパロディや風刺が込められているといってもあくまでライトなものであり、深い思索につながるようなものではないのですが、気持ちの良いラストを聞いているとこれはこれとして良いのではないかと思える作品でした。