夜哭烏 羽州ぼろ鳶組 原作:今村翔吾(青春アドベンチャー)

格付:AAA
  • 作品 : 夜哭烏 羽州ぼろ鳶組
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : AAA-
  • 分類 : 歴史時代(日本)
  • 初出 : 2019年9月16日~9月27日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 今村翔吾
  • 脚色 : 丸尾聡
  • 演出 : 真銅健嗣
  • 主演 : 筧利夫

どうなっているんだ。また太鼓が鳴らない。
定火消が太鼓を打たないと、町火消は半鐘を鳴らすことができない。それが天下の定法。
だから、最寄りの定火消・諏訪主殿頭さまが太鼓を鳴らさないとまともな消火活動はできやしない。
しかし火は勢いを増している。一刻も早く消火を始めないと大変なことになってしまう。
どうしたらいい? お頭不在の新庄藩・火消組に今、何ができる? 何が…
「なにを遊んでやがる!」
お頭!いつ戻られたので!?心細かったんですよ、すぐに指示を!われわれは今、何をすればいいのですか?
「諏訪主殿頭どのは寝過ごしたらしい。」
え?
「新庄藩火消、起床の介添えを致す。」
え?え?
「構わねえから、門をぶっ壊せ!」


お待たせ!「ぼろ鳶組」第2弾です

当ブログで実施した「2018年青春アドベンチャーリスナー人気投票」第5位(男性票のみだと第2位)に輝いた「火喰鳥(ひくいどり) 羽州ぼろ鳶組」の続編がやってきました。
その名も「夜哭烏(よなきがらす) 羽州ぼろ鳶組」。
主役はもちろん前作と同じ「方角火消櫻田組(ほうがくびけし・さくらだぐみ)新庄藩火消組」の頭取・松永源吾。
演じるのはもちろん筧利夫さん。
その他のぼろ鳶組の愉快な面々 - 怪力無双の元力士・荒神山寅次郎(演:朝倉伸二さん)、現役軽業師でもあり江戸三大纏持ちと呼ばれることになる彦弥(演:津田英佑さん)、ぼろ鳶組の頭脳でオランダ人とのクォーターである加持星十郎(大沢健さん)、一見無気力青年だが実は江戸屈指の剣客でもある次席指揮官・鳥越新之助(小山貴司さん) - も引き続き登場。
その他のキャスト含め、全員続投というのが素晴らしい。

今回は加賀鳶だ

特に、加賀鳶の大頭(おおがしら)で「八咫烏」(やたがらす)の異名を取る大音勘九郎(演:前田一世さん)とか、幕府の重鎮で主人公側のフィクサーとなる田沼意次(演:陰山泰さん)とか、第1作「火喰鳥」できちんと顔出しを済ませているものの主な出番がこの「夜哭烏」以降になるキャストがちゃんと続投しているのが嬉しいですね。
そうそう、この作品の主人公は言うまでも無く松永源吾なのですが、陰の主役は作品名「夜哭烏」が示すとおり八咫烏・大音勘九郎なのです。
江戸最強の火消集団「加賀鳶」を率い、「火消の王」とも称される大音勘九郎を襲う卑劣な罠。
相継ぐ不審火の陰で暗躍する「ある大物」と田沼意次の政争が激化する中、陰謀に巻き込まれ動きを封じられる江戸の火消たち。
そんな中、只々、人を救うことを願う源吾とぼろ鳶組の取った手段とは?

火消しミステリー

…これ以上は聴いての(読んでの)お楽しみなのですが、ひとつだけ内容を紹介してしまうと、今回のキーはやはり「火消の太鼓」。
武家火消(正確には定火消)が太鼓を鳴らしてからしか、町火消は半鐘を鳴らせないというのは史実のようですが、これを今回のミステリーの核心に取り込んでいるだけではなく、源吾の過去とも結びつけています。
この源吾の過去については原作ではすでに第1作「火喰鳥」で一部語られているのですが、ラジオドラマ版ではバッサリとカットされていました。
そのため、この第2弾「夜哭烏」では第3話丸々1回15分(+第4回の冒頭)をいわば「過去編」にして、そこで一気にリカバーしています。

ちょっとした弱点

ただ、この措置は、第1作の不備を解消するという意味では良いのですが、本作が全般的にミステリー色が強いことと相まって、前作「火喰鳥」より、ややスピード感を失わせるという副作用をも生じさせているように感じます。
前作にあった個性的な人材が徐々に集結していく「七人の侍」的な展開もありませんしね。
また、犯行の背景に前作のように深い思いがなく、雲上人の身勝手な政略に振り回されているだけというのもちょっと物足りない。
今後もあるのでここで黒幕が捕まってしまう訳にはいかないのですが、ミステリーチックな割には主犯探しが野放しのまま終わるというはいかがなものか。
以上から、正直、前作よりは少しだけ劣るかな、とも思います。
が、やはり火事場は熱い!
そしてエンディングは爽やか。
本作は本作で楽しく聴ける作品に仕上がっています。
まあ、私が父娘ものに弱いというのもあるのですけどね。

ぼろ鳶組全員集合

さて、本作品の出演者はすでに上記でご紹介済みですが、このキャストの何が良いって、皆さんそれぞれ声が個性的で聞き間違えようがないところ。
そして上記に挙げたメンバー以外にも、ぼろ鳶組のラストピース、後のぼろ鳶組・切り込み隊長○○も登場します。
これでぼろ鳶組の幹部は全員集合。
これは続編を期待するしかないでしょう。

これはもう続編必須

第3作は「九紋龍(くもんりゅう)」。
寅次郎のように薙ぎ倒し、彦弥のように宙を舞う、個人能力では最強の町火消「に組」の組頭・辰一が登場のはず…なのですが、どうなりますことやら。
実は本作中でもちゃんと「九紋龍」につながるように「に組」の説明もいれている。
これはやるしかないでしょう、脚色の丸尾聡さん・演出の真銅健嗣さん!
このペアで制作した「守り人シリーズ」が第2作「闇の守り人」で止まってしまっているのが気になるところですが、すでに原作者の今村翔吾さん(本作第1話の第1声は今村さんご自身のカメオ出演らしい)のOKも出ているみたいですよ(補足2)。


(補足)
本作品は、当ブログが年末に実施した2019年のリスナー人気投票で第3位の得票を得ました。
本作品のほかに人気だった作品にご関心のある方は別記事をご参照ください。


(補足2)
2020年9月本シリーズのラジオドラマ化第3弾「鬼煙管」の放送が発表されました。
これは嬉しい!
でも「九紋龍」は?


(補足3)
原作者の今村翔吾さんが2022年1月「塞王の盾」にて第166回直木賞を受賞されました。


■ぼろ鳶組シリーズ一覧
松永源吾とぼろ鳶組は今日も火事と戦う、ただ江戸の街を守り、人々の命を救うために。

  1. 火喰鳥 羽州ぼろ鳶組
  2. 夜哭烏 羽州ぼろ鳶組(本作品)
  3. 鬼煙管 羽州ぼろ鳶組
  4. 菩薩花 羽州ぼろ鳶組
  5. 夢胡蝶~羽州ぼろ鳶組
  6. 玉麒麟 羽州ぼろ鳶組
  7. 襲大鳳 羽州ぼろ鳶組
  8. お互いの呼び方で解説する新庄藩火消組
  9. 通称・異称で紹介する江戸の火消たち
  10. オーディオドラマ化から漏れた作品を補完する

最後の2つは途中からシリーズをお聞きになる皆様に向けて整理したものです。
作品聴取にあたっての予習・復習にご利用頂きたいのですが、この夜哭烏あたりだとネタバレの要素があることにはご注意ください。


■約260年に及ぶ江戸時代。
当ブログで紹介した江戸時代を舞台にした作品が、細かく見るとどの時代設定を背景としているのか?
この作品とこの作品はどちらが先?
実は同時期を描いている意外な作品とは?
詳しくはこちらをご覧ください。



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