あたふたオペラ「からめん」 作:萩田頌豊与(青春アドベンチャー)

格付:AA
  • 作品 : あたふたオペラ「からめん」
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : AA-
  • 分類 : コメディ
  • 初出 : 2022年8月1日~8月5日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 作  : 萩田頌豊与
  • 演出 : 藤﨑謙
  • 主演 : 又吉秀樹

巡査の保瀬(ほせ)は最近、人の声が歌になって聞こえるようになった。
感情が高ぶった話し相手がオペラを歌い出すように見えるのだ。
診察した毛利医師は保瀬の症状を「突発性歌劇幻聴症候群」と断言。
この病気に「あたふたオペラ症候群」というふざけた通称を付け、悪のりしつつ治療に乗り出した。
毎日診察室で毛利医師に経過を報告する保瀬。
どうやら保瀬は辛麺(からめん)という辛いラーメンを巡る騒動に巻き込まれているようなのだが、この騒動は「あたふたオペラ症候群」の発症と関係あるのだろうか。




ダメだ!これは私では紹介文を書けない!
これが本作品『あたふたオペラ「からめん」』を聞いた最初の印象です。

原作は歌劇「カルメン」?

“からめん”とは辛麺、すなわち辛いラーメンのことなのですが、いうまでもなくこれは歌劇「カルメン」に掛けています。
実際、本作品の「作曲」はジョルジョ・ビゼーとされており、つまり使われている曲はすべて歌劇「カルメン」の曲ばかり。
つまり作品全体が、出演者が突然歌い出すオペラ調の作品で、歌はカルメンの替え歌なのです。
替え歌は元ネタを知らないとやはり本当には楽しめない。
こういう時は自分の教養のなさが恨めしい…
というか、こういうものは作り手側が解説してくれないと!…と理不尽に憤っていたのですが…

詳しい解説付き

あるじゃないですか、公式の解説が!
ただこのサイト、詳しすぎる。
ドラマを聞いてから読んだ方が良いかも知れません。
まあ本作はコメディなのでストーリーにさしたる意味はないのですが。

(外部サイト)

  1. 『あたふたオペラ「からめん」』第1回 楽曲解説
  2. 『あたふたオペラ「からめん」』第2回 楽曲解説
  3. 『あたふたオペラ「からめん」』第3回 楽曲解説
  4. 『あたふたオペラ「からめん」』第4回 楽曲解説
  5. 『あたふたオペラ「からめん」』最終回 楽曲解説

定評ある歌い手が歌わない

さて、いきなりの役割放棄&外部サイトへの誘導から始まってしまったこの記事ですが、折角ですので少しだけ紹介を。
最近の青春アドベンチャーではミュージカル俳優や宝塚歌劇団出身の女優を多用しています。
しかし井上芳雄さん中川晃教さん、加藤和樹さん、あるいは花聰まりさんが劇中で歌うことはほとんどなく(海宝直人さん真彩希帆さんはわずかにある)、リスナーを不思議がらせてきました。

歌った作品もあるが

歌が多かった作品としては「走れ歌鉄!」がありますが歌うのは子役中心。
有名なミュージカル俳優の歌唱例としては、わずかに「時めがね金沢うた絵巻」と「輪廻転Payうた絵巻」で内藤大希さん、原田優一さん、音月桂さんくらい。
音楽をテーマとした作品が少ない青春アドベンチャー
一度ちゃんとしたミュージカル作品を聞きたいとの声はアンケートでも良く聞かれるのですが…

満を持して登場!

ついにでました、メインキャストが声楽家(オペラ歌手)で、作品の半分以上の時間が歌の作品が!
…ただ、まさかのコメディ!
主演の又吉秀樹さんもヒロインの金子美香さんや鵜木絵里さんも二期会所属のバリバリの現役オペラ歌手。
経歴を見ても、東京藝大声楽科卒業とか、東京音大首席卒業とか、多くの国際的なコンクールで入賞していたりとか…すごい。
それに加えて東京藝大声楽科卒業でミュージカル俳優として「レ・ミゼラブル」のアンジェルラスやジャベール役を歴任した上原理央さんや、日本で(世界で?)唯一のミュージカル落語家・三遊亭究斗さんや、R&Bのクラブシンガーの経験のある漫談家の街裏ぴんくさんまでご出演。
でも、コメディ。有り体に言うと替え歌。

ほぼ駄洒落

替え歌というのはつまりはだじゃれなわけですが、とにかく作品全般がだじゃれの嵐。
そもそも「あたふたオペラ」からして「浅草オペラ」を意識した語感ですし、からめん=カルメンは言わずもがな。
主人公の保瀬(ほせ)は「カルメン」の主人公ドン・ホセ由来だし、ヒロインの「美香」は「カルメン」のヒロインのミカエラ、もうひとりのヒロイン「軽部真紀」は「時には母のない子のように」で一世を風靡した歌手のカルメン・マキさん由来でしょう。
ついでにライバル?のミュージカル俳優・石神理央は「カルメン」の登場人物の闘牛士・エスカミーリョ(しかも演じている役者が上原理央さんという凝り方)。
とにかく作中にでてくる固有名詞のほとんどがだじゃれです。
オペラの歌詞部分も「ロマ⇒ゴマ」だったり、「トレアドール⇒どれだろう?」だったりとにかくしょうもない!
これをプロの皆さんが本格的に歌い上げてしまうのです!

公式HPを信じるな

内容は…まあコメディですので基本的にくっだらない感じです。
公式ホームページの【あらすじ】ではなにやらサスペンスやシリアスな恋愛ぽい面がありそうに書かれていますが、ミスリードを狙っている気すらします。
本格的な音楽のウェイトが高い作品というと昔まで遡れば「冬の旅人」や「人魚の森」が比較対象かと思うのですが、個人的には比較すべきは、劇団維新派にほとんど丸投げしてしまった(としか思えない)「少年漂流伝」か、CMでカルメンの替え歌を歌って人気になった斎藤晴彦さんに替え歌を歌わせた「試験によく出るモーツァルト」(聴きたいが音源が手元にない!)だと思います。
そう思うくらいの怪作です。

ある意味青春アドベンチャー史に残る

正直、ストーリーはないに等しいし、歌の部分もセリフとしてはやたらと聴き取りづらいし、折角のパロディネタも素人には大半がわからないので、オーディオドラマとしてはかなり微妙な出来です。
このブログの評価は実験的な試みをしているかではなくドラマとしての面白さという点でつけていますのでいつもの当ブログであれば辛口の格付けとするところです。
ただこれをオーディオドラマ枠で平然と流してしまった度胸はやはり買わざるを得ないですし、実際、ストリートプレイの部分の会話の面白さだけでも十分評価に値します。
また、歌でセリフがわかりづらいからこそ放送中は案外、集中してしっかり聞いている自分にも気が付きました。
それに何より本物の声楽家の歌声がビンビン来るのがそれだけでおかしさを誘うんですよね。
色々含めての今回の評価です。

さすがに野間口さんは歌わない

さて、主な出演者ついては上記で書いたとおり。
ちなみにこれだけ歌の多い作品なのに主演の声楽家・又吉秀樹さんは第4回途中まで歌いません!
また、あと1人加えるならば、名脇役として有名でNHK-FMでは「七帝柔道記」や「レールバイク」などにも出演されていた野間口徹さんが出演されています。
さすがに野間口さんは歌いませんが、ストレートプレイ部分のコメディ担当(主にツッコミ)で実に良い味を出しています。
ちなみに、声楽「家」、落語「家」、漫談「家」などが出演する本作品における野間口さんの立ち位置は愛犬「家」らしいです(ちなみに吉増裕士さんは愛猫「家」)。

誰?

さて、この快作をつくってしまったのは劇団「東京にこにこちゃん」を主催する萩田頌豊与(はぎた・つぐとよ)さん…らしいのですが、演出の藤﨑謙さんを含め、いまひとつ来歴が分かりません。
目立ちませんが毎回冒頭に診察のシーンを入れて流れを整理するなど巧みな脚本だと思います。
詳しい方がいらっしゃいましたらご教示ください。


(補足)
当ブログ主催の2022年青春アドベンチャー・人気アンケートで、当作品が第2位の得票を得ました。
詳しくは別記事をご参照ください。

(補足2)
2023年10月にあたふたオペラシリーズの第2弾となる「あたふたオペラ からふる物語」が放送されました。




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