2021-06

格付:AA

ほぞ 作:水城孝敬(FMシアター)

「ほぞ」とは、家具の板と板をつなぐときに作る突起のこと。「ほぞ」と「ほぞ穴」を上手く作ることができれば釘を使うよりも丈夫な家具が作れる。夫の基一(きいち)は腕のいい指物師で、職人らしく人間関係に不器用なところもあったけど、ほぞをつくる名人としてお得意さまからの信頼が厚かった。そんな夫がある時から納期を忘れるようになった。それだけではなくお得意さまの顔も。指物の作り方も。そして妻である私の顔や名前さえも。落ち込む夫は、指物が作れなければ自分はただの用なしだ、という。でも私は知っている。彼は少なくとも私にとって用なしではないことを。
格付:A

幻タクシー 作:山本雅嗣(FMシアター)

タクシー運転手の諸星は深夜、白衣のうえにウインドブレーカーを羽織った女性を乗せる。ただ、この女性客はどことなく変だった。乗ってから行き先を探し始め、しかも結局、陸上競技場ならどこでもいいという。一体何者なのだろう…?しかし、客に言われるまま、長居陸上競技場、みさき動物公園、そしてある住宅地を巡るうちに…それはその女性と息子の物語であり、諸星と父との想い出にもつながっていくのだった。
格付:A

浮遊霊ブラジル 原作:津村記久子(青春アドベンチャー)

別に悪い人生じゃなかった。5年前に妻が亡くなってからも、ベランダで野菜を育てたり、町内会の活動をしたりとそれなりにやってきた。だから死ねばすんなり妻の元に行くのだと思っていた。しかし、気がついたら浮遊霊としてこの世に残ってしまっていた。死ぬ直前に計画していたアイルランド・アラン諸島への初めての海外旅行。どうも自分は自分が思っていた以上にアラン諸島に行きたかったらしい。こうなったら仕方がない。何とかしてアラン諸島まで行ってみようじゃないか。ところで浮遊霊は飛行機に乗れるのか?
格付:B

極楽プリズン 作:木下半太(FMシアター)

3カ月前、僕の彼女が殺された。彼女の名は明日香。売れないイラストレーター。そして彼女を殺した犯人は…僕、ということにされた。つまり冤罪で投獄されたのだ。絶望と焦燥で一杯の僕だったが、しかし待っていたのは極楽のような刑務所だった。囚人が見ているのはお笑い芸人が出るバラエティ番組、飲んでいるのはビール。それどころかスポーツジム、プール、ヨガスタジオ。今日の夕食はアグー豚のしゃぶしゃぶ?ありえない。しかしありえないのはそれだけではなかった。この刑務所は脱獄すら自由なのだ。でも一番あり得なかったのは、脱獄したら明日香が生きていたことだ!
格付:AA

拝啓 名探偵殿 パート2 原作:藤原宰太郎(ふたりの部屋)

本作品「拝啓 名探偵殿 パート2」は、1980年4月に「ふたりの部屋」で放送された作品で、推理研究家・作家の藤原宰太郎さんの「拝啓名探偵殿-掌編推理小説10分間ミステリー」をラジオドラマ化した作品です。1979年10月に第1弾が放送されており、本作品はその第2弾にあたります。
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