- 作品 : ディス・イズ・ザ・デイ
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B+
- 分類 : スポーツ
- 初出 : 2019年7月1日~7月5日
- 回数 : 全5回(各回15分)
- 原作 : 津村記久子
- 脚色 : 鈴木絵麻ほか(詳細下表)
- 演出 : 真銅健嗣
- 主演 : 窪塚俊介ほか(詳細下表)
日本サッカー2部リーグ、最終節。
全国5会場で繰り広げられる熱戦の陰でサポーターたちの様々な人間ドラマが繰り広げられていた。
お気に入りのチームにはもちろん勝って欲しい。
でもそれだけではない。
スタジアムに集う理由はさまざまだ。
本作品「ディス・イズ・ザ・デイ」は、2017年に「エヴリシング・フロウズ」が青春アドベンチャーで取りあげられた津村記久子さんによる同名の小説をラジオドラマ化した作品です(注:2021年には「浮遊霊ブラジル」もラジオドラマ化されました)。
原作小説の「ディス・イズ・ザ・デイ」は全11話で構成されるオムニバス作品です。
これは2部リーグに所属する架空の22チームの最終節、11試合すべてをドラマ化していることになりますが、本作品はこのうち5試合10チーム分をラジオドラマ化したものです。
サポーターが主人公
さて、青春アドベンチャーでラジオドラマ化した作品の中にスポーツものはあまり多くありません。
直近では2016年の「七帝柔道記」や2013年の「1985年のクラッシュ・ギャルズ」あたりで、サッカー関係というと1993年の「武蔵野蹴球団」くらいでしょうか。
それらの中でも(当たり前ですが)通常は選手が主人公の作品ばかりで、それ以外の作品というと、オートバイレースチームのオーナーを主人公にした「夏・風・ライダー」(1985年、当時の番組名は「アドベンチャーロード」でした)くらいしか思いつきません。
しかし、本作品における主人公はサポーター。
オーナー以上に競技者からは遠い存在です。
あくまで人間ドラマが主
また、実際、ストーリーを聴いていても選手にスポットライトが当たることは全くなく(選手に配役が付いていない回も多い)、あくまでサポーター自身の人間ドラマが展開されます。
何より「スポーツもの」っぽくなく感じられるのは「勝負」に拘るような展開がないこと。
もちろん主人公のサポーターたちはその場その場でひいきのチームに勝ってほしいとは思っているのですが、正直なところ勝っても負けてもどっちでもストーリー上は問題ないような展開ばかりです。
やはりスポーツは勝ち負けにこだわって欲しい…
その意味で本作品の本質はあくまで「人情もの」なのですが、どの回もクライマックスの舞台が最終節の試合になるという仕掛けがされていますし、サポーターは13人目の選手ともいうようですので、本ブログにおいては一応「スポーツ」にジャンル分けさせていただきました。
各回の概要
さて、本作品の各回のタイトル、脚色した脚本家さん、主演の役者さん、登場チーム(すべて架空)、概ねのストーリーを一覧にすると以下のとおりです。
基本的に、そのシーズンの終わりである最終節の試合と、何らかの人生上の課題を抱えていた主人公(サポーター)の人生の再出発を重ね合わせる展開がテンプレです。
回 | タイトル | 脚本家 | 主演 | 登場チーム |
---|---|---|---|---|
ストーリー | ||||
1 | 篠村兄弟の恩寵 | 鈴木絵麻 | 藤山扇治郎 | 奈良FC / 伊勢志摩ユナイテッド |
母が他界したのは弟が9歳の時。それ以来兄弟をつないできたのは奈良FCだった。あの選手が移籍するまでは。 | ||||
2 | 眼鏡の町の漂着 | 入山さと子 | 鬼頭典子 | 鯖江アゼリアSC / 倉敷FC |
初めてのサッカー観戦。しかし彼はスタジアムに現れなかった。のみならず彼とはそのまま音信不通に。納得できない彼女はスタジアムに通い詰めるが。 | ||||
3 | 龍宮の友達 | 葉月けめこ | 野々村のん | 白馬FC / 熱海竜宮クラブ |
夫の浮気と娘の不登校に悩む主婦。死別した夫の秘密に気付いた女。ふたりの女性の新しい人生の出発地点は最終節のスタジアム。 | ||||
4 | 権現様の弟、旅に出る | 葉月けめこ | 窪塚俊介 | 遠野FC / 姫路FC |
「権現様」は地元・遠野に伝わる獅子舞の一種。職場でうだつが上がらない男だが、サッカーの試合前のイベントで権現様を演じて以来少しづつ変わり始める。 | ||||
5 | おばあちゃんの好きな選手 | 鈴木絵麻 | 新納だい | 松江04 / 松戸アデランテロ |
父が出て行って以来、疎遠になった父方の親族。久しぶりに会った祖母は地元のサッカーチームを応援しているらしいのだが。 |
なお、ラジオドラマ化されなかったのは「三鷹を取り戻す」、「若松家ダービー」、「えりちゃんの復活」、「また夜が明けるまで」、「唱和する芝生」、「海が輝いている」の6話。
単行本ではこれに加えてエピローグ「昇格プレーオフ」も収録されているそうです。
回ごとに異なる出演者
最後に出演者についてですが、上記のとおり5話とも主演の俳優さんが異なります。
主演のみならず助演の方々もほとんど被っておらず、15分×5回の枠のラジオドラマとしてはかなり多くの方が出演されています。
この中で第4回に主演された窪塚俊介さん(「金魚姫」にも主演)だけは第2回にも重要な役で出演されていますので、一応、この記事の冒頭では代表してお名前を書かせていただきました。
その他の役では、第5回で「おばあちゃん」を演じた白石加代子さんが印象的。
前月の2019年6月にはFMシアターの「ドライビング・レコード」にも出演されていますが、「逢沢りく」や「どこかで家族」など印象的なおばあちゃん役が多いですね。
本作品が2020年5月5日に放送された「一日で聴く青春アドベンチャー」で一挙再放送されました。
詳しくはこちらをご覧ください。
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