- 作品 : うつくしい靴
- 番組 : 特集オーディオドラマ
- 格付 : AAA-
- 分類 : 職業
- 初出 : 2024年12月21日
- 回数 : 全1回(60分)
- 作 : 本山航大
- 音楽 : 森優太
- 演出 : 田島薫
- 主演 : 滝藤賢一
どこかおかしいところがあるわけではない。
あえていえばスニーカーにしてはタイトであることくらいか。
しかしどうしても本物であるという確信が持てない。
本物と断言できないのであれば店頭に並べるわけにはいかない。スニーカー専門店として信用にかかわる。
そして店頭に出せないものを買い取ることはできない。なにせこれが本物のワッツだとしたら数百万円の値が付くものなのだ。
しかし私はスニーカーヘッズ(マニア)私だ。簡単に諦めることもできない。
なにせワッツを手に入れられるチャンスなんて滅多にないのだ。
そして目の前にあるスニーカーは確かに美しい。そう革靴のような気品が漂っている。
仕方がない。かくなる上はこうするしかないだろう…
本作品「うつくしい靴」はNHK-FMが制作したオーディオドラマで、2024年の年末に放送されました。
放送された時間帯は毎週FMシアターが放送されている時間帯(土曜日22時~)ですが、通常のFMシアターより10分長い60分で作られた作品で「特集オーディオドラマ」と銘打たれています(2024年の特集オーディオドラマの新作はこれ1本だけ)。
正直、気に入りました
さて正直なところ久しぶりにFMシアター系列で気に入った作品に出合ったというのが第一印象。
脚本良し、効果演出良し、そして何より演技よしと、3拍子がそろった作品。
ストレートな「仕事とは」
まずテーマがいい。
「良い仕事ともうかる仕事」というありきたりなものではありますが、言い換えれば普遍的ともいえるこのテーマをスニーカーという興味深い世界を舞台に描いている。
日常遣いのイメージが強いスニーカーであってもプロはプライドを持って仕事をしている。
主人公のスニーカーショップ店主の柊大和と、靴職人の冬月歩稀(ほまれ)とのスリリングな会話が、最初から最後まで敬語を崩さずに繰り広げられるのが素晴らしい。
音楽や音響効果もこのシンプルな作品の雰囲気を壊さずに寄り添っている。
そして演技がよい
そしてなにより主人公二人を演じる滝藤賢一さんと東野絢香さんの演技がよい。
滝藤さんは無名塾出身の俳優さんで「クライマーズ・ハイ」や「半沢直樹」で評判が良いのは知っていましたが、個人的にじっくりとみたのは大河ドラマ「麒麟がくる」(足利義昭役)くらいだったので、評価は保留していました。
しかも公式ホームページによれば滝藤さん、オーディオドラマは初めてとのこと。
確かに綺麗な声とは言えませんが、少しかすれた声に個性があり、オーディオドラマ向き。
そして詠うような抑揚に感情が乗っており聞いていて心に残ります。
ついでですが滝本さんは私服の着こなしでも有名ですので、それを踏まえたキャスティングと考えるとなかなか凝っています。
そして公式HPで「ダブル主演」と表現されている東野さんの、触れれば切れるような感情表現も素敵です。
こちらも引き込まれました。
(↓外部リンク)

聴取時の個人的な心境に左右される
ただ客観的にみて、2022年の「はるかぜ、氷を解く」のほど完全に推せる作品かは判断が難しいところです。
というのも本作品を聞いたタイミングがちょうど私自身が仕事でいろいろ思うところあった時期でして…
そういった個人的な視聴状況が作品の評価へ影響を与えてしまっているのは偽らざるところなので、本来は少し頭を冷やし距離を置いてから評価すべきなのかもしれません。
ただ、両者を切り離すことは所詮無理だと思い、そのままの印象で記事を書きました。
いつもながらではありますが、あくまで私の個人的な評価ということでご理解下さい。
モデルのモデルはあるのかな
ところでこの作品出てくる伝説のスニーカー「ワッツ」ってモデルはあるのでしょうか。
NIKEに”WHAT THE”(ワット・ザ)というモデルがあり、同じシリーズのモデルで使われている全色を使ったひとつのモデルに盛り込んだものらしいので、これかな?と思いましたが、別に販売中止にはなっていないみたいです。
この辺はもしお詳しい方がいらっしゃいましたらご教示下さい。
本作品は当ブログで実施した2024年リスナーアンケートのFMシアター・作品編で第4位の得票を得ました。
リスナーの感想等は以下をご覧ください。

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