- 作品 : ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B
- 分類 : 幻想(日本/シリアス)
- 初出 : 2002年4月1日~4月12日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 滝本竜彦
- 脚色 : 北阪昌人
- 演出 : 岡本幸江
- 主演 : 原田篤
彼女に出会ったのは、ある冬の夜。
友人との賭に負けて、一人で「特上霜降り肉」を買いに行かされた帰りのことだ。
彼女は、小雪の舞う林の中の獣道、ケヤキの根元で、名門中央高校の制服を着て体育座りをしていた。
シュールな光景だ。
しかし、その後に展開されたのは、シュールというより過激な光景。
チェーンソーを持って襲いかかる怪人と、木刀を振りかざしセーラー服の裾を翻して怪人に立ち向かう美少女。
沈んだ毎日を過ごす高校生・陽介の日常が急展開を始める。
本作品「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」は、「NHKへようこそ!」などで人気のライトノベル作家・滝本竜彦さんのデビュー作を基に、NHK-FMの「青春アドベンチャー」で放送されたラジオドラマ作品です。
なお、2008年には市原隼人さん主演で映画化もされています。
ライトノベル原作作品は多いのか
さて、フリー百科事典wikipediaを見ると、青春アドベンチャーは「原作にライトノベルや少年少女向け文学作品を多数起用している」と書かれています。
しかし、詳細に見てみると、児童文学や漫画、比較的若年層向きの小説を原作とする作品が多いのは確かですが、いわゆる「ライトノベル作家」の作品はほとんどありません。
どちらかというとまだ「ライトノベル」という用語がなかった時代、青春アドベンチャーではなく、前身番組の「サウンド夢工房」や前々身番組の「アドベンチャーロード」が放送されていた頃の方が、ライトノベル的な作品は多かったように思います(例えば「なんて素敵なジャパネスク」や「西風の戦記」)。
いわゆるラノベ作家の作品はほぼない
一方、青春アドベンチャーになって以降(1992年以降)の作品で、今までにこのブログで紹介した作品から探すと、「超能力はワインの香り」(1992年・藤井青銅さん原作)、「これは王国のかぎ」(2000年・荻原規子さん原作)、「バッテリー」(2000年・あさのあつこさん原作)、「イカロスの誕生日」(2000年・小川一水さん原作)くらいしか見当たりません。
しかも、これらの原作者は皆さん、あまりライトノベル作家として認知されているとは言いがたい。
微妙な作品はあるが…
作家面で言うと2014年放送の「93番目のキミ」の原作者である山田悠介さんは、かなり「柔らかい」作家さんですが、ライトノベル作家という言葉から受けるオタクぽさはあまり感じません。
また、「ダーク・ウィザード~蘇りし闇の魔導士~」も電撃文庫というライトノベルレーベルから原作が発行されてるものの、原作者の寺田憲史さんは、ラノベ作家とは少しニュアンスが違う方のようです。
そういった青春アドベンチャーの実情において、本作品「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」は明確にライトノベル原作と言って良い、数少ない作品です。
ぶっ飛んだ展開
さて、空を舞うチェーンソー男と美少女・雪崎絵理との深夜の決闘を目撃した主人公・山本陽介(演:原田篤さん)ですが、「今の出来事は一体何だったのか」と戸惑いつつも、これを運命の出会いと位置づけて、絵理へのアプローチを開始します。
その結果、チェーンソー男の正体について特段の説明もないまま、昼は学校、夜は決闘の日々が続いていきます。
絵理の主な武器はナイフ、陽介はカメラの三脚。
チェーンソー男はもちろんチェーンソー。
チェーンソー男の登場とともになぜか常人離れした運動能力を身につけたらしい絵理ですが、それにしても毎日、激戦、苦戦の連続。命がけです。
日常のすぐ隣に非日常が存在し、しかもその非日常の理由について理屈っぽい説明がないあたりが、ライトノベルらしい展開です。
アニメ感はない
ただ、このラジオドラマは、NHKらしく真面目に「青春」に向き合ったような作りであるからか、ややシュールな要素はあるものの、全般としてあまり山がなく淡々と話が進んでいくように感じました。
あくまで個人的にですが、SEや演技など、もっと非日常的に、敢えて言えばアニメぽく作った方が面白かったのではないかと感じました。
生々しすぎる
アニメぽくといえば、本作品でヒロイン・絵理を演じる占部房子さんは「泥の子と狭い家の物語」や「闘う女。」、「僕たちの宇宙船」でも、絵理と似たような陰のある少女を演じていらっしゃいますが、本作品では「おりゃあ」というかけ声に象徴されるように少し生々しすぎるように感じました。
占部さん、本作放送時点で24歳のハズなので、決して年齢的に無理があるわけでもないんですけどね。
やっぱり現実離れした美少女が戦うことにこの作品の面白みがあるのですから、一見、楚々と(あるいは淡々と)していて欲しいものです。
勝手な願望でごめんなさい。
脚本は北阪昌人さん
また、本作品の脚本はTOKYO-FMの「NISSAN あ、安部礼司」やNHK-FMの「AKB48の“わたしたちの物語”」といったラジオドラマの脚本で有名な北阪昌人さんです。
青春アドベンチャーでは、オリジナル脚本としては「ラジオの前で」を、原作付きの作品の脚色としては「エンジェル」と本作品を担当されています。
これも個人的な感想ですが、あくまで日常の出来事を扱った「ラジオの前で」が出色の出来であるに対して、非日常的(あるいは超常的)なテーマの残りの2作品はいまひとつぱっとしません。
この辺、作品と脚本家さんとの相性もあるのかも知れませんね。
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