
アナスタシア・シンドローム 原作:メアリ・H・クラーク(青春アドベンチャー)
「アナスタシア症候群(シンドローム)」とは、ロシア革命のさなかに謀殺されたロシア皇女アナスタシアが、現代の人間に憑依し人格を乗っ取ったとされた現象である。アナスタシアシンドロームの提唱者である精神科医のパテール博士は、軽い薬と催眠術で、患者の過去だけではなく前世をも探ることが出来ると発表し、世間から多くの賞賛と、同じくらい多くの非難を得た。ロンドンに滞在する歴史小説家のジュディス・チェースは幸せの絶頂にあった。仕事では美貌の女流作家という名声を手にし、プライベートでは内務大臣スティーブン・ハレットから求婚されたのだ。しかし、戦災孤児であるジュディスには、自分の出生を知りたいという昔からの悩みがあった。しかも、最近になって頻繁に、養女になる前の断片的な記憶が蘇るようになった。大きな爆発音、そして、幼い女の子の泣き声…我慢できなくなったジュディスは、パテール博士のもとを訪れ、催眠療法により過去の記憶を探ろうとする。しかし、それこそがジュディスの身に不思議な記憶喪失現象が起きる始まりだったのだ。