SとF 作:イトウシンタロウ(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : SとF
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A+
  • 分類 : 幻想(日本/ライト)
  • 初出 : 2024年11月18日~11月29日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : イトウシンタロウ
  • 演出 : 松浦禎久
  • 主演 : 松本怜生

高校1年生の僕、藤本聡は恋をした。
同じSF研究部の先輩、鈴宮富美加さんに近寄っただけで、胸は高鳴り頬は上気する。世界の見え方が変わったんだ。
これが恋でなくてなんだというのだ。
「いや、違うよ。」
でも富美加先輩はそう言った。
「君が今、私に対している気持ちは恋愛感情ではないと思う。」
そして確かに僕の周りの世界も変わったのだけど、それは思っていたのとは少し違ったんだ。


本作品「SとF」は劇団「NICE STALKER」主宰で劇作家・演出家のイトウシンタロウさんによるオリジナル脚本のオーディオドラマで、2024年11月にNHK-FMの青春アドベンチャーで放送されています。
ちなみに以下のポストによるとイトウさんはもともと番組のファンだったそうです。
嬉しいだろうな。

SF?

さて、本作品はタイトル「SとF」のとおりSFをひとつのテーマにした作品ではあります。
実際、世界シミュレーション仮説やフェレンゲンシュターデン現象のようなSF的な用語も登場するのですが、話は早々に怪異を中心としたものに変貌。
そのため上記に記載したジャンルでは「幻想」(ファンタジー)としたのですが…
実は第7回以降の「解決篇」にて真のジャンル区分に直接影響する、ある事項が判明するのです。
それによってわかる真のジャンルはこちらのとおりなのですが、ネタバレになるのでクリックは自己責任にてお願いいたします。

ジャンルは問題じゃない?

ただ作中の言葉を借りるのであれば、幽霊ですら研究対象とするのがSFであるならば、こまかいジャンルはどうでもよいのかもしれません。
というか、実際に前半を聞いていると聡と富美加の少しかみ合わない関係を中心とした青春恋愛ものにも思えますし、前半最後に謎の高校生が登場して以降は霊能バトルものの趣もあります。
それよりなにより、全体に漂う涼宮ハルヒ感というか(初期の)押井守感というか笹本祐一感というか。
ライトノベル風あるいはジュブナイル風の閉じた優しい世界観が心地よい作品です。

エンディングの気持ちよさ

ただ心地よさのあまり過程の退屈さも感じられるので、それほどの格付けはつけられないかなと思って聞いていたのですが最終回を聴いて少し印象が変わりました。
このエンディングの気持ちよさはなかなか出色の出来だと思います。
思えば直前の「四日間家族」が途中経過はスリリングだったのに結末が拍子抜けだったのと好対照。
「四日間家族」の全体的なシリアス感と比較しての本作品のほのぼの感とあわせて好対照な両作品だと思いました。

主演はF・SさんとS・Fさん

さて本作の主役、藤本聡(Fujimoto Satoshi=FとS)を演じるのは俳優の松本玲生き(まつもと・れお)さん。
またヒロインの鈴宮富美加(Suzumiya Fumika=SとF)を演じるのは女優の池間夏海さん(いけま・なつみ)さん。
松本さんは今放送中の朝ドラ「おむすび」に、池間さんは2019年上期の「なつぞら」、
2022年上期の「ちむどんどん」などの朝ドラに出演済みの売り出し中の若手コンビです。

山崎和佳奈さんの存在感

ただ彼らと同様の存在感を発揮しているのが聡の「妹」役の山崎和佳奈さん。
「名探偵コナン」の毛利蘭役などで知られる声優さんで、実は聡役の松本さんより圧倒的に年上(1965年生まれ)なのですが、そこは声優さんの腕の見せどころ。
本作品、「妹」のモノローグの形式をとったナレーションがかなり多い脚本で、しかもこのナレーションがメタフィクション的な発言をすることもあって作品の流れに大きな影響を与えています。
そうした中、山崎さんのふんわりとした声が作品全体の優しい雰囲気を形作っているように思います。
是非みなさんに聞いて頂きたいナレーションです。

SHOGUN

出演者では他にも「河童の記憶」が懐かしい大手忍さんや、ハリウッド制作の人気ドラマ「SHOGUN 将軍」への出演でも有名な祁答院雄貴さん(「当面の間、変身します」にも出演経験あり)なども、ちょっと浮世離れしたこの作品によくあった演技だと思います。

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