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ボブガール、チャリボーイ 作:棚橋ますみ(FMシアター)

  • 作品 : ボブガール、チャリボーイ
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : B+
  • 分類 : 職業
  • 初出 : 2018年6月16日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 作  : 棚橋ますみ
  • 音楽 : 林魏堂
  • 演出 : 藤井靖
  • 主演 : 莉奈

すみません店長、すみません、すみません…
仕事が遅いわミスばかりだわの私はコンビニや介護施設の仕事を次々とクビに。
このカラオケ店のバイトも限界に来ていた。
そして店長に罵声を浴びてとうとう接客が出来なくなり、新聞配達に転職することを決意した。
しかしとろい私には雪道を自転車に乗って配達することなどできはしない。
仕方なくソリに新聞を載せて、トナカイよろしくこれを引っ張って新聞配達を始めた。
人付き合いの苦手な私が選んだ、人と関わらないで済む究極の職業。
でも早朝の時間帯がこんなに寂しいなんて知らなかった。


本作品「ボブガール、チャリボーイ」は2018年にNHK-FMのFMシアターで放送されたオーディオドラマです。

ボブガールとは?

主人公は冒頭のとおり仕事を転々とした末に新聞配達を始めた若い女性。
ソリを引っぱっているから「ボブスレーガール」で、これを略してボブガール。
一方、相手役の男性は自転車で新聞配達をしていることからチャリボーイ。
ちなむにふたりとも作中で名前が示されることはなく、放送最後のキャスト紹介でもボブガール、チャリボーイとされています。

生きづらいというレベルか

さて、このヒロインについてNHK公式ホームページは「生きづらさを抱える孤独で不器用な女性」という表現をしていますが、正直言ってこの表現はあまり彼女を適切に表していないと思います。
専門家ではないので断言はできないのですが、病院で診断名が付くレベルの発達障害であってもおかしくないと感じました。
私自身、どちらかというと人づきあいが得意なタイプではなく、何とか折り合いをつけて生きていると(少なくとも自分では)思っています。
が、自分が本作のボブガールレベルだったらどう社会と折り合えていたのか真剣に考えてしまいました。

ありのままで生きられるか

彼女が自分でいう「私はとろいというか、少し変」、「どうせ私はクズだから」という言葉を全力で否定したい反面、それは時折、自分自信が陥りがちな陥穽でもあり、その面では自罰的な形で私自身にも突き刺さります。
この作品自体は、彼女が仕事と自分に真摯に向き合いそれなりにおさまりの良い結末を迎えるのですが、彼女を取り巻く環境の厳しさ(経済面を含め)が本質的に変わるわけではないと思います。
とかく余裕がなくなりつつある現代の日本。
人がありのままで尊重される世界が近づいているようにはどうしても感じられません。

我がこととして

現実問題として、極端に生きづらい人間は人生をどのようにデザインすることがベストなのか。
周りができる本当のサポートとは何なのか(そもそもサポートという発想がおこがましい?)
自分の来し方や、最近会社で感じた物事、今まで出会った人たちの顔を思い浮かべながら考え込んでしまいました。
すみません、個人的なことばかりで…

莉奈さんとは

さて、本作品の主人公のボブガールを演じたのは女優の莉奈さん。
今は佐竹莉奈さんという芸名で活動されているようです(外部サイト)。
ちなみに本作品はNHKの本局の制作であり、舞台は明示されていませんが、作中の方言や脚本の棚橋さんのコメント(外部サイト)から北海道のようです。
主演の莉奈さんも北海道のご出身のようですので、作中の「ひゃっこい!」はネイティブの北海道弁ですね。

チャリボーイ役

また、相手役のチャリボーイを演じたのは「レ・ミゼラブル」などのミュージカルなどで活躍中の相葉裕樹さん。
先日まで放送されていた青春アドベンチャー「白銀騎士団 シルバー・ナイツ」で主演されています。
本ブログでは既に準主役級で出演された青春アドベンチャー「悠久のアンダルス」も紹介済みですが、本作品はこれらの作品以前に出演された作品ということになります。
相葉さんはスーパー戦隊シリーズに主要キャストで出演されているほか、アニメ声優のご経験もあります。
声の仕事にも向く外連味のある声をされていると思います。


Hirokazu

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